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vol 226:電話
帰国して1日が経った。
携帯が鳴り響く音で目が覚め、
「・・・お師匠?。」
着信の表示には以前、俺が世話になっていた寺の住職の名。
「もしもし、ご無沙汰してます。」
『弥勒よ、どうなってる?!。』
「え?。」
『お前なら何か知っておるのだろう!。』
興奮した恐怖にも満ちた声。
「落ち着いてください!
何かあったのですか?!。」
能天気な住職の、こんなにも慌てた感じは初めてで、
内容を聞こうと俺も必死になる。
『退魔の依頼の電話や訪問者が絶え間ないのだ。』
「退魔の?。」
『お前も居ない今、その道はやっていないと言うのだが、
縋る思いでやって来る者を邪険には出来ない。』
「俺に退魔の依頼をしたいと?。」
『最後まで話しを聞け。』
「はい。」
『お前は寺を出て、修業の身。
多忙の故、手を煩わせてもと、ワシが退魔に向かった。』
「お、お師匠様が?!。」
『そうだ。しかし・・・。
相手は人間に取り憑く霊などではない。
人間は己の心で動いていて、魂を売っていた者ばかり。
契約を交わした者を救うなど、
このワシには出来なかった。』
「それって・・・悪魔だって言うんですか?。」
『霊感のあるワシにだけ見えるならともかく、
その者の家族にも、はっきりその悪魔の姿は見えていた。
ワシが信じているのは、天使や悪魔などではなく、
黄泉の国。
そのワシは悪魔を見てしまった。
これは一体・・・。』
「お師匠、でも、霊はこの人間界に未練を残し、
まだ、見える者には見えます。
しかし、悪魔や天使はまた違う。
本当に悪魔だったのですか?
悪魔に仕えたい霊ではなく。」
『わからぬ。だが、もはや霊の姿や煙などではない。
醜い生き物だった。物に触れる事すら出来る。』
住職の声が震えるのを感じた。
しかし、有り得ない。
人間界と天国、地獄は紙一重の世界なのは確かだ。
天国の少し下に位置するのが黄泉の国。
霊は、
まだ、魂も定まらず、
人間界に浮遊し、一部の人間が姿を見る事は出来る。
天使や神、悪魔は、
霊とはまた違う生き物で、
物質。
心があってそれぞれの世界の魂。
人間界に来れるが、生きた人に姿を見せることはまず無い。
役目を背負い、
見込まれた魂があの世に近い人間だけが見れる。
それも、神や天使、悪魔が用がある時のみに。
耳元で囁き、感情の左右を多少出来きて、
乗り移ったとしても、
本人自体がこの人間界に姿を見せることなんて。
「そのお師匠に依頼のあった者たちは、
どんな人物でした?。」
『普通の子どもだ。
小学生から30代までくらいの。』
「両親は?。」
『そう言えば・・・皆、どこかの宗派に入っている、
熱心な信者だったが。』
熱心な信者の子ども。
お師匠には、調べてみるから、
お師匠の為にも、依頼をけして引き受けないで欲しいと頼み、
電話を切った。
大樹やシロに聞いたところで俺同様に解らないだろうし、
カンは仕事で電話をとらない。
肉体はかなり疲れているものの、
ほっとくわけにもいかない話しで、
そのまま、知恵の神、普賢菩薩に会いに行った。
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