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vol 223:主の言葉
ゴルゴダの丘。
この場所で主は自分の命の変わりに、
生きた者に神業を見せ、
神々には、自分のこの役目の変わりに、
生き物の死後の魂の存在を約束させた。
死んでも今まで無だった魂を、
霊体として生きる世界を求めたんだ。
そして、あの世が出来る。
黄泉の国も。
「弥勒・・・。」
シロの声で頭を上げると、
主が死後に寝かされた石のベッドの上に、
黄色い光を放ち座っている。
「主・・・。」
(二人とも、よくいらしてくださった。
我が母、マリア、ありがとう。)
マリアは深く深く頭を下げる。
「どうして此処に貴方が?。」
俺は素朴な疑問を問いかけた。
(神の子達が、自分の役目に疑問を持つと、
皆ではないが、此処にやって来る。
自分の役目に心が耐えきれなくなった時、
私のこの始まりの場所に。)
「皆ではないのですか?
神の子は殆どが何か役目を与えられます。
皆、悩み苦しみ・・・、。」
黄泉の国で生まれた者や、
神の御意志の力になりたい者は、
大抵、大きな役目を持つ事になる。
主は眉尻下げ答えた。
(弥勒よ、心からその意味を必死で、
理解し、欲もなく、信じる者は、
ほんの、数名なのです。)
悲しげな表情で笑む主に俺は俯いた。
(今まで此処に来た黄泉の国の神は、
大日如来、阿弥陀如来、薬師如来、
そして、この者達の今側近にいる者達。)
不動明王や、地蔵菩薩、
十二神将たち。
(そうそう、ニコニコさんもいらっしゃった。)
シロは驚いた。
「ニコニコ?あの者がか?。」
シロが驚く意味は良く解る。
カンが一番大好きな、
カンが出会った一番初めの神。
だが、七福神の福禄寿本人ではなく、
そこで修業している一人の者。
100均の福禄寿の置物に憑き、
カンと出会った修行僧だ。
(カンに出会ってから、
あの子の本当の存在を知った時に、
この場に来たのです。)
「そんな後に?何をしに来たと言うのだ。」
シロのこの言葉遣い・・・。
コイツもまたカン同様に位がない奴だ。
(お前達のように、マリアが付いていたわけでもなく、
他教徒の霊たちに邪険にされながらも、
この場に辿り着き、
私に言った言葉。)
(私は他宗教の修行僧。
この場に来るのは場違いかもしれません。
しかし、貴方の妹君、
元々あの世の記憶があったわけでもない、
その子が、自分の意志で我々との密接を望み、
何も感じなかった子が、
基本から学び、力を得、
力を得た時の悲しみや苦難を必死に乗り越え、
生前の記憶も戻り、
宇宙の神々にもはむかい、
死の世界、闇の世界、人間界、
全てを守ろうとしています。
主よ。
貴方が行った事と同じ事になるのではと思って仕方ない。
あの子は・・・。)
シロも俺も思った事はひとつ。
「それって!!!。」
「まさか!!!。」
(あの子は、カンは、死など恐れてはいないでしょう。
生前の私の様に。)
「自己犠牲をすると言うんですか!。」
「その様なこと、悪いのは人間ではないか!
何故、カンがその為に命を落とさなければならない!。」
主の答えに俺達は絶句することになる。
(あの子は、人間の為に命を落とすのではない。
サタンの為に命を落とすのです。)
「大樹ー!。」
「カン!。」
「どんな感じや?。」
「うん、今、大神の手伝いが終わったところ。
なんか、ここまで体から離れてたら、
戻った時怖いね。」
「ハハ、言えてる。」
やっと、一段落落ちついて、
俺と大樹は自分の肉体へと魂を戻す。
弥勒やシロは何を教わり、
どう思えたんやろ。
帰って来た時のアイツらを見るのが楽しみや。
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