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vol 222:救済
「パパ、阿弥陀の手伝いしてくる。」
(そうか。)
「ん。」
(我が子よ、怒りは何も生まれぬ。
揺らいでも、そこには大きな理由がある。)
この時、パパが今なんでそんなん言うんかが、
解らんかった。
俺は被害にあって亡くなった霊を、
一人でも多く落ちつかせる為に被災地に向かう。
そこらじゅうで、泣いてる霊が居て、
黄泉の国の修行僧たちや神達が、
一人に一人ずつついている。
(あぁぁぁ、ゆきちゃん!
けんちゃん!。)
女性の泣き声と共に、
叫ぶ声の方に目を向けた。
そこには生きた男と幼い子どもと、
霊になった女性がいる。
生きてる男は俯いて両手で顔を押さえ、
子どもは、そんな父親の隣で不安そうな顔をしてる。
霊は必死になって、
男と子どもに泣きながら叫んでる。
(けんちゃん!けんちゃん!。)
俺は女に近付いて隣にしゃがんだ。
「旦那さん?。」
俺の声に女は顔を向けてコクコクと頷く。
「ともこぉ~。ともこぉ~。」
男が名を呼ぶと再び女が反応をし、
(けんちゃん!けんちゃん!。)
男と女は夫婦で、隣の子どもはゆきちゃんなんやろ。
奥さんだけが亡くなった。
「旦那さんには、もう声届かんよ・・・。」
(・・・いやぁぁぁぁぁ!。)
女は泣き崩れた。
俺は女の肩に触れて、そのまま抱きしめる。
旦那も子どもも残して死んでしまった人に、
かける言葉はあっても、まだまだ受け入れられんやろうから。
ひたすら泣く女と一緒に居てやる。
「濡れたままで・・・こどもが風邪をひいてしまいます。」
男に声をかける声が聞こえた。
その人間を見て驚いた。
金色の髪に黒い肌。
牧師の服を着て、こどもに自分の上着を着せる。
「す・・んません。」
男はそいつに向かって泣き顔で頭を下げた。
「いえ。良ければ何があったか話してもらえませんか?。」
「・・・嫁の・・・嫁の手を離してしまった。
手を・・・て、を。」
そのまま再び俯いて顔を両手で押さえだした男に、
そいつは俺が今女を抱きしめていることと同じ事をする。
男を抱きしめ、
「神は残酷です。」
それだけを言って、そいつが俺と視線を合わせた。
サタン・・・。
「しかし、これまでの人の過ち故の犠牲。
でも、僕も何も関係のない人の命までも、
奪う神の御意志にはついていけない。
お辛いでしょう。
ただ、貴方には子どもさんがいます。
子どもまで奪われぬよう・・・我々も力を貸します。」
な、。
「サタン!おっまえ・・・。」
サタンは俺の言葉に心の声で返事をする。
(やぁ、カン。
ホント、君のお父さんは酷い人だねぇ。
こんなに残酷だなんて。)
サタンは俺の腕の中の女を切なそうに見つめた。
(君、憎くないのかい?
家族を引き離され、しかも、君だけ命が奪われた。
その神の子に抱きしめられて・・・可哀想に。)
(!?。)
「何言うてんねんっ!。」
腕の中の女は俺の顔を見て、
怒りと憎しみの眼差しを向け出した。
「おい、コイツはサタン!悪魔や!
耳を傾けたらアカン!。」
(おや、僕は嘘はついてませんよ?
これが神々の審判じゃない。)
(は、なして!。)
「わ!。」
女は俺を突き飛ばした。
(なぜ、私の命を奪った!
私が何をした!。)
「っ。」
俺は言葉が出んかった。
神々の審判で犠牲になった事は事実。
(ねぇ、君。
君は旦那や子どもも苦しみ殺されていいのかい?。)
「サタン!。」
(僕達は悪魔なんて呼ばれているけど、
それは神の反逆者だから。
こんな神についていけるわけない。
君が望むなら、僕と一緒に神と戦おうよ。)
「アカン!耳傾けたらアカン!。」
俺は立ち上がって女の手を掴んだ。
女は俺の手を振り払い、
サタンの方へ。
(カン、まぁー・・・頑張って。)
ニッコリと笑うサタン。
女は黒い影と共に消え、
「奥さん、今我々と居ますよ。」
「え・・・?。」
「一緒に来なさい。
奥さんと会わせてあげます。」
男の顔から涙も止まり、
普段なら疑う内容でも、
今は嘘かもわからない事に希望を持ってしまう。
その場に一人になった俺。
女に違うとも言えなかった。
憎い。
悔しい。
怒りが込み上げる。
神にも悪魔にも。
「・・・ぅ、うわぁあああああああああ!!!!!。」
空に向かって叫ぶ俺の声を、
宇宙の神々に聞こえるやろうか。
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