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vol 218:二人で
黄泉の国の神々の助けもあって、
まだ、小さな余震は続くものの、
海の荒れは治まった。
被害の大きかった場所を見ると、
「まるで・・・戦争の後みたいだね。」
大樹が言った言葉に相当する。
「人の兵器は一発やけど、
神々の災いは、苦しみを味わう。」
水で溺れたり、すぐに命が尽きない死に方。
誰が悪いわけでもない。
人間という生き物の代表として死んだいうてもおかしくない。
空からは魂の救済として、
たくさんの黄泉の国の住民が降りて来る。
弥勒の仕事やけど、
弥勒の時はこんなもんやない。
俺は下唇を噛みしめた。
「カン、あそこ!。」
子犬や。
小さな子犬が死んで、
母犬の乳を吸う。
飲めるわけもない。
母犬の魂はどこにもおらん様で、
俺と大樹は子犬の元に行って抱き上げた。
「まだ、目も開いてないね。」
「うん。」
人間がたくさん死んだように、
動物もたくさん命を落とした。
(カン、山が酷いことになっている。)
「宮毘羅。」
十二神将の一人、宮毘羅が俺達の元に来た。
(今、因達羅から連絡が来た。
他の十二神将たちも山に向かったんだが、
お前らも来てくれぬか?。)
「うん。大樹、いこ。」
「そうだね。」
子犬を自分の服の中に入れて宮毘羅と共に現地に向かう。
「これは・・・。」
空から山を見下ろすと、火の海。
動物達が死んでいる。
逃げて、火に囲まれて立ち竦んでいる鹿の群れ。
俺は見てられなかった。
服の中から子犬を取り出して、
大樹に手渡して鹿の群れの場所に降りる。
「カン!!!。」
すごい炎。
炎にもまた魂のような気の力が存在する。
せやから、今の俺の状態でも、ダメージをくらうっちゅーわけや。
「まっとれよ?ここから逃がしたる。」
光をめいっぱい放つ。
炎の気を少しでも弱める為に。
炎に近付いていき、その場所でもと炎を弱くさせる。
熱い。
両手を左右に真っ直ぐ伸ばして、
炎の弱まる場所を広げてく。
「くっ・・・。」
「カン!。」
大樹は宮毘羅に子犬を渡して俺の元に飛んで来た。
(おい!!!。)
大樹は大蛇になり、
自分の湿った体を火の上に乗せて火の力を消そうとする。
「た、大樹。」
「っ!!!。」
燃え上がる炎が大樹の体の表面をジリジリと焼き、
大樹は身をくねらせて炎の力を掻き消す。
「大樹!。」
俺は、大樹の体に跨って再び左右に両手を伸ばし、
光を放った。
鹿たちからすれば、俺達は霊な存在。
炎のなくなった俺達の場所から、
どんどん逃げていく。
宮毘羅が降りて来ると、
(二人とも、もういい!。
離れるんだ!。)
鹿が全部逃げた。
宮毘羅の言葉で俺は大樹から降り、
大樹は人間の姿に戻る。
俺もススだらけで両手に火傷。
大樹もススだらけで、
左右の体の側面を火傷。
「はぁはぁ・・・あっちぃ~~~!!!。」
「ハァハァ・・・カン。」
俺の両手を痛々しそうに見つめて、
俺の頬を撫でる大樹。
「・・・お前も怪我しとるやないか。
無茶しやがって・・・。」
「ハハ、お互い様。
カンが体張ってんのに俺も張らないわけないだろ?。」
(全くお前たちは・・・。
前代未聞だな。)
俺と大樹の行動に眉尻下げて心配気に見つめる宮毘羅に、
俺は満面の笑みを見せた。
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