設置場所の制約によって、浄化槽を深く埋めたり、上を駐車場にしたり、崖下や道路際・建築物の際に設置したり、ビルの地下や地上に設置したりする場合がある。この章ではこれらの、いわば応用問題について解説する。
かさ上げ工事は右図のようなもので、流入管底が深くなった分だけ、浄化槽の開口部を伸ばす工事である。立ち上げ部分の部品(カラーという)はメーカで用意している。かさ上げを代表とする深埋め工事では次の点が大事である。
- 浄化槽本体が、どの程度まで深埋め可能か、限度を把握しておく。
- 限度を超える場合は、浄化槽本体に直接荷重がかからないように補強工事が必要。
- かさ上げの高さは設置後の保守点検、清掃のし易さを考慮して、30cm以内におさえる。
- 保守点検、清掃作業が容易に行えるよう、周囲のスペースを十分に確保しておく。
30cm以上深くなるときは、原則として原水ポンプ槽を設ける。ポンプ槽を設置できない場合はかさ上げを行わず、ピット工事とする。ピット工事は右図のように浄化槽の開口部付近を標準工事のように仕上げ、その周囲を所定の高さ(一般的にはGLライン)まで立ち上げる。留意点は
- 点検スペースは屈み込んでも腰がつかえない大きさが必要。
- GLから浄化槽天端までの深さが深い程点検スペースも大きくする。
- チェッカープレートも開閉しやすいように、一枚当たりの重量を軽くする。
- たち上げ部分はコンクリートブロックか現場打ちのコンクリート構造とする。
- 雨水は進入するので、排水パイプを放流側のマスに接続しておく。
- 外部の荷重が槽に直接かからないように施工する。荷重がかかる場合は、補強工事を行う。
上部を駐車場にする場合には、柱補強工事を施す。この場合には葢やチェッカープレートは車の種類の応じて耐荷重のものに交換する必要がある。
浄化槽のすぐ際が道路であったり、崖であったり、駐車場であるような場合は、荷重が横から掛かるので、荷重の掛かる方向に鉄筋コンクリート構造の擁壁を設けて、荷重を受ける構造とする。
大型車両が通過又は駐車する場合、柱補強では荷重に耐えられないことがある。この場合は、鉄筋コンクリートのボックスで浄化槽の周囲を囲み、上部と側部からの荷重をこのボックスで受ける構造とする。内部に雨水が入ると浄化槽本体が浮き上がってしまうことであるので、浄化槽の固定とボックス内の排水対策を十分に行うこと。
建築物や道路の際は大きな荷重が掛かるので、原則として設置してはならない。この場合、建築物や道路の基礎から斜め下方45度にひいた線の外側にずらして設置する。止むを得ない場合は擁壁工事に準じて施工する。
寒さの厳しい寒冷地に設置する場合は、建物から浄化槽までの排水管の凍結を防ぐため、凍結深度以下に埋設する必要があるから、これに伴って槽も深く埋設することになる。このような場合には、上で述べたかさ上げ工事、ピット工事、ボックス工事等を使い分けする。判断基準は凍結深度、積雪荷重、上部積載荷重である。
止むを得ずビルの地下室等に設置する場合は次の点に注意。
- 作業環境の確保のため換気が不可欠。1時間につきおおむね10回以上、直接外気と交換する能力を有すること。
- マンション等では、ポンプ、ブロワの振動が問題になるので注意。
- 搬入はマシンハッチ(機械搬入口)になることが多いので、この大きさを念頭にいれて施工する。
- 直接バキューム車で引けない場合には、中継汚泥ピットを設ける。
- 浄化槽の上部に保守点検用の歩廊を設けておく。
換気方法には右の三つがある。
地上に設置する場合は、浄化槽本体を固定金具で基礎コンに固定し、次の点に留意し施工計画をたてる。