特殊工事

 設置場所の制約によって、浄化槽を深く埋めたり、上を駐車場にしたり、崖下や道路際・建築物の際に設置したり、ビルの地下や地上に設置したりする場合がある。この章ではこれらの、いわば応用問題について解説する。

1)かさ上げ工事と限界

 かさ上げ工事は右図のようなもので、流入管底が深くなった分だけ、浄化槽の開口部を伸ばす工事である。立ち上げ部分の部品(カラーという)はメーカで用意している。かさ上げを代表とする深埋め工事では次の点が大事である。


 7分頃に嵩上げ工事の実態が見られる。⇒ 動画サイトへ

2)ピット工事----最重要。頻出の問題です。

 30cm以上深くなるときは、原則として原水ポンプ槽を設ける。ポンプ槽を設置できない場合はかさ上げを行わず、ピット工事とする。ピット工事は右図のように浄化槽の開口部付近を標準工事のように仕上げ、その周囲を所定の高さ(一般的にはGLライン)まで立ち上げる。留意点は


3)駐車場工事

 上部を駐車場にする場合には、柱補強工事を施す。この場合には葢やチェッカープレートは車の種類の応じて耐荷重のものに交換する必要がある。


4)擁壁工事

 浄化槽のすぐ際が道路であったり、崖であったり、駐車場であるような場合は、荷重が横から掛かるので、荷重の掛かる方向に鉄筋コンクリート構造の擁壁を設けて、荷重を受ける構造とする。


5)コンクリートボックス工事

 大型車両が通過又は駐車する場合、柱補強では荷重に耐えられないことがある。この場合は、鉄筋コンクリートのボックスで浄化槽の周囲を囲み、上部と側部からの荷重をこのボックスで受ける構造とする。内部に雨水が入ると浄化槽本体が浮き上がってしまうことであるので、浄化槽の固定とボックス内の排水対策を十分に行うこと。


6)建築物等の際に設置する場合

 建築物や道路の際は大きな荷重が掛かるので、原則として設置してはならない。この場合、建築物や道路の基礎から斜め下方45度にひいた線の外側にずらして設置する。止むを得ない場合は擁壁工事に準じて施工する。


7)寒冷地に設置する場合

 寒さの厳しい寒冷地に設置する場合は、建物から浄化槽までの排水管の凍結を防ぐため、凍結深度以下に埋設する必要があるから、これに伴って槽も深く埋設することになる。このような場合には、上で述べたかさ上げ工事、ピット工事、ボックス工事等を使い分けする。判断基準は凍結深度、積雪荷重、上部積載荷重である。

8)ビルの地下に設置する場合

 止むを得ずビルの地下室等に設置する場合は次の点に注意。

 換気方法には右の三つがある。


9)地上に設置する場合

 地上に設置する場合は、浄化槽本体を固定金具で基礎コンに固定し、次の点に留意し施工計画をたてる。

この章の過去問

1.深埋め工事の留意点を4点述べよ。
2.かさ上げ工事の限界は何cmか、その理由は何か。
3.ピット工事例を図面にしなさい。こちら
4.駐車場仕様について知るところを記せ。
5.擁壁工事が必要な場合について、知るところを述べよ。
6.建築物の基礎から45度下方に引いた線を避けて浄化槽を設置する理由はなにか。
7.寒冷地に設置する時の留意点を述べよ。
8.ビルの地下に設置する場合の注意すべきポイントはなにか。
9.地上に設置する時の留意点を記せ。