構造−各槽のポイント2

生物処理

 下水処理では、最初に沈殿処理、後ろに活性汚泥法等の生物処理が行われていたため、沈殿を一次処理、生物処理を二次処理と呼んでいる。この用語は浄化槽でもしばしば用いられる。
 微生物には、酸素が好きな好気性微生物と、酸素が嫌いな嫌気性微生物が存在することはすでに述べた。浄化槽で多く使用されているのは好気性処理であるが、窒素除去等の高度処理のためには嫌気処理が不可欠であるため、最近では嫌気性処理の採用が増加してきた。
 この項では、好気性処理の代表格である活性汚泥法と、現在の主流である生物膜法の中から接触ばっ気法について説明するとともに、家庭合併槽で採用している嫌気濾床槽についても解説を加えた。

活性汚泥法■活性汚泥法は生物処理の基本!

 下水のように有機物を含む汚水をばっ気していると、有機物は減少してゆく。それとともに、増殖した微生物は凝集してフロックと呼ぶ塊を形成し、ばっ気を止めると沈殿するようになる。ここで上澄液を捨てて、新たに下水を投入し、この操作を繰り返すと、フロックは徐々に増加してくる。このフロックの沈殿した汚泥には無数のバクテリアや原生動物が含まれる。これに酸素(空気)を送ってやれば汚水中の有機物はすみやかに除去される。これが活性汚泥である。回分法(かいぶんほう)といいます。

 いささかがっかりするかも知れないが、お椀の味噌汁を観察してしてみてほしい。少し時間をおくと、味噌の粒子は凝集し、上に透明な上澄みが確認できる。まさにこれが擬似活性汚泥である。

 活性汚泥の槽はこんな感じ。動画サイトへ

 この活性汚泥は徐々に改良され、現在動いているものは、ほとんどが右図に示す連続法である。槽はばっ気槽と微生物を沈殿させて分離する沈殿槽に分かれており、汚水はばっ気槽に連続で流入する。又、沈殿槽で分離・濃縮された汚泥はばっ気槽に常時返送され、ばっ気槽内の汚泥濃度を一定に保つ。

 この処理を続けると微生物が増え、沈殿槽で汚泥が分離できなくなる。このため、定期的に汚泥を系外に排除する操作が必要になる。これが余剰汚泥の引き抜きであり、この汚泥の処理が本方式のポイントである。


 活性汚泥法にはばっ気している時間が8時間の標準活性汚泥法と、24時間程度の長時間ばっ気法がある。24時間も無駄と考えられなくもないが、これにより処理の安定化と余剰汚泥量が減少する効果が得られる。従って、維持管理も軽減されるため、長時間ばっ気法は小規模な浄化槽に適する。一方、標準活性汚泥法は汚泥の管理も難しいため、浄化槽の構造方法では処理水BODが30mg/Lと20mg/L以下の、5001人以上に限られている。

 家庭用の浄化槽でこの方式を採用する場合は、下図のようにスロット型沈殿槽が一般的であり、装置も大幅に簡略化されている。

 活性汚泥法のポイントは汚泥の管理に集中する。まず汚泥が沈殿槽から流出しないことが重要である。流出する原因は水量が計画より極端に多く、沈殿時間が足りないのが第1。なんらかの理由で糸状菌が繁殖し、微生物がフロックを形成しなくなるのが第2である。特にこの状態を汚泥の膨化(バルキング)と呼ぶ。

 次に重要なことは、BOD容積負荷(kg-BOD/㎥・日)である。つまり、一定のばっ気槽に投入するBODの量のことで、BODを多く入れれば入れる程、それだけ多くの空気量が必要であり、余剰汚泥の発生量も増加するという点である。


生物膜法維持管理のしやすさから、小型の浄化槽の主流だ

 生物膜法は上で述べた汚泥の管理があまり問題にならない方式で、塩ビの板や石の表面に微生物が水わた状に付着したものを利用する。丁度川の底についた水わたと同じで、その上を酸素を含んだ汚水が流れてゆく間に浄化される。

 以上のことから、この方式は活性汚泥法のように沈殿槽の汚泥をばっ気槽に返送する必要もなく、維持管理が容易で小型の浄化槽に向いた方式といえる。下図左に生物膜法のフローを、右に最も広く採用されている接触ばっ気法の構造を示す。

 接触ばっ気槽の長所は、流入水量の時間変動に強い、たとえば小学校などのように長期の休暇があっても問題がない。又BOD濃度の低い排水に強く、汚泥の発生量も活性汚泥に比べて少ないとされる。

 生物膜法には接触ばっ気法の他に、散水濾床法と回転板接触法(回転円盤)があるが、現在ではあまり一般的ではない。

嫌気濾床槽■構造方法第1の脱窒濾床槽も全く同じ構造である。

 嫌気濾床槽はその名のとおり、嫌気性微生物を利用した生物膜法の一つである。

 沈殿分離槽も一種の嫌気性処理装置ではあるが、これは汚水を嫌気的に処理するというよりも、槽内の堆積汚泥を嫌気的に分解するものといったほうがより近い。

 構造的には、プラスチックの濾材を充填し、汚水を上から下、又は下から上にゆっくり流し、濾材の間隙に繁殖した嫌気性細菌により有機物を分解するものである。汚水中の浮遊物も濾材に捕捉された後、1年近くの長い時間をかけて液化またはガス化されるため、処理しなくてはならない汚泥の発生量が少ないという長所を持つ。

 この方式のポイントは、動力なしでもBODが除去できること、汚泥発生量が少ないことである。構造方法第1の脱窒濾床槽では、効率的に窒素除去行われる。一方、微生物が良好な処理効果を発揮するまでに5〜6ヵ月かかることと、臭気が発生することである。設置時に臭突を付けることが望ましい。

■試験では必ず臭突管を付ける!と書こう!!

 嫌気濾床槽の模式図を左に示す。この図は現在主流の下向流だが、稀に上向流もある。