(8) 膜分離型浄化槽

 「コンパクトで処理水の再利用が可能」といった特長を生かした、膜分離型の浄化槽です。処理水のBODは5mg/L以下と、高度な処理水が得られます。

 使用する膜は限外濾過膜といい、英語ではultra-filtration、これを訳してUF膜とも呼んでいます。細孔径は2nmから100 nm(0.1μm)の範囲の多孔質膜で、材質はポリスルフォンなど様々なものが開発されています。

 UF膜の微小な孔により、水中のバクテリア(つまり活性汚泥)はもちろんのこと、ウイルス、高分子、コロイドまで分離することができますが、低分子の物質や塩類(イオン)は透過してしまいます。また、操作圧力は逆浸透法よりずっと低く、水位差でも濾過できます。

 膜を装置化したものが膜モジュールで、現在平膜型、中空糸型があります。排水処理においては、ばっ気槽の中に膜モジュールを設置して、減圧濾過する処理方法が主流です。

 膜分離法の欠点は、長期間の使用により膜表面が目詰まりしたり、微生物汚染されること(ファウリングといいます)であり、その防止としてばっ気空気による水流と気泡で膜表面を常時洗浄したり、汚れがひどい時は薬品による洗浄が行われます。




膜分離型のポイント

1.シーディング
 運転開始時に流入水を膜で直接濾過すると、排水中のコロイド物質などにより、ファウリングを起こしてしまう可能性があります。そこで、膜モジュールが設置されているばっ気槽へシーディングを行います。添加する種汚泥は、MLSSで3,000mg/L以上が好ましく、上限は5,000mg/L程度に調整します。
 添加する種汚泥は、機能が十分に発揮されているる窒素除去型浄化槽のばっ気液で、油分、夾雑物の少ない生活系のものが最適です。
 なお、運転時の適正なMLSSの範囲は5,000〜15,000mg/L程度です。

2.発泡対策
 運転開始時、発泡が激しい場合は消泡剤を用います。シリコン系消泡剤は膜を閉塞させる可能性があるので、アルコール系消泡剤を使用します。

3.薬品洗浄
 ファウリングを起こして透過流束が低下した場合は、次亜塩素酸ナトリウム10〜12%溶液を20倍希釈し0.5〜2時間浸漬させます。残留した塩素剤は洗浄後、チオ硫酸ナトリウム溶液で還元してから運転を再開します。

4.耐用年数
 膜の耐用年数は1年〜5年と幅があります。これによって後々のランニングコストが大きく狂いますので十分に注意が必要です。夾雑物で切れることもありますので、流入水の夾雑物はしっかりとスクリーン(または嫌気濾床槽)で取り除くことが必要です。

5.窒素・リンの除去
 膜分離システムは、窒素・リンの除去に対応可能です。しかし、UF膜で窒素を直接濾過することはできません。生物学的な脱窒素処理と併用します。リンも硝化槽に凝集剤を直接添加することにより除去できますが、あくまでも汚泥として系外に排出する必要があります。