浄化槽の保守点検と清掃

 いままで勉強したことを基礎にして、運転開始後の維持管理もあわせて勉強してしまおう。

維持管理を考慮した浄化槽工事が大事

  1. 周辺や上部に保守点検、清掃を行うことのできる十分な空間が確保されていること。
  2. 管渠の保守点検、清掃が可能なように、起点、屈曲点及び一定間隔ごとに適切な枡が設置されていること。
    • 起 点---- 各排水が屋外に出た所に枡。
    • 屈曲点---- 45度以上の曲がりや、落差のある所に枡。
    • 合流点---- 2系列以上の排水の合流点に枡。
    • 間 隔---- 直線部分でも管径の120倍を超えない範囲で枡。
      ■この4点暗記しよう!
  3. 維持管理が容易に行える深さに浄化槽を埋設する。
    • バルブに手が届き、薬剤の補充が手でできる。
    • スカムの引き寄せや、濾材の洗浄が可能。
    • 槽内の様子が目視できる。
    • 深埋めによる過大な土圧から槽を守る。 だから、深埋めは30cm以内
      ■これを逆にすると深埋めの問題点を記せ!となる(とても重要)
 宅地内の汚水管工事の実際をみる。動画サイトへ

保守点検と清掃の違い

−−−−−保守点検−−−−−
  
−−−−−清 掃−−−−−
・各装置の機械類が正常に動いているか  ・スカムや汚泥を槽外へ引出す
・全体の運転状況や放流水の状況は  ・付属装置や機械類を洗ったり掃除する
・汚泥のたまり具合はどうか   ■槽外へ がポイント
・配管や濾材が目詰まりしてないか  
 ■人間でいう健康管理  

保守点検の回数

通常の使用状態において、下表の期間ごとに1回以上行う。
最初の点検は使用開始直前
 ここで、通常の使用状態とは

  1. 処理対象人員に見合った人数で使用されている。
  2. 単独では40〜60l/人・日で運転されている。
  3. 合併では設計汚水量で運転されている。
  4. 単独では雑排水等が流入していない。
  5. 合併では雨水、工場排水等が流入していない。
  6. 浄化槽内水温が10〜25℃で使用されている。
  7. 本体が水平で正常な水位の状態
  8. 槽内処理機能が正常
合併浄化槽種類人槽嫌気接触ばっ気
分離接触ばっ気
活性汚泥接触ばっ気
回転板接触
散水濾床
沈殿分離槽
嫌気濾床槽
を有する
20人以下
4月
  
21〜50人
3月
沈殿分離槽を有する  
3月
流量調整槽を有する 
1週
2週

清掃の回数

原則として毎年1回実施する。ただし”旧構造の全ばっ気”は6月ごとに1回以上実施する(特例)。

各槽の保守点検と清掃の実際

保守点検と清掃の実態を動画でみてみる。

 保守点検の実際をみる。動画サイトへ

 清掃の実際をみる。動画サイトへ

沈殿分離槽 ■清掃のポイント
  • 沈殿汚泥及びスカムの厚さの測定がポイント。
  • 清掃の目安
    「流出水の浮遊物質濃度が著しく高くなり、二次処理装置の機能に支障が生ずるおそれがある」
  • 具体的には、スカムの底面が流入管の下端に近くなった時。又は汚泥の堆積面が流出管の下端に近くなった時。
 
  • 第1室のスカムは全量引出す、汚泥は可能な分だけ引出す。
  • 第2室の汚泥、スカムの引出しは適正量
  • 清掃後すみやかに水を張る。

嫌気濾床槽 ■清掃のポイント
  • 「死水域を生じないようにし、及び異常な水位の上昇生じないようにする」ことがポイント。
  • 死水域とは濾材内に汚泥が片寄って付着し、その部分だけ汚水が流れないこと。
  • 異常な水位の上昇は濾材の閉塞(目詰まり)による。
  • 清掃の目安
    「流出水の浮遊物質濃度が著しく高くなり、二次処理装置の機能に支障が生ずるおそれがある」
 
  • 第1室の汚泥、スカムは全量引出す(引出量は槽容量に洗浄水を加えた値)
  • 第2室の汚泥、スカムの引出しは適正量
  • 清掃後すみやかに水を張る。
  • 同時に接触ばっ気槽を洗浄するのが望ましい。
  • 洗浄水は張り水に使用できない

接触ばっ気槽 ■清掃のポイント
  • 「溶存酸素量が適正に保たれ、及び、死水域が生じないようにする」が基準。
  • 接触材の逆洗、清掃の目安は、
    ・各部位のDOに大きな差がある。
    ・保持汚泥が黒色化している。
    ・水位が上昇する。
  • 底部に汚泥が多量に堆積している。
  • 剥離汚泥を嫌気濾床槽に戻すのは保守点検、槽外に引き抜くのは清掃。
 
  • 汚泥等の引抜きは適正量
  • 上澄み水は沈殿分離槽の張り水にOK
  • 張り水は水道水などの清水だけ。

沈殿槽
  • 水面にスカムが浮いている場合は、ひしゃく等で嫌気濾床槽又は沈殿分離槽の第1室に返送する。
  • 多量のスカムが浮いている場合は、引抜き、清掃する。

消毒槽
  • 堰(せき)が調整できるものは調整を行う。
  • 消毒剤と水の接触具合(薬の溶け具合)を確認する。
  • 消毒剤がない場合は補充する。