(2) 生物処理(好気処理)

 微生物を利用し、有機物を同化あるいは異化して浄化する作用の総称である。微生物の分類は、細菌→原生動物→後生動物 程度だけは憶えたほうがよい。これは生物ピラミッドまたは食物連鎖ともいう。  また、酸素を必要とするかしないかによって、好気性微生物、嫌気性微生物に分けられる。

《好気性処理》
 好気性微生物を利用した処理法で、生物処理の主流といってよい。主な機能として、有機物の浄化と、アンモニアの形をした窒素の酸化(硝化という)がある。有機物の浄化だけでなくアンモニアの酸化を忘れてはいけない。

 まず、有機化合物は炭素C、水素H、酸素Oが主であるから、まずこれをCHOと書く。これは下図のように、約半分が炭酸ガスCO2と水H2Oに分解される。残りの半分は微生物の細胞物質に変化する。

 同化作用で生じた微生物も有機物、つまりBODである。これを除去しないと完全に汚水を処理したとはいえない。そこで、最後に沈殿槽(室)を設けている。細菌の大きさは1〜2ミクロンで、このままでは沈降しないが、細菌は多数集まって大きな塊り(これをフロックという)をつくる性質がある。したがって、見かけの粒子径が大きくなり、ストークスの式により、沈降分離されるようになる。
 しかし、このように微生物が増えつづけると、処理槽内に過剰に蓄積し、かえって障害になる。そこで、一定期間ごとにその一部を外に取り出してやる必要がでてくる。これを余剰汚泥の引き抜きという。

 この余剰汚泥の発生量は、処理時間や汚水の濃度(流入するBODの量)に関係する。処理時間が長い、つまり槽容量が大きい、言い換えればBOD負荷が小さいと汚泥の発生量は減少する。同じ有機物量を処理する場合でも、それに要する時間により、細菌の増殖量が異なる。また、細菌は原生動物の餌となり、原生動物はさらに後生動物の餌となる。この生物ピラミッドが大きければ大きいほど、余剰汚泥の発生量は少なくなることが分かる。

 浄化の原理でよく出るのが右の図で、処理工程が進むにつれ、生物量と有機物量が時間とともに増加・減少する状態が表わされている。対数増殖期・減衰増殖期・内生呼吸期の三つの名称は憶える必要がある。

対数増殖期:微生物のおなかがすいている。
減衰増殖期:満腹でエサもなくなりかけた。
内生呼吸期:エサがなくなって共食い状態。



 好気性処理のもう一つの機能として、下に示す硝化反応がある。

 この硝化反応の意義は、後で述べる嫌気性処理と組み合わせ、生物による窒素除去(脱窒)ができることである。また殺菌の項で説明するが、硝化が進んだ汚水には、塩素消毒がよく効く

 硝化反応にはマイナス面もある。硝化が不十分に進んだ汚水には、アンモニアが残存し、硝化菌がたくさん含まれているが、この処理水のBODを測定すると、有機物のBOD以外に、硝化反応による酸素の消費が測定され、不思議なことにBODがとんでもなく大きい数値を示すことがある。これを窒素に由来するBODということで、N-BODという。特にし尿系の強い汚水は注意が必要。有機物だけのBODを測定するには、ATU(アリルチオ尿素)を添加すれば可能である。


 ある時間までは硝化が進まず、有機物が酸化されてBODが減少する。さらに処理時間が長くなると、硝化菌の活動が始まりN-BODのためにBODがかえって高くなる。さらに処理が進むと硝化反応が完了し、BODが低下してくる。この時点では普通BODは5mg/L以下である。嫌気方式の家庭合併槽では、処理水BODの48%をN-BODが占めるという報告もある。

■硝化反応の意義は浄化槽を知るためにとても重要