|
vol 213:海の神々
大波が行きかう海。
「ここか。」
「うん。意識を集中させたらここに来たから。」
勿論、俺達は幽体のままや。
上から見ていても何も無い広い海。
もともと、俺は海があまり好きやない。
見てるだけやと綺麗やけど、
海に入ると何がおるんか解らんし、
下手したら息が出来んいうのが恐怖で堪らん。
今は幽体やから大丈夫やけども・・・。
海の中へと潜る。
いろんな魚がおって、
どんどん下へ下へと潜る。
「カン、これ以上先は光が届いてないね。」
「うん・・・。
せやけど、海の底に行かな。」
大樹と手を繋いだ。
真っ暗になっていく海の底。
随分潜ると、小さな明かりを見付けた。
「あれ・・・。」
「行ってみよ。」
その明かりに向かって進むと、
真っ白いワンピースのような服を着た、
女性がランプを片手に底に立っている。
「あの~。」
俺はすぐに声をかけた。
(これは天の子。)
相手は俺を知ってるらしい。
「天界の女神?。」
女は俺に笑みを見せて小さく頷いた。
(私は海の女神。)
「海の・・・女神。」
(くぉぉぉ!ここから出せ!。)
女神の事を聞いていると、
ランプの光の外から大声がする。
「カン、誰か他にもいるみたい。」
「うん。あの、ここで何やってるんですか?。」
とにかく女神にこの震源地で何をやってるんか問いかけた。
(眠っている地震を起こしているのです。)
俺も大樹も絶句した。
「へ?。」
「いや、ちょっと待ってください。
起こさせたって?。」
女神は静かに説明する。
(そう。時が来たので、私の仕事。)
(何が仕事だ!
神がこんな事をしてもいいのか!
命ある者を救うのが神ではないのか!。)
また、大声で闇の中から叫ぶ者がいる。
「この地震を神が起こしてるって言うんですか?
なぜ?!。」
その答えはわかっとる。
「大樹・・・滅ぼす為や。」
「滅ぼすって・・・神が手を?。」
俺は下唇を噛みしめた。
「闇の者にさせるんじゃ・・・。」
「闇の者は人を唆すしか出来ない奴等が多い。」
大樹は叫ぶ声の方に向かう。
そこにはカゴのような檻に閉じ込められたじぃさんが。
「あなたは?。」
大樹がじぃさんに話しかけた。
(ワシは大綿津見神。)
「オオワタツミって・・・。」
「誰やそれ。」
何も知らない俺に大樹は、
「カン、大綿津見神は日本の神の子で、
海の神だよ。」
「海の神?海の神がなんで檻ん中に。」
じぃさんは檻を掴んで女神を睨み、
(その女がワシを捕まえたんじゃ!。)
そのじぃさんの言葉に女神は、
(何を申す。そなたが手を貸さぬと言うからではないか。)
(ハッ!貸せるわけがない!
海を守る者が、
海を荒らすなど!。)
「じぃさん、まっとれよ。
今出したる。」
(天の子!何をなさるのです!。)
俺は自分の光を使って檻を持ち上げた。
じぃさんは慌てて檻から出、俺を不思議そうに見とる。
(貴女は天界の神の子。
光の女神。
これは神々の決めたこと。
それを邪魔する気なのですか?。)
「神がこんな事するんやったら、
いくらでも邪魔するで?
このじぃさんの言うてる事は正しい。
アンタが起こした地震でどれだけの命が奪われたと思ってんねん。
神もまた、紙一重やなぁ。
命を奪う。」
(なっ!!!。)
「おし!じぃさん!
今すぐこの地震止められるか?!。」
(え?いや・・・今すぐは無理じゃが。)
「どうにもなりませんか?
津波で日本が破壊されてるんです。
たくさんの命が奪われているんです。」
俺と大樹の言葉に、
じぃさんは考え込み、
(うむ。やるだけやってみる!。)
(ま、待ちなさい!。)
女神がじぃさんに向かって手を翳し、
檻を再び持ち上げようとした。
俺はじぃさんの前に仁王立ちになって、
「大樹、お前はじぃさんと行け。」
「カンは?!。」
「・・・阻止する。」
213 
|