|
vol 208:旅立ちの意味
弟と友人が日本を離れて、
イスラエルに旅立つ。
空港へカンと一緒に見送りに行く。
俺は口数が少ない。
「ほらぁ~、大樹!。」
「え?。」
カンが俺の背中を押した。
「・・・。」
「兄様、我は平気故、心配せんでもよい。」
「わかってる。
でも、いくらご加護があるとは言え、
無茶なことはしないで。
生死のある今は体なんだ。
それを忘れないで、二人とも。」
「うむ。」
シロの考えを甘い考えと思ってしまう。
けして、甘くはないのだけれど。
「シロの事は俺が守るから、
どうか任せて欲しい。」
弥勒が俺に頭を下げた。
「ちょっと弥勒!やめてよ!。」
頭を下げられて俺はおかしな気分になる。
弥勒の腕に触れて頭を上げさせ、
「弥勒、シロだけじゃなくて、
お前のことだって心配で仕方ないんだ。
シロを守ってくれるのは嬉しいけど、
二人で無事に戻って来て欲しい。」
「・・・あぁ。」
弥勒は笑んだ。
「もう時間やで?
弥勒、シロ、俺の分までよろしくな。」
「うむ。」
「じゃあ、またな。」
「おう。」
「気をつけてね。」
弥勒とシロが行ってしまった。
「へぇ~・・・。
どんどん近付いて来たねぇ。」
ミサも終わってくつろぐ午後の一時。
ドアをノックされて返事をする。
『はい。』
『イエス様、1時間後に病院の訪問ですが、
是非あなたに会いたいとおっしゃられる方が。』
『誰?。』
『アメリカの大統領でございます。』
『今度はアメリカか。』
僕の知名度は上がりに上がっている。
いろんな国のクリスチャンや、
そうでない宗派でも、僕に救いを求めにやってくるんだ。
彼等は神を崇めているつもりだろうけど、
僕を主の生まれ変わりだと思っていて、
僕にひれ伏す。
それって、
神々への信仰じゃなく、僕への信仰なんだよね。
そこ、
全く解ってない。
僕に癒しと安全を求めてくるんだから。
僕の手を握り、
何度も呟かれる言葉は、
主よ・・・。
笑わせる。
『そう。いいよ。
迷える子羊は救わないと、ね。』
208 
|