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vol 204:恋人というイベント
2月14日月曜日。
今日はバレンタインデーだ。
仕事上、東京に行くのに新幹線やけど、
駅の広告も、店もコンビニまで何週間か前から、
バレンタイン用のチョコチョコチョコ。
「山ちゃん、今日いけるん?。」
スタイリストの女性に予定を聞く。
「もっちろんです。用意も万端ですよ。」
午前中で仕事は終わらせて、
午後からの仕事は一切入れてない。
仕事が終わると、山ちゃんのアパートに行く。
帰りにデパートで買った袋を持って。
「じゃあ、まずチョコを刻みましょうか。」
まな板の上で板チョコを細かく包丁で切る。
「うぇ・・・めんどくさ・・・。」
「あはは、でもカンさん上手いですね。
料理されるんですか?。」
「んー?たまーに。」
「へぇー。」
板チョコを数枚切って、
湯を張ったボールの中のボールに、
そのチョコを入れて溶かす。
実に手間がかかる作業だ。
「生クリームいれまーす。」
「どうぞー。」
でも、俺は料理は嫌いじゃない。
後片付けは嫌いやけども・・・。
「スポンジ焼き上がりました。
冷ますから、お茶にしましょうか。」
ティーブレイクタイム。
「お友達にあげるって、またすごいですね。
なんか、いいなぁ~。」
さすがに恋人にやるとは言えない。
「俺、イベント大事にしたい派やから。」
「そういう彼氏欲しい~。」
「山ちゃん、彼氏おらんの?。」
「いますけど、私からプレゼントばっかですね。
まぁ、誕生日とかはくれるんですけど、
一緒に買いに行ったり?。」
「あー、サプライズ系はないってことか。」
「そうなんですよぉ。」
「なんやそれも、寂しいなぁ。」
恋愛話しを聞きながら時間も過ぎて、
スポンジに生クリームを挟み、
上からチョコでコーティング。
再び冷蔵庫で冷やして固めてから、
上にホワイトチョコのペンで文字を書く。
「なんかシンプルだけど、オシャレ。
金粉がすごくゴージャスに見えますね。」
「あんまいろんなもん入れたり飾るよりも、
このが美味いと思うねん。」
出来あがったケーキを買ってきた箱に入れて、
合間に作ったチョコクッキーはラッピングの袋に入れる。
小さな円形のケーキも作った。
それも箱に入れて、
「ほい。これ山ちゃんに。」
「えぇ!。」
小さなお礼をこめたサプライズ。
「わぁ~!てっきりお友達のだと思ってたのに。
嬉しい!。」
人が喜ぶのはどんな小さなことでも、
自分も嬉しくなる。
「カンさん、新幹線の時間やばくない?。」
「あー。でも、片づけ・・・。」
「いいですよ。気にしないで行ってください。」
ニッコリ笑む彼女に、やっぱり女性はいいなと浸りつつ、
「ほんなら甘えさせてもらうわ。
ありがとう。」
お礼を言ってアパートを出てタクシーで東京駅まで向かって、
新幹線に乗り込む。
家に着くのは夜10時頃かな。
モバイルPCで仕事のメールなどをチェックしながら、
駅に着くのを待ち、
自宅へと。
「ただいまぁ。」
「おかえり!。」
奥から大樹が玄関に出迎えに来た。
「寒かっただろ。
風呂入る?。」
この会話にはさすがに慣れたけども、
どこぞの新婚さんや。
「弥勒とシロは?。」
リビングに行くと大樹以外の気配がない。
「シロ連れて出かけてまだ戻ってないよ。
荷物多いね。
チョコいっぱい貰ってるし。」
スタッフや関係者からのチョコが入った袋を見て苦笑してる。
「なんや、ヤキモチか?。」
笑いながら言ってマフラーとコートを脱ぎ、
「大樹からはないん?俺にチョコ。」
フェイントをぶちかます。
「あるよ!勿論。」
大樹は綺麗にラッピングされた箱を持って来た。
「カン、アーモンドチョコ好きだろ?。」
優しく笑んで箱を手渡され、
「マジ?!好き好き!。」
箱を受け取ってから、
さぁ、次は俺や。
「じゃじゃーん!。」
ケーキの入った箱を取り出して大樹に両手で手渡した。
「うそ・・・俺に?。」
この意外そうな顔。
恋人らしいことは大樹専門で、
俺からはあんまりないからや。
「開けて、開けて。」
早く見せたい衝動に大樹に急かしてみせる。
大樹は机に箱を置くと、
蓋を開き、
「うわ・・・。」
金粉の散りばめられた中に、
英語で書かれた文字。
taijyu
st.valentine 2/14
「俺作ってんで?。」
「えぇ!手作り?
でも、そんな時間どこに・・・。」
「午前中で仕事終わらせて、
スタイリストでお菓子作り好きな子の家借りて、
作ってん。」
満面の笑みの俺は、
この報告だけで満足。
「カン・・・。」
大樹は俺を抱きしめた。
甘くキスをして、
徐々に深まる口付けに若干危機感を感じ、
「ん・・ふっ・・は、大樹、
俺もケーキ食いたい。」
そう、自分の作った物ほど、食いたいものはない。
味が知りたいんや。
途中でやめさされて残念そうにする大樹をしり目に、
キッチンからフォークを持ってくると、
「いっただっきまーす!。」
大樹にあげたチョコケーキを、
俺が食いはじめる。
なんとロマンの欠片もないんだ俺。
「んー!いけるやん!。」
バクバク食っては笑む俺に、
大樹はクスクス笑って、
「俺にくれたのに、カンがひとりで食べてる。」
「あ・・・そうやった。」
少し反省。
女の子なら、こんな事はしないだろう。
「じゃあ、俺も食べようかな。」
「っ!!。」
俺の唇についたチョコの欠片を、
舌で舐めとったのが、
大樹が俺の手作りケーキを食った初めてのチョコやった。

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