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vol 190:死ねない命
夜中に何故か目が覚めた。
2時。
もう一度目を閉じる。
(お前は、なんで天使信じへんの?。)
耳元の声で目を見開いて飛び起きた。
僕のベッドに真っ白な服に金色の髪の女の人。
『・・・。』
(なんや?悪魔!・・とか言わんのかいな。)
クスクス僕を見て笑う。
『・・・悪魔・・・なの?。』
僕は目を細めて怖さでベッドの端にずりずりとゆっくり尻を動かす。
(ざんねーん!。)
女の人は僕の目の前まで来て顔を近づけ、
(正真証明の天使や。)
僕の前にもとうとう天使が現れた。
『僕を殺しに来たんだね。』
(そこなぁ~、大きな誤解や。
メアリーやエミリーの話し聞いたやろ?
天使達は、命尽きた時に、迷わんように現れて、
生まれた時から短い寿命で苦しんだ、
子ども達を天国に連れて行って天使にする為に来てるんや。)
『ほら!ほら!天国に連れて行く為に来てるんじゃないか!
命を奪ってるのはアンタたちだろ!。』
天使は額に手のひらを当てて肩を落とし、
僕の言葉に呆れた。
(あのなぁ、ジャック。
お前は神や天使の何を知ってる言うねん?。)
『そんなの知るわけない!。』
(せやろ?
知るわけないのに、教えてる事全部否定して・・・。)
『僕は・・・僕は騙されないだけだ!。』
(あーもー、叫ばんでも聞こえてるって。
悪魔がな?子ども騙せると思うか?。)
『・・・。』
(子どもは清き心の生き物。
どんな悪い子であっても、大人のようにそう簡単には騙せない。
しかもやで?
この病棟にいる子どもは、天使になる存在の子。
悪魔には騙せへん。)
『じゃあ!じゃあ・・・僕も死ぬってことだろ・・。』
僕の前に天使が現れたんだから。
(いいや。お前は死なんよ。)
『え?。』
(お前の寿命はまだまだ長い。)
『だって、僕の前に現れた。』
(それは、あまりにお前が誤解してるからや。
天使を悪魔って言うて、
神をも誤解しとる。
メアリーやタイラーが心配しててなぁ。)
『メアリーや・・・タイラーが?。』
(そうや。今ここにおるよ?。)
天使が指さすソファーを見た。
『た、タイラー!!!。』
そこには死んだはずのタイラーとメアリーが、
白い服を着て笑顔で座っている。
(ジャーーック!。)
気付いた僕に声を上げて笑顔で僕のベッドに駆け寄り、
(ジャック!。)
『タイラー、タイラーじゃないか!
メアリーも!。』
(えぇ。見て?わたし、天使よ?。)
メアリーは背中を見せた。
そこには小さな白い羽根がついていて。
『で、でも・・・死んだはずじゃ・・・。』
幽霊・・・。
(あー、そうとも言うかなぁ。)
女の天使は呟いた。
(なぁ、ジャック。オレたちはもう苦しくもなくて、
神様にも会ったんだぜ?。)
『神様・・に?。』
(そうよ?とても優しいおじいさんみたいだったわ。)
メアリーとタイラーは楽しそうに天国のことを話してくれた。
(もうじき、エミリーもここに来るの。)
『え、エミリーが!
駄目だよ!エミリーを死なせないで!。』
(ジャック、死なせるんじゃなく、
死んでしまうんだよ・・・。
オレらの運命なんだ。)
僕は思った。
楽しそうで苦しくなさそうな二人を見て。
『僕の・・・僕の足も歩けるようになる?。』
するとタイラーとメアリーは眉尻下げて、
(ジャックはここには来れないよ。)
(あなたはまだ生きなきゃ。)
『そ、そんな!嫌だよ!
歩けるようになるなら、みんなのところに行きたいよ!。』
タイラーとメアリーは僕の膝に手を乗せ、
(ジャックは生きていても歩けるようになるわ?。)
(信じて。)
僕は泣いた。
自分だけ取り残されたような感覚になったから。
(ほんなら、タイラー、メアリー行こうか。)
(ジャック、頑張ってね!。)
(わたしたちも、ずっとあなたを見守ってるわ!。)
『うん・・うん・・・。』
天使とタイラーとメアリーが消えたと同時に僕も深い眠りに落ちた。
再び目が覚めたのは、父さんの声で。
『ジャック!起きろジャック!。』
『ん・・・父さん?。』
僕の病室で看護師が慌ただしい。
『ジャック、見つかったんだよ!。』
『え?。』
母さんは涙を溜めて僕を抱きしめた。
『あなたのドナーが現れたの。』
『クリスマスイブの奇跡だ!。』
その人は日本人で、多忙で時間がない為、
すぐにオペが始まった。
隣に寝かされた人を見たのは、
麻酔が切れてから。
『・・・。』
『目ぇ、覚めたかぁ~?。』
この声・・・。
『痛いのによう頑張ったな、ジャック。』
天使の!。
僕は痛みや疲れで声も出なかった。
『お前は生きるんや。
タイラーやメアリーが出来んかったことを、
お前は生きて、これからの難病の子を救うんやで?。
サンタからの贈り物はママとパパに任せてる。
これは、神からの贈り物や。』
これ以上は覚えていない。
目が覚めると25日になっていて、
クリスマスツリーに枕元にはプレゼントが置いてあった。
「カン、大丈夫なの?。」
まだ入院してなアカンのに、時間もなくて、
無理矢理、日本に帰って来た俺は痛みでずっと半泣きやった。
「しっかし、お前もよくやるな。」
他人事みたいに言う弥勒。
「せやかて~!天使を悪魔や思われてんのも嫌や!
それに、あの子は将来、難病の治療の名医になる子やで?
その道を作るのに、他の天使に任せとかれへんもん。」
「ぷ。タイラーに頼まれたからのくせに・・・。」
「たいじゅ~。」
「メリークリスマス、カン。」
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