vol 189:天使の理由






街はクリスマスの色どりで溢れている。

どの国も同じ。

僕は今日、22日病院の子ども達と過ごしていた。

なぜならば、僕もこの病院で入院しているからだ。

『ジェームズ!。』

『やぁ!エミリー。』

エミリーはまだ5歳の女の子で、

頭にニットの帽子をかぶっている。

僕は車椅子。

この病棟にいる子ども達は、白血病の子ども達。

骨髄移植をすれば治る見込みもあるけど、

家族とも一致せず、提供者をただ待つだけの子ども達の病棟。

僕はエミリーを膝に乗せて手で漕ぐ。

『明後日にはクリスマスイブだ。
もうお願いはしたのかい?。』

『えぇ。したわ?。』

『何をお願いした?。』

『それはひみつよ?。』

僕たちの寿命はとても短い。

数秒単位で体の血液がガンに侵されている。

『ジェームズはお願いはもうしたの?。』

『あぁ、もちろん。』

『わぁ~!なになに?。』

『それはひみつ。』

『まぁ!いじわるね!。』

『あはははは!。』

僕は13歳になる。

この病棟では最年長だ。

両親は普通の会社員とパート。

治療費も限度もあって、僕の為にひたすら働いている。

『ねぇ、ジェームズ。さっき、タイラーが死んじゃったの。』

『・・・うん。』

『タイラーのママもパパも泣いてたわ。」

『そうだね。』

タイラーは、まだ7歳だった。

僕よりも小さな子が亡くなっていく。

エミリーの病室に入ると、彼女は膝から降りて、

ベッドによじのぼる。

『死んだら神様に会えるって本当かしら?。』

『ん~。天国に行けたら会えるね。』

『天国に行けないの?。』

『それは僕たちにはわからないよ。
神のみが知る。』

もしも、神様がいるなら、

どうして子どもの僕達の命を奪うのか、

僕はわからない。

『エミリー、風邪ひくと駄目だから布団に入って。』

『わたしね?ジェームズ。
毎日天使に会うの。』

『え?。』

タイラーも良く言ってた。

亡くなる数日前になると、毎日天使に夜会うって。

タイラーだけじゃない。

死んだ子どもたちはみんなそう言う。

『天使と会った日は、とても体調がいいの。』

嬉しそうに言うエミリーとは逆に、

僕は顔をしかめてエミリーの手を握った。

『エミリー?それは天使じゃない。
天使のふりをした悪魔だ。』

『悪魔?。』

『そう。だから絶対に話しをしちゃダメだよ。』

『でも、天使だって言ったわ?。』

『天使じゃない。
いいね?絶対口を聞いちゃ駄目だ。』

エミリーを不安がらせたいわけじゃない。

でも、死んでいく子ども達が揃ってこの話しをした、

数日後に死んでいった。

僕はまだ出会ってないから、ただの妄想だとばかり思ってるけど、

天使の話しを聞くと嫌な胸騒ぎがしだすようになったんだ。

『少し、寝て。
イブにはもう一度お祈りしないと。
サンタにプレゼントもらわなきゃ。』

『サンタは神様?。』

布団に入りながら言う質問に、僕ははっきり答えた。

『サンタは神様よりもいい人だよ。』

エミリーは笑みをこぼしてぬいぐるみを抱いて目を閉じる。

僕はそれを見届けてからエミリーの病室から出た。

『メアリーの容態が急変しました!。』

廊下が慌ただしい。

僕はすぐにメアリーの病室に向かった。

メアリーは4歳の女の子だ。

そっと、中に入ると、とても苦しそうなメアリーが寝てる。

『メアリー?。』

僕の声にすぐにメアリーは目を開けた。

『ジャック・・・。』

『苦しい?。』

『ジャック・・・天使がいるよ?。』

メアリーは力を振り絞って僕の隣を指差した。

隣を見ても誰もいない。

『メアリー、天使なんていないよ。』

『いつも夜になると側にいてくれてたのに・・・、
今日はまだ夜じゃないのにね。
メアリーのこと心配なのかしら。』

『メアリー?天使と口をきいちゃ駄目だって言ったろ?。』

『天使は言うの。お前達は清らかすぎて、
この世界とは合わないんだって。
そして、次は元気な・・体をあげるから・・・、。』

メアリーはとても苦しそうな顔をした。

『メアリー、もういいよ。
何も話さないで?。』

『その・・体で、
今度はパパやママやこの世界で生きなければならない、
子どもたちを救おうって。』

『なにを言ってるんだ!
僕たちの命を奪う理由がそれか!。』

『ジェームズ、でもとても光栄なことよ?。』

僕は声を荒げた。

『悪魔め!メアリーに嘘ばっかり吹き込みやがって!
メアリーを殺したら僕はお前を許さない!。』

『ジェームズ・・・天使がとても悲しんでいるわ?
あなたの体を抱きしめてる。』

『い・・いやだ!
いやだいやだいやだ!。』

僕は見えていないはずなのに、
怖くなって体を動かした。

『うわ!。』

車椅子ごと倒れて、
動かない足を引きずって倒れた車椅子にしがみついた。

『このまま生きていたって、
ママやパパを苦しめるだけよ?
天使はわたしたちが死んだあと、迷わないように、
その時まで、いろいろなことを教えてくれるの。
悪魔じゃないわ?。』

『まぁ!ジェームズ!。』

入ってきた看護師に抱き上げられ、

『駄目じゃない!メアリーは今お話できないの!。』

病室に連れ戻された。

僕は泣いた。

一人で泣いた。

そして、僕が泣きやんだ時にメアリーは死んだんだ。












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