1.年金問題
- 2.5%年金減額法案について
11月に政局のドサクサに紛れて年金の2.5%を減額する国民年金法の改正案が成立してしまいました。この年金の引き下げ自体問題のあることと思いますが、それよりも問題に感じたのは政府の説明、社会保障審議会年金部会での議論のありさま、経済評論家と称する人たちの発言、そして特に新聞やテレビのニュース解説等マスコミの報道のあり方でした。全体として誰かに巧みに操られている印象であり、このような状態で今後のわが国の社会保障制度改革が適切に行われるのかについて絶望的な思いに駆られています。事実経過の解説と、私の意見です。
- 第3号被保険者問題
非常に誤解の多い国民年金の第3号被保険者の制度について正しい解説を試みてみました。
(遺族厚生年金についての説明を追加しました:2013/5/31) - 国民年金保険料の未納
国民年金保険料の未納者が4割を越えているというのはニュース等でもしばしば取り上げられて知っている方も多いと思いますが、単に未納はけしからんと言う前に、制度と運用がおかしくないかという意見を述べます。
- インフレにより年金額はどうなるか
政府、日銀は年2%のインフレを目指しています。実現するかどうか分かりませんが、もし目論見どおり、今後毎年2%づつ物価が上昇した場合、年金額はどのようになるのでしょうか。年金額と物価との関係についても多くのブログ等に誤りや不正確な記述が氾濫しているようです。正しい解説を試みます。
- 「世代間の不公平」という言葉に惑わされるべきではない
年金に関し、世代間の不公平、世代間格差ということが声高に言われています。世代間の格差は何故生じたのでしょうか。それは非難されるべきことで、正されるべき「不公平」なのでしょうか。そんなことはないのではないかということを解説し、ターゲットとすべき真の問題は何かについてまとめます。
- 社会保障制度における親族を考えよう
社会保障制度では家族、親族が大きな意味を持ちます。制度の内容には、親族や家族、世帯あるいは配偶者について、一定の考え方が反映されています。その底にある考え方が自身の価値観と相容れない人たちにより制度への攻撃が行われることがあります。本稿では社会保障における親族ということについて考えてみたいと思います。別稿「第3号被保険者問題」では取り上げなかった第3号制度導入の背景についても説明します。
- 年金受給資格期間を10年に短縮するのは間違っている
平成27年10月から年金の受給資格期間が今までの25年から10年に短縮されます。これは全く意味の無い奇妙な変更であり、かえって低年金者を増やす可能性があることを説明します。
- 「国民年金」という語のややこしさ
「国民年金」という語が何を指すかというのは多少ややこしいです。その辺の分かりにくさが実は第3号被保険者バッシング等の背景になっているのではないかとも思われます。私が理解している範囲で説明したいと思います。
- 公的年金制度の将来〜社会保障制度改革国民会議の議論から〜
8月5日の社会保障制度改革国民会議で最終報告書案が提出されました。議事録がまだ出ていませんが報道等によるとこのまま確定したということのようです。報告書はともかくとして、会議では年金関係について充実した議論が行われています。国民会議における議論から伺われる公的年金の課題や将来像について私見を交えて紹介します。
- 遺族年金について考える〜男女差違憲判決は正しいか〜
大阪地裁は11月25日に、地方公務員災害補償法に定められた遺族年金の配偶者に対する支給要件において、男性のみに年齢要件を課しているのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反するという判決を下しました。これに対し12月6日に被告の地方公務員災害補償基金は控訴したようです。この遺族年金における配偶者の男女の年齢要件の差の問題を考えてみます。本当にこの判決は妥当なのでしょうか。私は正しいかどうかはともかくとして、実際上、非常に厄介な問題を引き起こす判決であり、基金の控訴は当然と考えます。公的年金における遺族年金の制度についても解説します。
- 年金積立金の無駄遣いがまた始まるのか
11月20日に経済再生担当大臣の下で開催されていた”公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議” なるものが報告書を出しました。年金積立金が国内債券中心で運用されているのを批判し、投資先を多様化し、収益を向上すべきという内容です。年金の財政を考えているというより、120兆という巨額の年金の積立金を投入することで金融市場を活発化させようという意図と考えざるを得ません。目的外への流用という意味でかつての官僚による積立金の箱物への無駄遣いと同じであり、かつ影響はそれとは比較にならないくらい大きく、年金財政を破綻させる可能性さえあるように思います。
- 第3号被保険者制度は不公平、という意見をもう一度考えてみよう
幾つかの稿で少しづつ触れた第3号被保険者制度についてまとめます。 まとめの仕方としては、Googleで「3号 不公平」で出てきたページの意見を読んで、第3号制度を不公平とする理由を整理し、それぞれに反論するという形にします。
- 着々と進む官邸による年金積立金の私物化
経済再生担当大臣の下で開催された有識者会議なるものが、従来国内債券中心で運用されている年金積立金の積極運用を提言したこと。これは、年金財政を考えたものではなく、巨大資金投入によるアベノミクス路線の金融市場の活性化を狙ったものである疑いが濃厚なこと。従って年金資金の目的外使用であり、かつての官僚の無駄遣いと同じであり、かつ規模と影響ははるかに大きいこと。以上を「年金積立金の無駄遣いがまた始まるのか」で説明しました。本稿では社会保障審議会年金部会の報告書等その後の動きについて検証します。
- マクロ経済スライドとは何か〜しくみ、効果、見通し、問題点〜
マクロ経済スライドは国民年金、厚生年金の制度の中で決められている年金額を減額させる仕組みです。今まで、仕組みは決められていたものの実際には働いていませんでした。平成27年度に初めて発動されることになりそうです。今後の年金額に大きな影響を与え、年金制度を考えるるうえで最も重要な点の一つと言っても過言ではありません。この仕組みの理解なしになされる年金についての議論は多くの場合見当外れになります。また、政府、厚労省はこのマクロ経済スライドの働きを強化する改正をもくろんでおり、そのことに対する意見をしっかり持つうえでも現制度の理解は必須です。基本から説明します。
- 平成28年年金改正法案の内容〜実質は年金給付額の引き下げ
平成28年3月に通常国会(第190回)に提出され、現在開催されている臨時国会(192回)で継続審議されており野党より年金引下げ法案と批判されている年金制度の改正法案、「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」について内容を説明します。例によってマスコミでは誤りが流布されています。年金給付額の改定ルールという一番説明が難しいところに関わる改定案ですが、できるだけわかりやすく正確に解説してみようと思います。
- 分かりやすく正しい公的年金制度の説明〜2階建年金モデルは誤解のもと
我が国の公的年金制度について、常々、分かりやすいが不正確な説明か、正確だが分かりにくい説明しか見かけない気がして気になっておりました。日本年金機構や厚生労働省のパンフレットや解説は特にわかりにくいと思います。本稿では、年金制度についてあまり知らない人を対象に、まず第何号被保険者だの2階建年金だの分かりにくい概念は無しに、本質的にどのような制度であるかを説明します。その後でそのような概念についても触れます。
2.労働問題
- 規制改革会議と労働者の保護規定
今年1月から総理大臣の諮問に基づき規制改革会議というものが始まりました。ここで行われている議論の内容は規制改革という言葉から期待するものとは程遠く、労働者保護の制度をなし崩し的に壊す恐れがあります。その実態を現在の制度と共に説明します。
- 短時間労働者の社会保険はどのように変わるか
昨年8月に成立した「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金機能強化法)で平成28年10月1日より短時間労働者(パート等)の厚生年金保険、健康保険の適用基準が改正され対象が拡大されます。改正内容について大新聞にも正しく伝えていない記事が見受けられます。できるだけ正確に紹介します。
- 雇用の規制改革は結局どうなるのか〜日本衰退への道、規制改革会議の答申〜
平成25年1月から6月まで開催された規制改革会議は6月5日に答申を出しました。本稿ではその答申やその後出された政府の「規制改革実施計画」における雇用改革の部分について紹介し、検討したいと思います。
- 労働基準法で認められている労働者の権利を正しく知ろう
ニュースで見る限り後を絶たない、ブラック企業に代表される、企業による違法な労働者の酷使をターゲットにして、関係する労働基準法上の規定について説明したいと思います。
- 限定正社員なるものの胡散臭さに注意しよう
規制改革会議の答申を受け、政府は規制改革実施計画において「多様な正社員」モデルと称してジョブ型正社員(限定正社員)の"普及・促進"を図ることを宣言しています。しかしながらこの限定正社員というもの、よく調べると何を意味するものか不明な点が多いです。その普及・促進というのはいったい何をすることなのかさっぱり分かりません。旗を振っている人たちが本当は何を目指しているのか胡散臭く思えてしまいます。
- 解雇特区構想は消えたのか
特定秘密保護法が喧噪のうちに成立した12月6日の翌日、12月7日に「国家戦略特別区域法」が成立しました。成立法では「解雇特区」等批判された雇用特区は一見内容が大幅に後退したものとなりました。しかしこれで雇用特区は無くなったと安心してよいのでしょうか。どうもそうは言えないばかりか、特区に限らず雇用規制に影響を与えようとする意図が見えるように思います。
- 労働者派遣のル−ルはどう変わるのか
労働者派遣法については平成24年に大きな改正がありました。昨年は規制改革会議で改正が主張され、今年3月には改正案が国会に提出され現在審議中です。その度にマスコミ等で内容がややセンセーショナルに取り上げられたおかげで、現在の制度がどうなっているのか、何が決まっているのか、今何が提案されているのか等について分かりにくくなっている気がします。 現在の労働者派遣のルール、法改正の経過、現在国会に提出されている改正案の内容について整理したいと思います。
- 会社の義務〜人を雇っている会社がしなければならないこと〜
起業したばかりの会社、労務の専門家がいない小さな会社では、登記や税金上の手続きと比較し、労働関係、社会保険関係については、対応に抜けがあるような場合もありそうです。本稿では人を雇うに当たって会社がやらなければならない基本的なことについて書きます。専門家のいない会社の経営者だけでなく、そのような会社に使用されている人も、自分の会社はどうなのかということで、読んでいただきたいと思います。
- 平成27年4月の労働基準法改正案について〜裁量労働制はどうなる、高度プロフェッショナル制度とは
平成27年4月3日に第186回通常国会に労働基準法改正案が提出されました。高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の対象拡大等重大な改正を含みます。これに対して、「残業代ゼロ制度」として反対の声が上がっています。 本稿ではこの改正案をやや詳しく検討して、どこをどう変えようとしているのか探りたいと思います。
- 成立した労働者派遣法の改正法〜参院委員会の付帯決議について
平成27年9月11日に派遣法の改正がほぼ原案通り成立しました。一方参議院の委員会で膨大な付帯決議がなされています。本稿ではその付帯決議について内容を見てみたいと思います。
- 不安な同一労働同一賃金のゆくえ〜一億総活躍国民会議って何?
平成27年10月から一億総活躍国民会議なる妙な名前の会議が始まっています。その会議で取り上げられている議題の中で、「同一労働同一賃金」について考えてみたいと思います。
- 同一労働同一賃金のその後〜政府のガイドライン案等について
政府の同一労働同一賃金ガイドライン案が発表されましたが、急づくりのお粗末な内容と言わざるを得ません。同一労働同一賃金の実現に向けた検討会の中間報告と合わせて検討します。
- 時間外労働の規制はどうなるか〜労働政策審議会の報告
労働政策審議会の報告「時間外労働の上限規制等について」がまとまりました。今後の労働時間規制の法改正はこれに沿って行われると思われます。内容を紹介します。
- 平成30年国会提出予定の労働基準法等の改正案
棚ざらしになっていた高度プロフェッショナル制度、企画業務型裁量労働の拡大を含む労働基準法改正案が、労働時間の上限規制や同一労働同一賃金関係の法改正等と一緒にまとめられて「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」なる名前で提案準備中です。来年の通常国会に提出されるものと思われます。内容を紹介し、問題点を検討します。
- 安倍政権における労働政策の経緯〜その目指す労働状況の姿
働き方改革関連法案に関し国会が紛糾し、結局重要な一角を占めていた企画業務型裁量労働の拡大が削除されることになったのはマスコミの伝える通りです。裁量労働制の拡大の出所は規制改革会議です。企業側の人間と経産省の元官僚が主導する官邸の御用会議です。もともと労働者の視点などなく、経営者の都合と、企業、産業の発展しか考えていない会議なのです。問題の本質は安倍政権の考え方、およびその考え方を実現するために取っている手法にあります。今までの経緯について振り返り、問題がどこにあるかを明らかにし、また安倍政権の目指す労働状況について推察してみたいと思います。
- 解雇の金銭解決制度がまた動き出した〜雇用指針と併せてみると見えてくるもの
平成25年ころに持ち出されて各方面から批判された解雇の金銭解決制度が、いつの間にか着々と制度設立への道を歩んでいるように見えます。
- 働き方改革法の複雑な労働時間規制
平成30年6月29日に成立した働き方改革関連法における複雑な労働時間規制を検討・解説します。
- 副業・兼業のルールがどう変わるか 副業・兼業の促進政策の問題点
令和2年の法改正や副業・兼業の促進に関するガイドラインの内容を説明し、問題点はどこにあり、どうすべきかについて述べます。
3.その他
- 混合診療解禁は国民皆保険制度を崩壊させる
TPP参加を機に混合診療解禁が現実味を帯びてきています。混合診療の解禁はわが国の国民皆保険制度の崩壊をもたらす可能性が大変高いものです。その理由の説明と、混合診療解禁に対する強い反対意見を述べます。
- 番外編:いい加減にしてほしい・・不勉強なマスコミと偏向評論家 〜税制に103万円の壁など存在しない
最近、テレビ、新聞等で配偶者控除を取り上げるケースが多くなってきている気がします。それらでは廃止することが良いことである、あるいは廃止になってもやむを得ないと思わせるような解説が為されています。社会保険の被扶養者の存在と合わせて批判の対象にしているものも目にします。本稿ではそのような番組や記事の無知や偏向を指摘したいと思います。