夫婦二人ともが老齢厚生年金の受給資格者で、一方が死亡した場合、厚生年金(報酬比例部分)の金額は次の3つのうちいずれかになります(厚生年金保険法第60条、64条の3)。但し遺族は65歳以上で、また基礎年金については遺族基礎年金ではなく老齢基礎年金の支給を受けるものとします。
(1)(2)(3)のうち一番多い額をもらうことになります。
金額についてはこの通りです。形の上では(2)(3)の場合も、その金額のうち(1)の額については自分の老齢厚生年金が支給され、(2)(3)との差額が遺族厚生年金として支給されます(厚生年金保険法64条の3)。自分の老齢厚生年金を優先するという考え方に基づいていると思われます。
ただし、老齢厚生年金は課税、遺族厚生年金は非課税なので自分の老齢厚生年金の額により税金に差が出ることがあります。
本論の方で、世帯当たりの標準報酬月額が同じであれば、もらう老齢厚生年金の額の合計は同じになるということを説明しました。では一方が死亡した場合はどうなるでしょうか。上のように決められているため、生前の老齢厚生年金の夫婦合計額は同じでも、その内訳により一方が死亡後に他方(遺族)が受ける年金額は変わります。
両方健在で共に老齢厚生年金をもらっていて、その合計額が一定のとき、内訳により一方死亡後の年金額がどのように変わるかを示したものが下図です。
両方健在時の夫婦の老齢厚生年金の合計額を1(縦軸のフルスケール)としています。横軸は死亡した配偶者の老齢厚生年金が占めていた割合を示します。左端(0)が一方だけが老齢厚生年金をもらっていて、受給資格のなかった配偶者が死亡した場合。右端(1)は反対に老齢厚生年金をもらっていた者が死亡し、受給資格の無かった配偶者が遺族となった場合、すなわちずっと第3号被保険者(あるいは第1号被保険者)だったものが残された場合に対応します。横軸の各点において3本の線の一番上にあるものが一方が死亡した後の年金の受給額になります。
図に示すとおり、もらっていた老齢厚生年金の内訳、すなわち現役時の標準報酬額の合計額の内訳により、一方が死亡した後の年金額は変わります。これを不公平というかは難しいところで、実際の支給額の分布等を見なければ判断できないでしょう。
いずれにしろ、この問題は夫婦二人が厚生年金を受給していたとき、あるいは片方が(第1号あるいは第3号期間しかなく)厚生年金を受給していない時、片方が死亡した場合に厚生年金の受給額の比率により、死亡後の厚生年金の受給額の生前に対する比率が変化するという話にしかすぎません。第3号被保険者制度とは関係ありません。ずっと第3号被保険者でいた場合と例えばx=0.5の2点のみ比較して、第3号被保険者制度はおかしいから廃止すべきなどという議論はなりたたないことがお分かりになるでしょう。もし問題があるとすると、配偶者の一方が死亡したときの厚生年金の給付体系です。
初稿 | 2013/5/31 |
訂正 | 2013/12/4 |
●"(1)か(2),(3)は自己の選択"を削除 | |
文章修正 | 2014/6/28 |
●結論の説明を丁寧に分かりやすくした |