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vol 183:真の答え
カンが天界に行っていることすらも知らず、
俺はただただ部屋にこもって自分の本音と闘っている。
俺は納得出来てないからだ。
自分は生きている人間を救う為に降りて来たはずなのに、
事実は死んだ人間の救済だった。
災害の時に俺を見た時の無くなった人間の反応。
それは、安心の心そのものだった。
死への不安でいっぱいだった心が、
弥勒菩薩に会ったということで安心への心と変わる。
それを目の当たりにしたんだ。
やっぱり俺は死んだ者を救う為に降ろされた事を実感した瞬間だった。
ベッドに背を凭れさせ、
煙草を吸いながら電気もつけない部屋。
3日はこうしている。
自分で考え苦しみ、
もがき、
そこで何かを自分で得る。
さまざまな答えが出される中で、
自分が這い上がる答えを探す。
大概その答えは、信じるしかない答えだ。
俺はまだ普通の人間と違って、菩薩故に学んだ事もあるから、
理解し、這い上がるのも早い。
今回長いのは、あまりにデカ過ぎる事だから。
そんな俺を見かねて?。
目の前に薬師如来が現れた。
「や、くし・・如来。」
慌てて自分よりも遥か神の薬師如来に、
煙草を消して正座をし両手を合わせて頭を下げた。
(弥勒よ、楽にしなさい。)
優しい人なんだよなぁ。
超絶に優しい爺さんって感じ。
「は、はい。・・・どうかなされましたか?。」
薬師は俺の頭に触れてゆっくり撫でた。
(大役を任されてしまったな。)
「え?。」
(黄泉の国の神は優しさと慈悲に溢れておるが、
実際はどんな神々よりも厳しく、
己で気付かせる神々。
菩薩のお前にすら、はっきりとこの事の説明をせなんだ。)
薬師の話しに握り拳を膝で作って、
怒りがこみ上げてくる。
(辛いであろう。弥勒よ。
だが・・・皆、お前が苦しむ姿をあの世で、
歯を食いしばってみているのだ。
お前が苦しくもがいている時、
阿弥陀も大日も同じようにもがき、
自分のせいでと悔いておる。)
その言葉の意味は良く解る。
阿弥陀如来や大日如来の優しさや考えは良く知っているからだ。
「だから・・・だから、
こんな自分に苛立ちを隠せないんです。」
どんな立場であろうとも、
阿弥陀や大日、黄泉の国の神々に認められたからこそ、
こんな大役を仰せつかったのに、
応える事が出来ない自分。
「あの世で私は、どれだけの修業をし、
阿弥陀如来や大日如来に教えを学んで来たのか。
自分が情けなく、
いまだに・・・。」
(弥勒よ。
カンも言っていたではないか。
神々に反発しようと。
でも、生きている者だけを救うという事だけで良いのであろうか。
カンは解っている。
生きている者同様に死んだ者も救わねばならぬことを。
同じくらいにあの子は大事に思っておる。
お主もそうであろう?
ただ、死んだ者はあの世の神々がいるからと、
任せておるのだろう?。)
そうだ。
きっとそうなんだ。
俺は、死んだ者に対しては何の心配もしていない。
黄泉の国の神々がいるから。
(見たであろう。
死んだ者は天の子の言葉にも安心出来ず、
不安で満ちていた。
しかし、お前が光を見せた途端、
言葉なくとも、どれだけの死者が安堵したことか。
天の子では出来ない、
お前しか出来ない役目なのだ。
カンがしたくても出来ない事なのだ。)
その通り。
こればっかりは、身で感じた。
何を迷い、苦しんでる!。
生きている者と死んでいる者、
どちらも救う力を俺は持っている。
(そうだ。
どちらも救えるのだ弥勒よ。)
真に答えを見付け、
理解した時、
俺は泣き崩れた。
薬師如来は俺の背中を撫で、
(良く耐え頑張った。
今、阿弥陀も大日もお前をあんじていた全ての者が、
安堵し、お前と共に涙を流しておるであろう。)
「薬師如来様・・・本当にありがとうございました。
もう迷いもありません。
両方を救う事に自分が何を血迷っていたのか。
本当に、本当にありがとうございました。」
薬師如来は優しく笑みを見せ姿を消した。
その後、すぐにドアが勢い良く開いたと思ったら、
涙でグシャグシャになったカンが入ってきて俺に抱きつき、
「弥勒~!よう頑張ったなぁ~。
辛かったやろう~。
辛かったやろぅ。」
俺をあんじて、俺と共に泣いていた中のひとりに、
最大の仲間で友であるカンがいた。
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