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vol 175:恋人
「ねぇ!。」
「なんだよ、大樹!聞こえてる!。」
心配でしかたない。
「聞こえてるなら返事してよ!
遅すぎるよ!カン。」
かなりの時間が過ぎても、
なんの音沙汰もなく戻って来ない。
「・・・待つしかねぇだろ。」
弥勒も役目を終えて戻ってくるものの、
地震の場所だけは、地震が止まらなくて、
一旦引きあげて来たんだ。
TVでは速報がずっと流れてる。
地震が広がっているから。
「俺、無理!このまま待ってられない!
きっとカンに何かあったんだ・・・。」
弥勒は煙草を吸いながら眉間に皺を寄せて、
「何かあったら助け呼ぶだろ・・・。」
「あのカンだよ?
助けなんて呼ぶと思う?
それに・・・もし呼べない状況だったら・・・。」
弥勒も俺も苛立ってた。
心配から来る苛立ち。
「神々は全て把握しているはずだ。
落ち着いたらどうだ?。」
一人冷静なシロの言葉で俺は、
「だったら・・・神々に会いに行く。」
「・・・。」
弥勒は嫌そうな顔をしてみせる。
まだ、自分の役目に対して砕けてないんだ。
俺は体を離れ黄泉の国に向かった。
一人で。
シロもついて来なかった。
阿弥陀の国も、どこの国も忙しそう。
死者が増えたから。
「すみません、阿弥陀如来に会いたい。」
(申し訳ございません。
阿弥陀様は今手が離せないご様子。)
「阿弥陀は何をなされているのですか?。」
(我々の国に参られた者に説法を説かれています。)
説法?
カンは?
カンはどうなってる。
苛立ちが増す。
カンは放置なのか?
大日如来の国に行っても同じで、
中に入れてもらえなかった。
どうすればいい・・・。
カン・・・。
一人で苦しんでない?
もしそうなら、俺はすごく嫌だよ。
(チビ神。)
(チビ神。)
(蛇ノ神。)
幼い声。
振り向くと、足元に子狐が数匹いる。
「君たちは・・・。」
確かカンの友達。
(チビ神。)
(カン心配。)
(蛇ノ神、カン心配。)
(我ラ、カン居ルトコ知ッテル。)
「え?。」
子狐達は俺の両手を掴んで引っ張り、
(行コウ!。)
(行コウ!。)
(カン、迷ッテル。)
(悲シンデ苦シンデル。)
(行コウ!。)
「あぁ!行こう!。」
子狐の言葉に俺は狂いそうな程、
早くカンに会いたくなった。
行く場所は初めての場所で、
来たこともない場所。
俺の視界に入ったのは、
何もない土の上でうつ伏せに横たわっているカンだった。
時折、地面が大きく揺れる。
その度に、どこからともなく、
苦しい息使いが聞こえる。
「カン・・・カン・・・。」
俺はカンに近付いた。
前髪でカンの顔が見えないから、
そっと髪を撫であげると、
カンは涙を流して泣いている。
「カン・・・。」
目を閉じたまま、俺の触れた手にゆっくり手を伸ばして、
俺の手の甲に触れ、
「た・・いじゅ・・・。」
かすれた声で名を呼ぶカンに覆いかぶさるように抱きしめた。
「大樹・・・大樹。」
「カン・・・。」
子狐たちは寄り添って少し距離を置いた場所から、
不安そうに俺達を見ていた。
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