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vol 172:救済の意味
「シロ!こいつ、成長したやん!。」
「そうですね。」
阿弥陀の国の小さな小さな水溜りから、
大樹やシロの光景を見てた。
そこには俺と阿弥陀、大日に薬師、
なんでかいっつもこのメンバーや。
別に遊んでるわけやない。
大樹が困って解決出来んかったら、
その場に行って、
シロも出来んかったら行くつもりのスタンバイ。
「おし!シロも大樹も水害に火災、
止めてくれた。
次はアタシの番や。」
しゃがんでた足を伸ばして立ち上がった時、
大日が止めた。
「待ちなさい。」
阿弥陀が水溜りに手をかざして水面を撫でると、
歪んだ水面に映し出されたのは、
人間界で、たくさんの魂が彷徨う中、
ポツンと立ち竦んでいる弥勒の姿。
ただただ突っ立ているだけの弥勒に俺はキョトンとする。
「弥勒・・・こいつ何してんねや。」
死んだ事を理解していない、
死んでも傷を負って彷徨う魂が泣き叫び、
苦しんでいる中で、弥勒は動こうともせん。
薬師は悲しい顔をして、
「弥勒は心を痛ませておる。
冷静さを失っておる。」
大日も阿弥陀も黙って水面を見つめる。
「このままじゃアカン。」
俺は直ぐに弥勒の元へと向かった。
(うぅぅ・・・。)
(おか~さ~ん!おかぁさ~ん!。)
(痛い・・・痛い・・・。)
俺の耳にこだまする。
なんなんだ、これは。
俺はこんな地獄絵図の中に行く為に、
使わされたって言うのか。
こうならない様に俺は使わされてんじゃないのか。
死ぬ前に助けるんじゃないのか。
(はぁ・・・はぁ・・・。)
俺の足元で小さな男の子が倒れた。
だが・・・、
この子はもう死んでいる。
死んでいるのに息を乱し倒れる子ども。
「弥勒!。」
現れたカンは、足元の子どもに手を伸ばし、
「どないした?もう大丈夫や。」
優しい笑みを見せて子どもの腕を掴んで抱きしめている。
(はぁ・・はぁ・・苦しいよ・・・。)
「ううん、苦しないよ。
こんな傷もうないんや。ほら、落ち着いて?
目閉じて深呼吸してみ?
これは夢や。
大丈夫・・・。」
深呼吸?
もう息もない世界で深呼吸?
夢?
これが夢?
生きていた事を夢だって言うのか?
「そうや、ゆっくり吐いて・・・。
お母さんに会いに行こうや。」
(お母さん・・・。)
「うん。お母さん。」
カンの後ろに一人の阿弥陀の国の者が現れる。
「ゆっくり目開けて・・・そうや。
ほら!もう痛くもないやろ?
そこのお姉さんがお母さん一緒に探してくれるって。
お母さんがもし怪我してたら、
もう怪我なんかしてへんよって教えてやろうや?。」
(うん。)
「この子、頼む。」
カンは阿弥陀の国の者に子どもを預けた。
俺の目の前に立ち、
「おっまえ!何やっとんねん!。」
大声で叫ぶ。
「お前の役目やろうが!
今まで何してきてん!。」
俺は・・・、
俺の役目は、。
「・・・俺の役目は・・・、
俺の役目はこんな事じゃない!。」
取り乱した。
「俺は生きた人間をこんな事にならない為に、
この世に来た!
この世の人間も俺の事をそう思ってた!
なのに、死んだ者を救済しろってのかよ!。」
家は焼け、ゴロゴロと転がって死んでいる人間。
こうなる前に・・・、
「こう・・・なる前に・・・。」
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