vol 171:龍神






いつも曇り空で今にも嵐が来そうなこの国。

崖ばかりの下は荒れた海。

ここが龍神の国。

蛇と龍は見た目は似ているも、

龍神は厳格があり、他の神々とあまり交流はない。

いろいろな蛇がいるように、

龍神にもいろいろな龍が存在する。





「我は蛇の国の蛇神!
龍神よ、そなたに力を借りに来た!。」





崖の上から荒れた海に向かって叫ぶ。

曇り空は黒い雲が広がり雷が鳴り響くと、

海の中から大きな龍の顔が姿を見せる。

いくつもの白や黒っぽい龍達の顔が。





「蛇?。」

「蛇ガ我々ニ祈願シニ来タト言ウノカ。」

「蛇ノ神。」

「蛇・・・。」




次々に龍が言葉を放つ。

祈願だと?。

我が龍神に祈願しに来たと思っておるのか。

力を借りに来たのみ。

祈願などしに来たわけではない。





「龍神よ!今人間界では自然が荒れ、
多くの命が犠牲となっている!
水を自由に操る事が出来るのはそなたらの得意分野であろう。」

「クダラヌ。」

「クダラヌ・・・。」

「蛇ノ神ヨ。人間ハ自分デ地球ト言ウ、
星ヲ滅ボシテイル。
ソノ様ナ者ヲ何故、救ワネバナラヌ。」





ごもっともな意見だ。

我も大いにその意見には賛成する。





「そなたらの言う通り、
人間と言うのは力を持ちながら、うまくその力を使う事も出来ず、
欲に支配されている。」

「ソウ・・・。」

「ソウ・・・。」

「全テノ自然ニ苦シメラレヨウガ、
自業自得故ニ手出シスル意味ハナイ。」





自業自得。

我もそう思う。

だが・・・。





「その中には、そなたらを信じている人間もいる。」

我のこの言葉に龍神は黙り込んだ。

「心から信じ、信仰し、崇め、
そなたらに助けを求めている人間もいる。
聞こえぬか?
その声が。
そして、そなたらはそんな人間の住む土地を守っているではないか。
どれ程、緑を奪われ、聖地を荒らされようとも、
人間の住む土地を守って来たではないか。」

「グヌヌヌヌヌヌ・・・。」

「龍神よ!そなたらが可愛がってきた人間を、
ここで見捨てる気か!
龍神とはそのような神であったか!。」

「グハァアアアアアアアア!!!。」

目を見開いて1匹の龍が大きな口を開け、
鋭い牙を剥き出しにして我の目の前に来た。

我は微動だにせぬ。

この我が祈願などをしに来たというこの者らに。

「ヤメナサイ。」

落ち着いた声。

ふと我の足元の崖を見ると、

真っ白な1匹の龍が崖に体を巻きつけて我を今にも食うのかと、
いう龍の首に鼻を触れさせた。
威嚇して来た龍は再び海の中に下がっていく。

白い龍は鋭い爪で崖をあがり、
我の後ろに登ると姿を変える。

白い衣を着た髪の白い女へと。

「蛇ノ神ヨ。我ハコノ国ヲ治メテイル者。
主ハ、我ラニ何ヲシロト言ウ。
人ハ昔ヨリ変ワラヌ。
信仰スラ薄レタ。
今ヤ、闇ノ者ニヘノ信仰マデシテイルデハナイカ。」

「龍の主よ。闇の者の巧みさは良く知っておるではないか。
人間の弱さも重々知っておるではないか。
その弱さに浸けこんで、神になりすまし、
我らへの信仰を妨げているのは闇の者。
人は弱き生き物で、だからこそ、我ら神が救ってやる。
その為に我らも存在するのではないか?
我らを神にしたのも遥か昔の人間。
我らはただの龍とただの蛇だったはず。
我らをここまで強い力を持たせてくれたキッカケは人ではないか。」

龍の主は黙って我の話しに耳を傾けている。

「我々ニ何ヲシロト?。」

「水害を止めていただきたい。」

「ワカリマシタ。参リマショウ。」

そう言うと、龍の主は海の龍に視線を送り、
再び真っ白な龍となって空に向かって体をくねらせた。

人間界の洪水の被害の場所に向かう。

家の屋根まで水はたまり、

人々は屋根の上にしがみつき、

流れる水に浮かび死んでいる人間。

まさしく地獄絵図。

我は龍神の神業を拝見しようと見晴らしの良い山の麓より、

眺めていた。

たくさんの龍が空を舞い、

水が押し寄せる逆側から龍が両手を突き出して、

勢い良く押し寄せると、水は逆流し海へと戻っていく。

大きな津波を引き寄せている海では、

いくつもの龍が円を描くように舞い、

海に激しい渦をつくりだす。

その渦にのまれるかのように津波の波が渦の一部と変わって、

町に押し寄せる水がどんどん海へと引いていった。






「見ろ!水が!水が引いていく!。」

「海に渦が!。」





水が引いた為、人は屋根に立ち、

水の引く海を見る。

それは世にも不思議な現象でしかなく、。






「これは・・・。」

「ありがたやぁ~・・・神様の救いじゃ。」

「ありがたや。」

「ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」






皆が海に向かって手を合わせている。

龍の主が我の元に来た。

「コレデ良イノカ?。」

「うむ。助かった。礼を言う。」

我は龍の主に軽く頭を下げた。

「オヌシ・・・蛇ノ国デモ人間ガ好キデハナカッタハズ。
我ラヤ誰ニモ頭ナド下ゲヌ白蛇。
何故・・・。」

あの世とは狭いものなのか・・・。

我の素性もバレている。

龍の主の言葉に我はクスっと笑い、

「解らぬ。我にも解らぬ。
ただ・・・そんな人間の為、全ての神や生き物、
地球の為に、位の高い自由に過ごせる愚かな女神が、
必死になって動いている。
ただ、ガムシャラにやっているように見えるが、
我すらも見透かされている。
その者の力になりたいと思ったのだ。
その者の仲間というのは本当にまた愚かで・・・。」





我は龍の主と役目が終わったにも関わらず、
話しをしていた。

我の昔。

我の修業。

そして今の我の想い。

こんなに他の者と話したのは初めてで、

楽しいという気持ちを初めて知ったのだ。














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