vol 165:薬師の国







「ねぇ・・もう帰りたいんだけど。」

僕は・・・この国にどうして居るんだろう?。

カンに誘われて・・・なぜついて来た?。

黄泉の国は人間の国以外なにものでもない。

その人間の言葉に僕は悩まされた。

「何ここ・・・何もないじゃない。」

辺りは見渡す限り水。

丸い円の上に僕とカンは立ってる。

「サタン、ついてきて。」

カンは水の中に飛び込んだ。

僕は呆気にとられているも、ついて来いと言われ、

飛び込もうと水の中を見る。

そこには様々な魚がいて、

サメやイルカの姿も。

「・・・。」

なかなか来ない僕にカンが水から顔を出した。

「・・・怖いんやろ・・・。」

ニヤっと笑うカンに僕は、

「べ、別に怖いわけじゃない・・・。」

大きなサメ。

怖いのか?僕は。

「あははは!こわくて当たり前やってぇ~。
ほら、人間になってる期間が増えたら増えるだけ、
人間の感覚になってしまうんや。」

人間の感覚?。

「気付かんうちに、人の恐怖心も持ち備えたって意味。」

まさか・・・僕が人間の?。

カンはそう言って再び潜ると、

サメに近付きサメの腹に抱きついて笑ってる。

「・・・。」

僕も水の中に飛び込んだ。

驚く程透き通った水。

サメに抱きついたまま、僕に近付いて来る。

僕よりも遥かに大きなサメの顔に僕は少し後ろに下がった。

やっぱり、怖いのか?。

「小心者のサタンにはー・・・イルカやな。」

カンがそう言うと、どこからともなくイルカが泳いでくる。

「カン、どうしてサメとイルカが共にいる?。」

人間の国ではないのか?。

ここは天界か?。

「生きてる時と違って、ここは弱肉強食の世界やないやん。
それにコイツらも言葉がわかる。」

「言葉?人間の言葉がわかると言うのかい?。」

「サタン・・・人間のって・・・。」

そう、僕はすっかり人間の感覚。

死の世界に言葉などいらない。

全て感情の世界。

草木も虫も全てお互いの感情を理解出来る。

僕の体にイルカが顔を擦りつけてくる。

「僕の感情を読めるのに。」

なぜ怯えない。

「お前はただ、愛情を求めて悲しみの心でしかないんやもん。
さっきの阿弥陀の国の人間よりも、
ここにおる動物のがお前のその感情に対して疑うことない。」

僕はイルカの目を見つめる。

僕の心を君は理解してくれてるのかい?。

「キュー。」

イルカは鳴き声をあげた。

僕はイルカの頭に触れてゆっくり撫でる。

「サタン!遊ぼ!。」

カンはサメの腹に抱きついたまま水の中をサメが泳ぐ。

僕がイルカの背びれに掴まるとイルカも泳ぎ始める。

楽しい。

この感じ、まだ天界で居た頃に感じた以来。

天界で神の為に地上に花を植えた。

僕の小さな力で小さな雨を降らし、

花になるまで待ち遠しくて。








「咲いた!花が咲いた!。」








嬉しかった。

小さなピンク色の花が咲いた。

嬉しくて、僕は深い愛情をその花に与えてた。








「神様!見せたいものがあります!。」

急がしい神の手を小さな手で掴んで、

その場所へと連れて行く。

神はとても喜んで僕の頭を大きな手で撫でてくれた。

それから僕は1本の花から花畑をつくった。

とても綺麗ないろいろな色の花。

神に見せたくて神を呼ぶも、

自分の創った2体の人間しか頭にない神は、

僕の言葉など耳に届かない。

それに見かねた神使い達が見に来ては、

褒めてくれたけど、

嬉しくもなかった。

ずっと神が見に来てくれるのを待ったけど、

人間に夢中で、

人間を可愛がり・・・。

僕は花畑を壊してしまった。










「サタン・・・。」

気付くとイルカはいなくなり、

水の上に浮いていた。

カンが僕の手を強く握って隣で浮いてる。

読まれたか。












結局僕は、いまだ神に愛されたいまま。

















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