vol 164:闇と阿弥陀の国






「弟子の無礼をお詫びしますサタン。」

阿弥陀は弟子が去った後、

すんげー悲しそうな顔してサタンに頭を下げた。

「ですが、あの者達は私を心配しての心遣い。」

やわく微笑んで椅子を引いては俺達は座る。

そんな阿弥陀の礼儀にサタンはただただ言われるがままに。

反抗する態度も見せへん。

「せやけど、なんで俺がサタン連れて来るん知ってたん?。」

何気ない疑問をぶつけた。

「これもまたカン、そなたが行うひとつの事。
そして我々黄泉の国の想い。」

「えー!それが答え?
・・・どういう意味かわからん。」

俺が理解に苦しんでると、

向かいに座ったサタンが湯飲みを持ちながら静かに呟く。

「君は黄泉の国の者に時期を計らいながら、
連れて来るようにさせられてたって事だよ。」

「さ、させられてた?
ほんなら、操られてたって事か?。」

阿弥陀も座ると俺達の意見にクスクス笑い、

「そうですね。それに近いかもしれません。
ですが、カンがその気持ちにならなければ、
強制に道を決める事はしません。
カンの想いと我々の想いが重なったからこそ、
我々が望んだ道がカンの道に繋がった。
それだけの事です。」

俺とサタンは視線を合わせて、
とりあえず茶を飲んだ。

サタンも俺も解るようで解らんかったんかもしれん。

「サタンよ、世の中はどうですか?。」

「・・・僕にそれを聞く理由は?。」

「理由など。ただ貴方はどう感じているのか興味がある。」

「面白いんじゃない?
神々への信仰も儚いものになってるし。
心から信じている者はひとつまみだろうねぇ。」

サタンがニッコリと笑んだ。

「ひとつまみ・・・良き事。」

俺は阿弥陀の言葉に目を見開き、

「良き事って、全然良くないやん!
こんだけの人間がおって、ひとつまみやで!。」

阿弥陀は俺に視線を向け、

「カン、たくさんいればそれは勿論素晴らしい事。
ですが、全くいない、あるいは一人しかいない、
それに比べれば、ひとつまみもいるのです。
良き事ではないですか。」

微笑みを向ける阿弥陀に俺はキョトンとした。

なんぼポジティブやねん。

呆れて不貞腐れるも、ふとサタンに目を向けたら、

サタンは目を丸くして阿弥陀を見てる。

「君は・・・おかしな発想をするんだね。」

サタンが阿弥陀に言うた。

「そうでしょうか?
どの様な出来事にも幸いと言う言葉は小さくても存在します。
嘆いていても何も始まりません。
それよりも、小さな幸いを喜び嘆く事を忘れないようにしながら、
小さな幸いをどこまで大きく出来るか。」

サタンは湯飲みをテーブルに置くと、

頬杖ついて、

「へぇー・・・人間の神は面白い。」

「面白いて・・・。
ただの超ポジティブなだけやんけ。」

ジュルジュルと音をたてて飲む俺に、

阿弥陀は笑う。

「アハハハ。超ポジティブですか。
初めて言われました。」

「考えてごらんよ、カン。
天界の神にこんな考えの持ち主がいたかい?。」

サタンの問いかけに思い出そうとする。

・・・

・・・

「ん~・・・ん~・・・。」

唸る俺にサタンは、

「いないよカン。あれをしてはいけない、
これをしてはいけない、しかも、。」

「命令的!。」

阿弥陀は俺とサタンの会話を楽しそうに聞いてた。

「なんなんだろう。
この世界、それは君の心の中。
僕もここに居る住人も君の心の中にいる。」

「心の・・・なか?。」

「さすがですね、サタン。
それぞれの国はそれぞれのその国の神の心の中。
私の中にいるのです。」

「阿弥陀の中に俺いま居るんか!。」

「天界は一人の神の心の中でしかないんだよねぇ。
なぜそうしない?。」

サタンから阿弥陀への質問は続く。

阿弥陀はそれを詰まる事なく答えた。

「我々はそれぞれの神であり、
黄泉の国に居る全ての者の存在を一人の者と認め、
受け入れます。
国の神は自分で自分の国が欲しいなど思った事もありません。
中にはそういう神も存在しますが。
始めはこの国も私だけの国でした。
そこに来たいという願いを持った者が現れ、
その数が増え、今のような国が出来るのです。」

「へー。」

初めて聞く話しに俺は聞き入ってた。

「それが上に立つ者の言葉かい?。」

「私は上に立った覚えはありません。
自分の居たい場所に居て、
自分を求める者がいれば、
その者に自分が思う事を教える。
それだけです。
後は聞いた者の判断。
上や下など関係のない世界。」

「へー。」

ボケーっとしながら話し聞いてたら、

サタンが顔をしかめて声を荒げた。

「だったらどうして、さっきの者たちは、
君を上に見ている?!。
君は崇められ、この国を治めている者だからじゃないか!。」

興奮するサタンに阿弥陀は何も変わらん。

声も態度も表情も。

「自分が思う事を教える。
後は聞いた者の判断。」

さっき言うた言葉をもう一回言うた。

それでもサタンは理解してない。

「だーかーらやなぁ。
阿弥陀が望んでなってるわけちゃうって事やろ?
弟子がただ、自分を弟子や思てて、
でも、阿弥陀は弟子じゃなくて自分と同じ位置で・・・。
勝手にみんな崇めてるだけで・・・。
そんでここは阿弥陀の心で・・・。
そこに来たいって奴らが崇めてて?
治めるもなにも、ここは阿弥陀の心の中?。」

自分の言った意見に、それが合ってるんかわからんくて、

不安になったから阿弥陀を見つめた。

阿弥陀は小さく頷いたから俺は、

「ほら~!当たってるやん!。」

「君には欲は存在しないって事かい?
そんな事は有り得ない。
神であろうが、欲は存在する。
しかも、君は神ではなく人間じゃないか。」

サタンはまだ納得いかん様子。

素直に聞けば解るはずやのに・・・。

「サタンよ、私にも欲は存在します。
ですが、その欲を有意義に使う事なのです。
人の上に立って、何を得られると言うのです?
最後に何が残ると言うのです。
生きた世界には分別ある者が治めなければ、
皆が迷いの中、争いなどが生まれてしまう。
だから治める者が必要な状況。
しかし、死してそれが必要でしょうか。
命が尽きた時点で、そこは平等な世界となるのです。
自分の心の世界となるのです。
でも、始めは一人。
それが不安で寂しさも伴う。
だから自分の行きたい国に行く。」

サタンはまだ反発する。

「だったら、この世界にも地獄が存在する。
それは君たちが創った世界。」

「いいえ。サタン。
それもまた、その者の世界。
心と言う物は単純なのです。
悪しき行いをすれば、心もまた罪悪感も持ち合わせている。
自分は極楽には行けないという、。」

「違うねぇ。
悪しき事を悪いと思ってない者は五万といる。」

「その者たちを誘うのが貴方でしょう。」

「それは僕の世界の事。
今は黄泉の国の地獄の話しをしてる。」

「人を殺めれば、その殺められた人の怨み、
悪しき事に巻きこんだ者達の怒りも存在します。
一人の想いよりも二人、三人の想いの方が力が勝ってしまう。」

「・・・。」

サタンが黙りこんだ。

俺はジュルジュルと茶を啜っては二人を交互に見つめる。

「天界は政治の世界。
しかし、その国がなければ、
生き物の世界は崩れさってしまう。
我々も天界の神より教わった事ばかり。
そこに自らの判断で性格が生まれるのです。
主のおかげで我々は死しても命をいただきました。
なので、我々は死した命の居場所を広めた。
迷う者たちが迷わず、永遠のまたの命を神が望んだように、
平和で愛を持って過ごせるように。」

俺はウンウンと頭を上下に振って、

阿弥陀の考えに大賛成した。

サタンは葛藤してるように見える。

このままここにおっても、

モンモンモン、イライライラなだけやろうから、

俺は次に連れて行きたい国に行くことにした。







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