vol 156:人間を知る







なんなんだ・・・重く苦しい。

「はっ・・はぁ、はぁ・・・。」

じっとしていられない程の寒さ。

体が痛い。

うっすら目を開けるも、

視界がモヤモヤする。

我の体に何が起こっている?。

「はぁ・・・はぁ・・・。」

じっとしていられない感覚に体を起こす。

つま先から来る寒気に立ちあがったものの立っていられない。

壁をつたって歩き向かうは兄様の元へ。

「ゴホッ!ゴホッ。」

咳きこんで喉が酷く痛む。

「はぁ・・・はぁ・・。」

なんとか兄様の部屋に辿り着き、
部屋の中へ入った。

カンと寝ている兄様に床に座り込んで体を力なく揺する。

「はぁ・・はぁ・・・。」

「・・・シロ?。」

先に起きたのはカンだった。

「どないしたん。」

体の具合や喉の痛み、寒気で堪らなくなり、
我は初めて涙を浮かべた。

「おい、シロ!。」

我の様子にカンはベッドから出て我の体に触れる。

「大樹!おい!大樹、起きろや!。」

「んぅ・・・カン、どうしたの?。」

「シロが熱や!。」

「えぇ?!。」

兄様も飛び起きてカンは我を抱き上げた。

「はぁ・・ゴホっ!ゴホ!。」

痛い・・・咳をする度に痛みが走る。

カンが我を抱いて我の部屋に行き寝かせ、

「咳しとるし、風邪やな。
シロ、喉痛いか?。」

やけに優しい声と表情のカンに我は涙が溢れた。

安堵感で泣いているというのに、
泣くとは胸が締め付けられるものなのだな。

「シロ、じっとして・・・。」

額に冷たさを感じる。

我は寒気が堪らなく体を捩って唸り声をあげた。

「大樹、体温計は?。」

「ん。ここ。」

体温計とやらを脇に挟まれ音がすると外された。

「39度だよ。子ども用の風邪薬なんて家にないし・・・。
救急で病院調べてくるよ。」

「ちょい待って。
美輪の水の神に頼むから大樹、水1杯くんできて。」

「わかった。」

兄様が出て行くと同時に弥勒が部屋に入ってきた。

「どうした?こんな時間に。」

「シロが風邪ひいたみたいなんや。」

「風邪?。」

「39度。」

「それはまた・・・。」

弥勒は我に近付き笑みを見せ、

「シロ、人間の病、辛いだろ。」

我にそう告げた弥勒の尻をカンが叩く。

「なにを言うとんねん・・・アホか。
弥勒、着替え出してくれ。」

「アハハ。いや、普段あんまりに人間バカにするからな。
つい。悪い。」

そう。我は人間をバカにしていた。

その人間になったと思えば、童子の姿。

人間とは美味なる物を食し、

寝る時間は心地良く、

テレビと言う面白い物もあり、

食も睡眠もテレビも知らぬ神で生まれた我にとっては、

なんと恵まれた生き物だと思っていたのだ。

美輪には良く、

病の者が治癒を願いに来る。

我はそれを冷やかな目で見ていた。

多少の苦しみくらい我慢出来ぬのかと。






この様な苦しみ、

我慢など出来ぬ。

我慢?。

どう我慢しろと言うのだ。






苦しみに涙が止まらぬ。

泣くと胸までも苦しくなる。

「うぅ・・・ヒック・・・うぅぅ。」

泣き声をあげてしまう自分に、
自分がこれ程まで弱い者だったのかと。

手渡された水を喉の痛みを我慢しながら飲み、
そのまま眠ってしまった。






(子よ・・・我が子よ。)

母様?。

大神の声がする。

頬を撫でる手。

「母様・・・。」

我はあの世でも童子に戻ったような感覚になった。

人形になった母様に抱かれている。

(白蛇神。苦しかろうに。
ですが、これも人間を知る上でお前にとっては、
大事な試練。
人は障害だらけの中で必死に生きているのです。
お前もそれを感じなさい。
そして、どれ程、自分が今まで幸せだったかを、
感じるのです。)





自分が幸せだった・・・。






「シロ。シロ起きて。」

兄様の声で目を覚ますと朝で。

「まだ38度だから病院行こうか。」

「兄様・・・仕事・・・。」

「今日はカン一人で行ったよ。」

ニッコリ優しく微笑む兄様に起こされる。
体は少し楽だ。

「大樹、用意出来たぞ?。」

「あぁ、うん。」

兄様に抱かれて弥勒が運転する。

病院とやらに着き、
順番を待たされ、
診察され、

「な!何をする!。」

「シロくん、大丈夫よぉ~。
少しチクってするだけだからねぇ。」

寝かされたと思えば体を押さえつけられ、
我の手の甲に針を刺そうとする女。

「離せ!はなせ~!。」

「シロ!暴れるなよ!大丈夫だから。
点滴するだけだから!。」

兄様も我を押さえつける。

「て、点滴って何?!。」

知らない言葉と針を皮膚に刺そうとする女。

「ちょ、弥勒!笑ってないで押さえてよ!。」

弥勒は口を押さえて顔を伏せ体を震わせて笑っている。

「チクっとだからねぇ。
こわくないこわくない。いきますよぉ~。」

「・・・ぎゃぁあああああ!。」






我は病院と女が嫌いになった。















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