vol 154:サタン






(白狐様・・・。)

(白狐様・・・。)

着物の狐までもが地面に座って頭を下げてる。

「白狐様・・・。」

そんでもって俺も・・・。

「ちょっと、カン!。」

大樹が土下座する俺の腕掴み引き上げた。

「なにやってるの!。」

「だ、だって、最高神やろ?!。」

「今更・・・。」

弥勒は呆れて呟く。

(我が子達よ、何故この様な事をした。)

白狐が狐達に問うと、
あちこちでヒソヒソと狐達が話しをする。

(人は人、我らは我らではないか。
人と我らが交わって生まれた子は、
生涯、苦しみの中で生きていかねばならない。
人間の世界は、この先も人間の世界。)

着物の狐が顔を上げて、白狐に言葉を吐きだした。

(しかし!しかし、私は聞きました!
人の世は終りを迎えると。
だから、人の知恵を奪う良き時期だと。)

聞いた?。

「聞いたって、誰に聞いてん。」

俺も話しに参加する。

(天界の神の子。神の使い。)

「神使い?。」

(・・・カン。)

小角が低い声で俺の名を呼んだ。
すると、灯蝋の明かりが1個づつ消えていく。

「空気が変わった。」

大樹が呟くと、
弥勒は本堂の社の上に目を向ける。

白狐は体を大きく変えて四つん這いに立ち、
9個の尻尾の毛を逆立たせ鋭い歯を見せた。

なんで・・・お前が。

「サタン・・・。」

俺の胸が締め付けられる。

(クフフ・・・まさか白狐が登場とはねぇ。
やっぱり、うまく行かないか。)

ニッコリと笑み社の上からフワリと飛び降りる。

(我の子ども達にお前は何をした!。)

白狐の気が怒りに変わり、
狐達は怯えて左右の隅に逃げて行く。

(僕は何も。ただ、教えてあげただけだよ。)

ニッコリと笑む表情はけして崩さない。

(悪の子め・・・。)

白狐が今にも飛びかかりそうや。
小角が白狐に近付くと、
白狐の体に触れ、

(落ち着くのだ狐神よ。
主の子らは、まだ何もしてはおらぬではないか。)

(ググググ・・・。)

唸り声を出す白狐。
俺はゆっくり歩み白狐の前に立って、
白狐に振りかえり頭を深く下げた。

「カン?。」

大樹が不思議そうに俺を見る。

「すまん・・・白狐。」

(カンよ、何故そなたが我に頭を下げる。)

俺は頭を上げられへん。

「天界の揉め事は・・・俺の国の揉め事。
サタンがこないなことするんも、
俺の父のせい。
せやから、俺の責任でもあるんや。」

悲しい。

(頭を上げよカン!そなたは何ひとつ関係ない!。)

「ごめん・・・なさい。」

弥勒は眉尻下げ俺に微笑えむ。
大樹は、とても辛そうな顔をしてる。
白狐は逆立った尻尾を下げて顔を上げない俺に、
自分の顔を擦りつけた。

(あっはっはは!。)

サタンが高らかに笑う。

(カン、君は何をやってるんだい?
いつになったら僕と同じ土俵に立つの。
こんなくだらない事に構ってる場合じゃないよ。)

「何?。」

サタンの言葉に俺の怒りが増す。
サタンに振り返り睨むと、

「ハハハ、サタン。お前こそ暇なのか?。」

「弥勒。」

(やぁ、弥勒菩薩。すっかり人間臭くて気付かなかった。)

弥勒は前に出るわけでもなく、
後ろで腕を組んで笑みを浮かべてる。

「それはどうも。最高の褒め言葉だ。」

(褒め言葉?。)

弥勒の言葉にサタンが顔をしかめた。

「人間の性質を知る為に人となり生を受けた。
すっかり、人間になれてる証拠だ。」

(フフフ、そうだねぇ。)

「で?お前は羨ましいんだろ。」

(何?。)

「神に愛してもらいたいお前は、
今この状態が羨ましくて仕方がない。
天の子、神の子のこの者達への愛情。
そして・・・お前はその愛が欲しくて、。」

(うるさい・・・黄泉の国の神ごときが口を挟むな。)

「ハハ、そうだな。
黄泉の国ごときの神に心情をまさぐられては屈辱だろうな。
サタン。」

なんやろ・・・サタンが乱れてる。
冷静沈着なサタンが弥勒に乱れてる。

(まぁ・・・いいよ。
狐さん達、見てごらんよ。
この人の世に、神がこれだけ居る。
それは何故か。
人の世も終りを迎えてるから。
僕は嘘はついちゃいないよ?
損をしないように、そんなただ白く、
図体を自由に変えられる白狐の下で、
ヘコヘコしてるのもいつまでしてるつもりだい?
いい加減、自由を手に入れるべきだよ。)

再び、ニッコリと笑みを浮かべるサタンに、
俺は悲しみでいっぱいになる。

「サタン、もう同じ土俵には立ってる。
ただ、お前は相変わらずずるいやん。
俺は一からやってるんや。
せやから、もうちょっとくらい待ってや。」

サタンは有利な人の子の魂を奪って、
簡単にのし上がってる。

「聖戦・・・受けてたつんやからなぁ。」

俺はサタンに笑んだ。
全ての強気な感情を露わにさせて。

俺の言葉に、
白狐は体をくっつけて俺の横に、
大樹は逆側に立ち、
小角は白狐の横に、
弥勒も大樹の横に立った。

皆でサタンを見つめる。

(・・・フフフ・・・あははははは!
今度の聖戦は昔と違って楽しみだよ。
早く、その時が来ないかな・・・。)

サタンは暗闇に姿を消した。

聖戦の言葉に狐たちは動揺してる。

「なぁ、白狐。
お前も知ってる通り、時期は近づいてる。
たくさんの共に戦ってくれる仲間が必要なんや。
誰の言葉でもなく、
自分を最も信じれる奴が必要なんや。」

(カン、共に戦おうではないか。
我もその様な誇り高き者を見付けだす。
そなたが大好きだ。
カン。)

白狐は俺の顔を舐めながら顔を擦りつける。

「小角も、弥勒も大樹も、
この先も俺と共に歩んで欲しい。」

みんな小さく頷いてくれた。

狐たちの事は白狐に任せて、
小角は黄泉の国に戻っていった。

狙われてた彼女への説明は弥勒に託し、
俺と大樹は仕事の時間まで二人で眠る。









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