|
vol 127:童子の誤解
この様な事をするのは理に反している。
童子のように死んでいる人間など数多い。
それを、この童子の怨みを晴らしてやろうというのか?
そもそも、この童子は犯人に怨みをもっておらぬ。
まだ理解が出来ていないのだ。
ここまでする必要があるのか。
我は童子の記憶に集中する。
少女が連れ込まれた部屋に移動し、
窓から外を見、景色を見つめた。
そして、床に落ちていた男宛ての封筒。
そこには男の名前と住所が書かれてある。
それを記憶すると、
再び戻り名前と住所を皆に告げる。
「その場所なら、ここから30分程だね。」
「おし、大樹、蛇達呼びだしてくれ。」
「うん。」
兄様はカンの言葉に、
両手を合わせて目を閉じた。
「来たれし・・・我が蛇達よ。」
部屋中に兄様の気がたちこめる。
童子は蛇神の独特な気に我の足に抱きついた。
兄様の体から無数の蛇達が現れる。
「ごめんね、みんな。
忙しいのに呼びだしたりして。」
「こんだけもいらんぞ、大樹。」
蛇の数に怖いと我に登ろうとする童子に、
我は胸が痛んだ。
「何故恐れる。蛇がお前に何をした。」
悲痛な顔をして童子に言う我に、
弥勒は、
「まぁまぁ。知らない故の感情だ。
そして、蛇にも害を与える者もいる。」
「おし!お前らに頼みたいことがあるんや。」
カンは蛇達に指示を出した。
男にとり憑き行動を監視しろと。
良からぬ動きに出る前に我々に教えろという指示だ。
蛇達は消え、童子も安心した。
「ななちゃん、怖かった?。」
兄様が童子に笑みを向ける。
童子はコクコクと頷いた。
何が怖い。
我らの姿か?
醜いというのか。
我らは人間の為に動いているというのに。
「なな、ええかぁ?
蛇はな?ウネウネしてて、なんや怖いやろ。」
カン
(うん・・・。)
「噛まれたら毒持ってる奴もおる。」
(死んじゃうんだよ?。)
「せやな。そんな毒持ってるのもおるな。
せやけど、それはあいつらの武器で、
悪い奴をやっつける為に必要なだけなんや。」
(悪いの、やっつける?。)
「せや。野生っちゅーのは毎日が生きるか死ぬかの場所でな、
自分の身を守る為にみんな必死で生きとるんよ。
犬や猫みたいに家で飼われてるような奴等は、
こんな心配ないから可愛いやろ?。」
童子は満面の笑みを見せ、
(なな、犬好き!。)
「シロ、元の体に戻れ。」
「なっ!。」
「えぇから。」
我は本来の姿に今戻るのが嫌だった。
何故だ?
誇りある白蛇の姿に何故抵抗を今示す。
解らぬ事ばかりだ。
我が白蛇になると童子は目を見開いた。
我から離れ、脅えた目で我を見つめる。
「綺麗やろー!。」
「?!。」
カンが我を掴み腕に巻きつかせては、
我の頭を撫でる。
「なな、見てみ?
白やのに少しピンクも見える。
ヌルヌルしてそうやのに、
ザラザラしてるんや。
鋭い目は真っ赤で、喉や腹は柔らかい。」
「んんっ!。」
「ほら、牙はこんなに尖ってる。
かっこえぇなぁ~。」
侮辱しているのか?コイツ。
(ななも・・・ななも触ってもいい?。)
何を・・・。
我が怖いのであろう。
何故触りたがる?
「えぇよ?こいつは、ななとずっと一緒におった、
白蛇神や。
ななの事が大好きな。」
「か、カン!。」
我がこの童子を好きなどと、いつ言った。
童子の小さな手が我に触れる。
(わー。)
1度触れると、何度も何度も体を撫でて、
(ななも抱っこしたい。)
「おっしゃ。」
カンは我を童子に抱かせた。
(わ~、わ~。)
童子は我の喉や体を撫で、
「大樹、お前も。」
「うん。」
兄様はソファーに横になると、
体から抜けて灰色の大蛇に姿を変える。
大きな大きな大蛇に、ななは、
(すごーい!おっきー!。)
脅える事がなくなり、
兄様の姿には興奮している。
「ななちゃん、乗ってもいいよ?。」
(ホント?!。)
我を肩に乗せて兄様の体に躊躇なく触れ、
必死に登ろうとする。
登れない童子を兄様は尻尾で童子の体をくるみ、
持ち上げて首に乗せてやる。
(わー!。)
「さすが、天の子。
お前ならではだな。」
弥勒とカンの会話に耳を傾けた。
「あー?俺、別になんもしてへんやん。」
カンは不思議そうな顔で弥勒を見る。
「あんなに怖がっていたのに、
シロよりも数倍でかい蛇に恐怖もない。」
そうなのだ。
我を怖がっていたはずなのに、
大蛇なら普通は、。
「誤解は解けるんよ。
ななの蛇に対する誤解が解けただけや。」
誤解は、解ける。
127 
|