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vol 124:童子
「奈々ちゃん!奈々ちゃんっ!
あぁぁぁぁぁぁっっ!!!。」
(ママ・・・なな、ここにいるよ?。)
「今回の死人はどういう人間だ。」
なんとか一人阿弥陀の国に連れて行くことができた。
だが、毎日数秒に一人死人がでる。
休む間も無く、
また、我も休みたいとは思わない。
「白蛇神様、今回は童子でございます。」
「童子?。」
我の苦手な分野。
だが、童子は純粋な者。
大人の人間より安易に行くかもしれん。
霊安室とやらに素っ気ないベッドに寝かされた、
小さな亡骸。
警察という身分の者が数名いる中、
母親が名を呼んでは泣き叫んでいる。
そして母親の背中におぶさっているのが、
我の連れて行く童子。
「奈々は!奈々はどうやって殺されたんですか!。」
「お母さん、まだ捜査中でして・・・。」
殺されたのか。
「おい。お前は死んだのだ。
母親から離れろ。」
我の声に童子は我を見つめる。
(でも、ママ泣いてるから・・・。)
キョトンとした顔をしては泣く母親を心配し、
背中におぶさっているのだ。
「お前には行くべき所がある。」
童子は我に問う。
(おじさんも、ななをいじめるの?。)
我はその言葉に絶句した。
いじめる?
この童子には何があったんだろう。
しかし、我の仕事はこの童子をあの世に連れて行く事。
何があったか知っても、どうも出来ん。
「我は阿弥陀如来の国の案内人。
お前を無事、阿弥陀の国に届ける者。
いじめに来たのではない。」
幼い童子は首を傾げ、
(あみだ?。)
「・・・阿弥陀如来だ。知らぬのか?。」
童子はコクコクと頭を振る。
「・・・神様の国だ。」
(かみさま。)
意味は通じたものの、一気に童子の不安が我に伝わりだす。
「奈々~奈々~。」
男が亡骸の顔に白い布をかぶせた。
母親は支えられながら連れて行かれる。
(ママっ。)
「待て!行ってもお前の声も聞えぬ。
お前の姿も見えぬのだ。」
(・・・死んじゃったから?。)
「そうだ。」
(もう、ママには会えないの?。)
童子は俯いて問う。
「いつでも戻って来れる。
お前の戻りたい時にだ。」
童子は小さく頷いて我に小さな手を差し出す。
「わっ!。」
兄様が足を踏み外し山の斜面から滑り落ちた。
「兄様っ!。」
我は慌てて駆け寄ると兄様は泣いている。
「兄様、だいじょうぶか?。」
立ち上がっては眉尻下げて兄様は我に手を差し出した。
「・・・?。」
我は解らなかった。
ただ兄様の顔を不思議に見つめただけで。
「白蛇神、こういう時は手を繋ぐと蛇達に聞いた。」
「手を繋ぐ?なぜ?。」
「人間は手を繋ぎ助けあうんだ。」
幼きあの光景が頭を過る。
この童子も我に手を繋いで欲しいのか。
我は童子の手を取り上へと上がろうとするが、
童子の魂は、何故か岩の様に重い。
何故だ。
上へあがらん。
「・・・どういう事だ。
お前、この世に何か残しているのか?。」
感情の世界故に、
心の奥深くに強い何かがあると、
それは魂にも影響を及ぼす。
この童子は、まだあの世に行くには早いというのか。
この状況をどうすれば良いのか、
我には見当もつかぬ。
「阿弥陀如来よ!どうすれば良いのだ!。」
あの世に向かって問うも返事がない。
あの世にも行けず、
この童子を置いて我だけが阿弥陀の国に行き、
対応を聞くか。
我が手を離すと、童子は直ぐに手を掴み、
大きく頭を左右に振る。
行くなというのか。
何度も上へ上げる事を試みたが、
やはり状況はかわらぬ。
童子の家に行くも、傷ついて気のふれた母親がいる。
この姿を童子に見せておくわけにもいかん。
「おう。シロ・・・なんや、その子。」
兄様の家に連れて行くしか思いつかなかった。
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