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vol 122:1人目
「母さん、お金大丈夫なの?。」
「そうね、なんとかだけど・・・、
お父さんが死んでも、母さん働かなきゃいけないわね。」
(みつこ・・・。)
「でも、もう自由じゃん!
父さんの面倒も見なくていいしさー。
無駄に文句言われる事もないぜ?。」
母親と息子の通夜の会話。
この男は思うであろう。
そんな事を言うもんじゃない、父さんは病気だったのよと妻は言うと。
「そうね。はぁー、母さんもやっと自由になれるわ。」
男は先程までの興奮もなくなり、
ただ見えない体で立ち尽くす。
(あんた・・・わしをここから連れ出してくれ。)
やっと行く気になったか。
我は男の腕を掴み、男をあの世の入り口に連れて行く。
(わしは、厄介者だったのか・・・。)
我らの世界は感情の世界。
相手が我に意識をすれば、相手の感情が我に流れ込む。
男は孤独感と家族が自分を嫌っていたんだと。
人間のつまらぬ詮索と感情。
素直に開放してやったと何故思えぬのか。
我は阿弥陀の国に歩き出すも男は立ち止ったまま、
今の気持ちに支配されている。
「お前、何故そのように悩むのだ。
どう思われようと、お前は人間には戻れぬ。」
(わかってる!
だけど、わしはこんなにまで家族に・・・。)
くだらん。
実にくだらん。
「来い。」
男の腕を掴み引いて歩く。
阿弥陀の国ではなく、イザナキノミコトの国。
「貴方は蛇の国のお方。」
「うむ。時の神に会いに来た。」
(ここが阿弥陀様の国か。)
黄金にも似た麦が一面に広がる国。
「ここは、お前達日本の神々の国だ。
阿弥陀の国ではない。」
男は理解出来てはいない顔をしている。
門番に許可を貰い、向かうは時の神の場所。
「時量師神(ときはかしのかみ)。」
「これはこれは、蛇の国の御子息よ。」
「突然で申し訳ない。」
人間のくだらない事の為に我は神に頭を下げる。
一体何をやっておるのだ・・・。
「如何なされた。」
「この男の生前、命尽きた時を見せて欲しい。」
時量師神は男を目を細めてジッと見る。
男は脅えているようだ。
「いいでしょう。」
時量師神は奥から壺を持ってくると男の前に置き、
「この中の水に指を1本浸けなさい。」
男は何故か我の顔を情けない顔で見る。
我に大丈夫かと聞いているように。
我は小さく頷いてやる。
男はゆっくり水に指を浸けた。
水面は揺らぎ大きく渦を巻き出す。
そして映し出された光景。
(お父さん!お父さんっ!ふ、ぅぅ。)
(オヤジぃ~。)
(先生!もう一度、もう一度蘇生してやってください!。)
(もう御主人は・・・。)
泣き叫ぶ妻と、悔しそうに泣く息子。
生きて欲しいと願い、
死を心から悲しんでいる。
これを、見ないと感じられない。
くだらん。
男はボロボロと泣きだす。
「時量師神、すまぬ。実を礼に送る故。」
「ホッホ。気になさらずに白蛇神よ。
しかし・・・そなたが人間をみておるとは実に不思議。」
好きでみているわけではない。
男を連れて阿弥陀の国に向かって歩く。
(でな、孝之の奴、電車が好きでなぁ。
休みの日はよく駅に連れていってなぁ~。)
その間、男は昔の思い出を我に話す。
(みつこはわしが、これ美味いって言うと、
そればっかり買ってきて・・・あっはっは!
3日も食ったら飽きちまうってーのなぁ~。)
煩い。
「おい、。」
(なんだ?。)
「少し黙って歩け。」
(あっはっは!こらわししゃべり過ぎか!。)
「・・・はは、そうだ。
先程のしょぼくれたお前はどこに行った。」
我は今・・・笑ったか?
(いやぁ~、家族っていいなぁ~。
そらぁ、みつこには病気になってから、
ずーっと介護してもらってたし。
今からじゃ、あいつもいい歳だけど自由に暮らしてもらわななぁ。)
「家族はいいものだ。
その生きている家族を今度はお前が見守り、
助けてやる番だ。」
何故、こんなにも人間と普通に会話をしている?
(あんたも家族いんのか?。)
「・・・母と兄が。」
(ほー!神様にも家族がいるのか。
わしは兄貴と仲が悪かったが、あんたは仲いいのか?。)
「勿論だ。」
(お!そうかそうか。)
男の笑顔に我もつられてしまう。
阿弥陀の国の門の前に、阿弥陀如来がいる。
「阿弥陀・・・。」
「よくいらした、皆がそなたを待ちかねていますよ?。」
「たかしー!。」
(お、オヤジ!おふくろ!。)
先祖も男を阿弥陀如来と門で待っていた。
男は笑顔で駆け寄り、
懐かしい家族と再会する。
阿弥陀如来は我の元に歩み寄り、
「シロ、良く頑張りましたね。
これで1人目達成です。」
(神様ー!また会えるよなぁ?。)
誰に叫んでいるのだ。
「ほら、答えてあげなさい。」
え?。
「そなたに聞いているのですよ?。」
「わ、我に・・・我にまた会いたいというのか?。」
(勿論だ!。)
我は咄嗟に叫んだ。
初めて・・・。
「あ、会える!お前が呼べば我は会いに行く!。」
「さぁ、白蛇神よ。
まだ9人残っていますよ!
行きなさい。次のお前を求める者の所へ。」
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