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vol 121:案内人
魂の案内人。
それは死んだ者にあの世の説明をし、
その者をあの世に導く仕事。
生きた人間が生前に宗教に入っていれば、
その国の者が迎えに行く。
無宗教の場合、
葬儀のやり方で、その国の経を唱えられれば、
その国の者が迎えに行く。
我は阿弥陀如来の指示で案内人を10人任された。
阿弥陀如来の国に行く者の案内人。
人間が亡くなる少し前に我に知らせが来る。
「白蛇神。この者です。宜しくお願いします。」
阿弥陀如来の使いに依頼を受ける。
これで3人目。
だが、あの世に向かったのはまだ誰ひとりとしておらぬ。
何故。
(わしは死んだのか・・・。)
肉体から離れ、病室で亡骸の自分を見ながら、
家族が泣くのを見て、
(おい、みつこ?みつこ?。)
自分の妻に何度も話しかけている。
「お前はもう生きてはおらぬ。」
我の声に男は我を見、
(い、嫌だ!わしはまだ死ねん!。)
人間はいざ命が尽きてしまうと、
まだ生きたいという欲望にかられ始める。
「お前は生前、熱心な浄土真宗。
我は阿弥陀如来の使いの者。
お前を阿弥陀の国に連れて行こう。」
「お父さん、気をしっかり持って?。」
「みつこ、わしは大丈夫だ。
なーに、死んだら阿弥陀様の極楽でゆーっくり過ごすさぁ。」
(い、嫌だ!みつこぉ!みつこぉ!
わしはここだ!あぁ!あぁ!。)
男は混乱し、自分の肉体になんとか戻ろうとする。
この人間で4人目だが、4人とも同じだった。
阿弥陀如来の国の案内人の教えでは、
強制はしない。
あの世の説明をして相手が拒むなら、
相手が理解するまでその者に付き添う。
その者が行く気になるまで。
「おや。シロ。」
このあだ名もカンのせいであの世にまで定着している。
「阿弥陀如来!。」
「4人目も放棄すると言いに来たのですか?。」
阿弥陀如来は我の言いたい事を笑顔で問う。
「説明をしても聞きませぬ!
その様な人間にずっと付き添うなど、!。」
阿弥陀如来は我に言う。
「白蛇神よ。お前はこれで4人を見捨てた。」
「な!我はけして見捨てたわけではっ、。」
「ではなんでしょう?
言うことを聞かないと言っては私に担当を変えろと、
お前は言うではありませんか。」
我は早く人間にならなければならぬから・・・。
「白蛇神よ。このままではお前は一生10人を、
この国へ連れては来れないでしょう。」
「そ、そんな事はっ、。」
「何を急いでいるのです。
時間の流れなどこの世界と人間の世界と異なるもの。」
「それは承知して、。」
「ならば、今自分のやるべき事に全てを向けるがよい。
あの人間はお前を必要としているのです。」
(みつこぉ~・・・わしはここだぁ~。)
この執着を持った人間が我を必要と?。
そうは見えぬ。
死んだ事実ではなく生きてると無理に思い込み、
生きている者に話しかけては、
通じない事へ解った疑問を持ち、
嘆き悲しみ怒りをみせる。
(なんで聞えないんだよぉ~。わしはここにおるのに。)
「・・・死んでる者の声は届かぬ。」
我の言葉に目を見開いては我の前で我を睨みつける。
(お前にはわしが見えて話しもしているじゃないか!。)
ここでまた現実をこの男は目にする。
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