ゾンビの夢

　『ゾンビ』はどんな夢を見るのでしょうか？『ゾンビは眠らないから夢を見ない』と言ってしまえば、簡単に片付く話です。『ゾンビ』は一度死んだ人間が蘇り動き出した『生き物』？（果たして『生き物』と言ってよいのかどうかは分かりません。）或いは、運動可能な死体と呼ぶべきかも…。ホラー映画などでは、硬直した身体で、ぎこちなく歩き回り、何故か『生きている人間』を追いかけます（或いは襲う）。『生きている人間』と『ゾンビ』を区別出来ているのですね。

　色々調べてみると、生ける死体・自発的意思のない人間・社会的に葬られた人々・等と表現されています。一応題目としては、『自発的意思のない人間』・『社会的に葬られた人々』と表現されている事柄について考察する事が適切だと思います。もし『ゾンビ』が『自発的意思のない人間』又は『社会的に葬られた人々』で有るとするならば、ゾンビとは、不幸な人間ととらえる事が出来るかもしれません。

　最初は、『自発的意思のない人間』という分類の中には、奴隷とか、他の何かに支配されている人間を指しているのでしょう。やはりそこには個人としての存在（意思）がないと考えます。ちなみに、『幽霊（ゴースト）』は、’『心（意思）』があるけれど、存在する体がない状態なので、ゾンビとはかなり違iいます。或る意味で、『幽霊（ゴースト）』の方が、自由な意志を持っていると言えます。（「うらめしや　～」と言えるだけでも『ゾンビ』とはかり違いますね。）

　もう一つゾンビにとって不幸と言える事は、『蘇り』が、自分の意志ではなく、第三者によって支配されているという事です。この第三者が『善意』によって『蘇り』を行っているのであれば何も問題はないのですが、『ゾンビ』に殺されても『ゾンビ』と成って蘇る訳ですから、『ゾンビ』の存在自体自体が、『善意』の結果で有るとは言い難いですし、『善意』であるとひけらかして第三者が人の生死に関与すること自体が欺瞞的（欺瞞的ややもすると偽善的という言葉が当てはまるかも知れませんね。）ではないでしょうか。また『ゾンビ』は一度死んでいて、自己意識もない存在なので、『物』と言えるかもしれません、しかし、ロボットのように、いちいち細かな命令を出さなくとも、行動できますし、『死体』が『物』であるとする事には、倫理的にも、問題が有ります。

　『ゾンビ』はなぜ人を襲うのか？。第三者に支配されて襲っているとすれば、『第三者の悪意』でしか有りませんね。個人的に思う事ですが、『ゾンビ』は自発的意思が無いので、或る支配系から逸脱すると、彷徨い歩くしかできません。そこで、自発的意思を持つ人間に『救いを求めた結果』が、『襲う』という行動に成ってしまうのかもしれませんね。

　『社会的に葬られた人々』について少し考えてみます。この場合、『葬られた理由が何で有れ、自分を葬った社会への恨み辛み』を持っている人達も含まれると思います。『ゾンビ』は『恨み辛み』持っているかどうかは、分かりませんが、もしゾンビが『恨み辛み』持っているとするならば、生きている人間との区別は、難しいですね。やはり『ゾンビ』とは、それ以上に、気力の失せた存在だと思います。近年の社会では、そうした人達が増えているように思えます。

　『ゾンビ』だから、『夢』を見ないのか、『夢』を描けないから『ゾンビ』なのか、はたまた、『夢を見ない（持て無い）人間』は『ゾンビ』と同じなのか…？もう少し考察してみましょう、『ゾンビ』が普通の人間と同じように行動し、ゴミの収集の日には、きちんとゴミを出し、品行方正に行動し、普通の人間のように生活を送っていた場合、たとえその方が『ゾンビ』で有っても、なんの問題も無い筈です、『ただマニュアル通りに行動する人間』と同じと思いますが如何でしょう…？。『ゾンビ』は、ホラー映画等で、よく登場し、ちょっとした、ユーモラスな面も持ち合わせた存在です。ちょっとセンチメンタルな解釈に成りましたが、提起した問題の判断は、『ゾンビの夢』を読んで下さった皆様に委ねたいと思います。