藍上雄のガラクタ箱

縄跳びの縄(前)

 最近の子供たちが、縄跳びをして遊んでいる光景は見かけなくなりましたが、ダブルダッチ成る競技があるそうです。長縄跳びの一種のようにも見えますが、飛び方に技があり見ていて面白いものだと思いました。さて回転する縄跳びの縄について考察してみる事にします。ちょっと線積分を用いるケースが出てくるので、数学が嫌いな方にはつまらない問題かもしれません。数学的理論に基づいての考察なので、実験した場合の結果とは、異なるかもしれません。一応ご了承願います。実際に起こる事象を、数学的に解析する場合の参考として頂けると幸いです。

 長縄跳びの両端をそれぞれに持った場合、回転させた場合とそうで無い場合(懸垂線)の曲線が考えられます。懸垂線から回転速度によって段々と張りのある曲線に代わってゆきます。

 まず、線積分についてです。ロープの長さをLとして、ロープの両端の間隔を2aとします。懸垂線を関数f(x)とします。座標軸においては、x=-aからx=aにおける関数f(x)を考えます。L=summat=0→t=L((dx/dt)^2+(df(x)/dt)^2)^(1/2) dt  : L=summax=-a→x=a((1+(df(x)/dx)^2)^(1/2)dx…@と成ります。(これはピタゴラスの定理の応用なので、特別に説明は必要ないと思います。)

最初はロープが垂れ下がった状態について考えてみます。ここでは懸垂線・カテナリー曲線(catenary)について書いてみる事にします。f(x)=(b/2){e^(x/b)+e^(-x/b)}で与えられる曲線です。

 f(x)=(b/2){e^(x/b )+e^(-x/b)} ここでz=x/b log e と置きます。f(x)=(b/2)(e^z+e^-z)  df(x)/dz=(b/2){e^z+e^-z} 次にz=z=x/b dz/dx=1/b となるので、

 f(x)'=df(x)/dz・dz/dx=(1/2){e^(x/b)-e^(-x/b)}となり、この式が懸垂線の接線の傾きと成ります。

 @の式よりL=summax=-a→x=a((1+((1/2){e^(x/b)-e^(-x/b)})^2)^(1/2) dx さらに L=summax=-a→x=a(1/2)(e^(x/b)+e(-x/b))dx と成る事から、L=(b/2)(e^(a/b)-e^(-a/b))-(b/2))(e^(-a/b)-e^(a/b))=b(e^(a/b)-e^(-a/b))という式を得る事が出来ます。

 a→0の時、L/b→0 Lは一定なのでbが十分大きく成る必要があります。(たるみ具合の調整に使えそうです。)また、a→L/2の時L/b→(e^(L/2b)-e^(-L/2b)) bが十分に小さい時e^(-L/2b)→0に近づくので、bはたるみ具合の調整に使えそうです。

 カテナリー曲線は、実際に場合に適合できる様に、いろいろな係数を導入して、利用されている関数なのですね。

 一応、カテナリー曲線とx軸で囲まれた面積についても求めておこうと思います。

 F(x)=summax=0→x=a(b/2){e^(x/b)+e^(-x/b)} dx=((b^2)/2){e^(a/b)-e^(-a/b)}と成ります。

 次にf(a)=(b/2){e^(a/b)+e^(-a/b)} から、ロープの固定位置から垂れ下がったロープで囲まれた部分の面積Dは、D=(ab/2){e^(a/b)+e^(-a/b)} -((b^2)/2){e^(a/b)-e^(-a/b)}と成ります。この結果の2倍が求める面積という事になります。a.>bである必要があるのかもしれません。とりあえず卓上に置ける結果を書いてみました。

 前篇は懸垂線について書きました。とりあえずこの結果を踏まえて、後編では、回転する縄跳びのロープについて書く予定です。 縄跳びの縄(後)へ


 参考:カテナリー曲線は、ガウディ氏などの建築家に良く使われている曲線です。