藍上雄のガラクタ箱

円と球(@)

 円は、完璧であり、とても美しい形をしています。古代から現代に至っても、尽きる事の無い題材です。シラクサのアルキメデスがローマの兵士に「私の円に触れるな!」と言ったところ、腹を立てた兵士がアルキメデスを殺害してしまう話は有名です。「アルキメデスの定理」について少し考察してみたいと思います。

 最初に、全ての円周上の点は、1本の直線上に円周の点の影として置くことが可能です。しかし、直線上の点は、全ての点を、円周上に置くことができません。(この事をふまえて)

 アルキメデスの定理 (rは球の半径 πは円周率)

   球の表面積は、その外接する円柱の筒部分の表面積に等しい。 球の表面積=4πr^2     です。

 重積分を使うと簡単に、答えを出すことが可能ですが、球面上の正方形を、円柱の軸から、外接する円柱の表面に射影された四角形の面積について考えてみようと思います。(この問題は、ピーター フランクル氏の著書でも紹介されております。) ここでは単位球(r=1の球)としてとして考えることにします。

 球面上の4点ABCDによって作られる4角形は、正方形とします。球の中心を点Oとし、∠AOB=α とします。点AB間の直線距離は2sin(α/2)であり、 大円上の点AB間の長さは α と成ります。

 2sin(α/2)/α は sin(α/2)/(α/2)と書くことができ、limα→0 sin(α/2)/(α/2) = 1 と成るので、正方形ABCDの面積は、α→0の時 α^2 と成ります。

 次に、円柱に射影された四角形ですが、点ABCDの円柱への射影を点A’B’C’D’とします。ここで、線分OBや線分OCと水平面のなす角度をβとします。A’B’間とC’D’間の長さは、sin(α+β)-sinβと成ります。また、A’D'間の長さは、α/cos(α+β)であり。 B’C’間の長さはα/cosβとなります。 したがって、円柱状の射影四角形の面積は、α/2{sin(α+β)-sinβ}{1/cos(α+β)+1/cosβ} となります。 この式をα^2で割ると、1/2{sin(α+β)-sinβ}/α{1/cos(α+β)+1/cosβ}となります。

 ここで、limα→0{sin(α+β)-sinβ}/α=cosβですから。 α→0では、1/2{sin(α+β)-sinβ}/α{1/cos(α+β)+1/cosβ}=1となります。

 綺麗に説明できるところが、数学の良さだと思います。紀元前の人が、これを考え出したのですから大変のものだと思います。(個人的には紙をちぎって球に張り付けて説明した方が、良いのではと思いますが、実際に紙を切って貼り付けると、この通りにはゆきません。) 結構アルキメデス氏も、そんなところが少なからず有るようです。数式は単純なほど美しい様ですが。ひらめきから数式を得るためには、こぼれた豆の数を数えるような作業を強いられる事も、有るかもしれません。労を惜しまないからこそ、美しい式が出来るのかも知れません。