藍上雄のガラクタ箱

円と球(B)

 円と球(A)で解説した、π(円周率)を求めるにあたり、用いたライプニッツ級数π/4=1-1/3+1/5-1/7+・・・・ですが、もう少し早く収斂するようなものはできないか、考えてみる事にします。

  π=4Σn=0〜n=∞(-1)^n{1/(2n+1)} @ これを簡単に変形して、π/4=1-Σn=1〜n=∞ 2/{(4n-1)(4n+1)}としても少し早く成ります。また、2Σn=2〜n=∞1/(n-1)(n+1)=3/2の式を合成して、

  π/4=1-3/(2・16)-2/15-2Σn=2〜n=∞{1/(16n^2-1)-1/16(n^2-1)}

  π=371/120+15/2Σn=2〜n=∞1/(16n^2-1)(n^2-1) =3.1415926・・・・    このように変形しても結構、速度が改善されます。(初期値と交項級数が正項級数に成る分少し改善されるのだと思います。)

 又、@の式に、Σn=1〜n=∞ 2/(4n-1)=1を合成して

  π+1=4+Σn=1〜n=∞ {8/(16n^2-1)-2/(4n^2-1)}

  π=3+Σn=1〜n=∞ 6/(16n^2-1)(4n^2-1)   とすることもできます。級数部の分母の大きくなる速さはこちらの方が少しだけ優れていると思います。(式もシンプルです。)

 次に、18世紀、ロンドン大学、ジョン・マーチン氏の方法。

 まず tanβ=1/5 と置く sinβ=1/(√26) cosβ=5/(√26) となります。tan(2β)=(2sinβcosβ)/{(cosβ)^2−(sinβ)^2}=5/12 更に tan(4β)=120/119 と成ります。

        tan(4β−π/4)={tan(4β)−1}/{1+tan(4β)}=1/239 です。これにより

      arctan(1/239)=(4β)-π/4 = 4arctan(1/5)-π/4 が得られます。

 この式を変形して 

     π/4=4arctan(1/5)−arctan(1/239) の式に グレゴリー級数 arctanα=Σn=0〜n=∞(-1)^n {α^(2n+1)}/(2n+1)を代入したもので円周率を求めます。この方法はなかなか劇的に速く成ります。


 ※三角関数の加法定理は、単に座標の点を原点と中心として回転させたものなので、デカルト座標を用いて考えると分かりやすくなります。 x=cosα y=sinα とすると

 sin(α+β)=ycosβ+xsinβ

 cos(α+β)=xcosβ−ysinβ  と表現できます。 マーチン氏の方法は、この定理をうまく利用しています。(さすが教授だけの事はあります。)

 このよううな問題は、実際に、C++などを使ってプログラムを作成してみると、とても興味深い面白さが有ります。(なんだか訳の分からないブラックボックスの多い現代でも、(他愛の無い「あがき」かもしれませんが。)少しでも理解できることを、実際に実行してみる事は、大切なことだと思います。