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vol 116:病気
「いってらっしゃい。」
急がしいカンを見送る。
駅まで送って行くって言ってるのに、
俺が熱を出したせいで、カンはタクシーで仕事に行った。
熱が出だしたのは昨日の夕方で、
病院に行くとインフルエンザ。
さすがに学校へは行けない。
カンも、移るから一緒にいちゃいけないって言ってるのに、
大丈夫やって、ずっと看病してくれてた。
「移して、お前が楽になれるんやったら、
気兼ねなく移せ。
病気の時ほど、人肌恋しいやろ?。」
そんな事を優しい顔で言ってくれた。
さすがにカンも仕事は休めないから、
唸る俺で寝てないのに・・・。
でも、素直にホント嬉しくて。
まだ熱のある頭はボーっとしていて、
体は怠い。
でも、高熱のせいか、気分はテンションが高い感じ。
熱って不思議で、
みんなも同じなのか解らないけど、
俺の場合、37、38度が一番辛いんだ。
節々が痛くて。
でも、39度になると体は熱いけど、
一気に痛みもなくてテンション上がるって言うか。
寝ようと布団に入ってみるも、
全く眠くなくて、
何気にノートパソコンを起動。
カンの小説を読み直したり、
「あ・・・次のテスト内容どうしようかな。」
思いだした3年の期末試験。
3年の期末の頃は、もう卒業後の道が決まってるから、
お遊びみたいなもので。
古文の教師だから、
その資料をネットで検索。
古文とは、漢字の書体の一種で、
遥か昔の人の文字。
前漢代、秦の焚書政策を免れて孔子旧宅の壁中や民間から発見された、
秦以前の儒家の経書のテキストに使われていた文字であり、
当時の経書に一般的に使用されていた書体で、
今文に対して古文という。
俺がなぜ、昔のこの文字を専門にしたかと言えば、
父親が古文を勉強していて、
家に本や資料が沢山あったから。
面白そうに読んでいる父親を見て、
何気に読んでいたら、
あのなんとも言えない書体が好きになった。
古文を語るのに、三国時代は重要で。
この時代も戦の時代。
「・・・戦・・・か、。」
そう思うと、人間は戦なしの時代はないと思った。
昔の戦は現代では戦争という響きに変わり、
行う事も大きく変化し、
人間の非道差も変化している。
戦争という文字で画像検索すると、
普通に戦争の出来事の写真が並びだす。
どれ程、酷い写真でも普通に見ることが出来る。
どの戦争の写真も酷いけど、
ベトナム戦争の写真は絶句する程。
本当なら、こんな写真はテレビでは絶対に公開出来ないか、
モザイクが入るようなものでも、
普通にUPされてるんだ。
戦争博物館とかの響きには抵抗はない。
でも、戦争記念館の響きには抵抗があって、
記念という言葉は日常では嬉しいような事にしか使わないから。
記念というのは、
あとの思い出として何かを残しておくもの、
あるいはそれによって残されたものという意味を持つ。
記念館に様々な写真が飾られて、
戦争とはこんな事ですよ?。
けして、やってはいけない。
そう伝えるメッセージだと思うんだけど、
どれだけのそれを見た人々は気付いているんだろう。
心に何が残っているんだろう。
熱のせいか、頭の中は解決のない疑問ばかりになって、
パソコンを終わらせて少し眠った。
家の電話が鳴り響き、
その音で目を覚ます。
「もしもし?。」
『大樹、携帯に電話してんけど出んからさぁ~。』
「あ、ごめっ、全然気付かなかった。」
『どない?死んでたりしてへんか?。』
「うん。だいぶ楽だよ。」
心配して電話をかけてきた、
俺の恋人。
『俺今日も遅くなるけど、
シロに頼んで薬師に来てもらうから。
もうちょっと辛抱しろな?。』
「えぇ!薬師如来が?
いや、いいよ、ほんと!
みんな忙しいのにっ。」
『アホか。とにかく、お粥作ってあるから、
ちゃんと食えよ?。じゃーな。』
少し、急いでた感じで話してたなぁ。
カンも痩せてきてて、体、辛いだろうに。
「よし!早く、治さないと!。」
病気で、カンに優しく気にかけてもらうのは、
正直、嬉しくて心地いい。
でも、それじゃ、カンを余計に疲れさせるだけで。
俺がみんなに伝えようと頑張ってるカンを、
優しく労わってやらなきゃ。
少ししてから、シロと薬師如来が家に来た。
熱を下げてもらって、
気力ももらって。
でも、インフルエンザのレッテルで、
学校は5日は休まないと。
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