これは以前勤めていた会社に入社した頃の話です。その会社は地方にあり、新入社員の多くは寮に入っていました。私もそうですが。。その頃に、先輩社員に聞いた話です。その寮には、いくつか奇怪な話が伝わっていました。その寮は4階建ての男子寮でした。暑くなるとドアを開けっぱなしにする寮生も結構います。結構風が通るのでエアコンをかけなくても、ドアを開けるだけで意外と涼しくなるのです。
A先輩も真夜中にドアを開けっぱなしで、テレビを見ていたそうです。ドアの方を見てみると何とドアの向こうの通路を白い服を着た若い女性が通りすぎて行ったそうです。その若い女性は通路の奥の方向へ歩いて行ったそうです。ちなみに通路の奥は行き止まりになっています。
恐怖でパニクっていたA先輩は、精いっぱいの勇気を振り絞って、ドアの方へ向かい、通路をみたそうです。そこには誰も居ませんでした。。。ひぇーー。
こちらは別のB先輩から聞いた話です。その女性幽霊が目撃されて、しばらくたった頃、今度は真夜中に赤子の鳴き声がどこからともなく響き渡るという噂がでたそうです。女性幽霊は、赤子を探していたのではないかとの事でした。
。。。よくある話ですが。。。私が書くからには、当然、答えがあるのです。偶々その答えを知る事が出来ただけですが。。。
まず女性幽霊の方です。十年以上経った頃(当然、その頃の新人だった人は皆寮を追い出されています)、とある飲み会でC先輩と話をした時のことです。この先輩、女性関係が乱れており、関係を持った人は100人を超えるだろうと噂されていました。その先輩は、「今だから話せるが」と前置きして、寮に女性を引っ張り込んだときの話を始めました。その先輩、ちなみに通路の奥側の部屋に住んでいました。 そう、幽霊の正体は、C先輩が連れ込んだ女性だったのです。消えたのは単にその先輩の部屋に入ったからでした。当時寮の規則が非常に厳しく、女性連れ込みは当然、ご法度でした。退寮は当然としても、他にペナルティを食う可能性がありました。そのため、この話はずっと出来なかったそうな。
もう一つの赤子の鳴き声も偶然でした。こちらは確か雑談で知った記憶があります。どの先輩だったかも思い出せない(D先輩かE先輩かF先輩の一人と思うが)昔です。寮の屋上の扉の鍵が良く開けっ放しになっており、危ないので閉めに行った時の事です。屋上で鳴き声がしていたそうです。みると1匹の猫でした。さかりがついた時に出す鳴き声だったそうな。そして、その先輩に気づくと、さっと脇をぬけて、屋内の方へ逃げていったそうです。赤子の正体は、猫の鳴き声だったのです。本当に暗闇で猫が甘え声で鳴くと、赤子の声にそっくりですよね。。
余談ですが。。。ちなみに、寮時代に、真夜中、とある先輩の部屋の外側のガラスにゆっくりノックをした後、手を張り付けるいたずらをしたのは、私です。。部屋の中からヒィーという悲鳴が聞こえました。あれは謝った気がするけど。。すみません(^^!
その思い出深い寮は、今では、別の地元の大手メーカーの社員寮となっています。 私自信は、前の会社の本社に居たのは入社して3年までくらいでした。その後は、ほとんどの期間を親会社の設計に従事し離れた地域にいました。再び前の会社へ呼び戻されたのが10数年後でした。前の会社の本社10数年ぶりに戻ったのですが、寮だけではなく、本社ビルも別のビルに、町の景色もすっかりかわっており、私の記憶と全く異なるものでした。懐かしさを感じないくらい見事に風景が変わっていました(^^!。
ところで、今現在のお客さんは、前の会社の親会社とは異なる別の大手電機メーカの事務所に詰めています。なんと前の会社や親会社の昔の仲間が多数いました。。その中には懐かしい顔もありました。この業界は狭いなぁ。。とつくづく思いました。8月前半まで超忙しかったので、ゆっくり話す機会もありませんが、ようやくゆっくりした夏休みに入れます。世の中、縁は大事ですよ。若い時の出会いは意外に後々効いてきます。
(2016/8/12 記)
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