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  • 盆の怪談シーズンです。怪談、第二夜です。私が体験した話です。

    プロジェクトが終わるとしばらくは穏やかな日が続きます。そういう時は夜釣りに行っていました。狙いはシーバスです。

    チャリで行ける場所に釣り場がありました。光が射さない闇に身を潜め、シーバスを待ちます。夜中の2時過ぎになると、真っ暗になります。その中で全神経をロッドとリールとルアーに集中させるのです。そして明け方に帰宅して一眠りしたら会社へという生活です。いやぁ結局、プロジェクトが暇になっても忙しさは変わらなかったですねぇ(^^!。

    そんなある晩、事件は起きました。

    その日は月も出ておらず、釣り人は私だけした。闇が全てを包み、足元も全く見えない状況です。海をのぞき込んでも真っ暗です。さすがに心細さを感じます。実際には3〜5mくらいの深さですが、夜の海は底なしに見えます。そんな時になると、シーバスのちっこいのが周ってきます。チャンスです。

    そんな時、「おぎゃー」という声が聞こえました。えっ!?何だ?赤ちゃんの声だよな。空耳か?
    再び「おぎゃー」という声が聞こえました。今度ははっきり聞こえました。すぐそばで確かに赤子が泣いています。静かな感じのか細い声で泣いています。声の主は、ちょっと弱ってきている様な感じです。周りをライトで照らしても何も居ません。

    海を覗きこみましたが、真っ暗です。その瞬間も赤子の泣き声が聞こえ続けています。なんかこの海の底から聞こえてくるような気すらしてきます。ひぇ〜〜。

    確かに音がしており、これは物理現象である事は間違いない。しかし音源が見当たらない。
    さすがの技術者の私も恐怖に囚われました。
    こんな時のために、我が家に代々伝わる魔除けの秘術があります。

    それは大きな屁をこく事です。迷わず屁をこく決心がつきました。

    「おぎゃー、おぎゃー(続く泣き声)」「ぶっ!(特大の屁の音)」「ニャ〜ッ!!」。屁をこいた私は正気に戻りました。ニャー!?声がした方にライトを向けたら、居ました。猫が。。そこには、背丈30cmほどの草が生えてました。その陰に子猫が居たのです。私の足元から50cmくらいです。最初にライトを照らしても見つからなかったのは草の陰にすっぽり隠れていたからでした。

    そう、赤子の泣き声の正体は子猫でした。釣れた魚を猫に与える釣り人がいます。猫もそれを知っていて釣り人の側に寄って来るのです。そして餌をくれーという意味のおねだりの甘い鳴き声を出すのです。

    猫と分かると、猫の声なんですが、一度恐怖にとらわれると、赤子の声に聞こえてしまいます。結局、幽霊の正体は、人の心の恐怖心や心細さや思い込みなのです。

    我が家の魔除けの秘術は、実は心にとりついた恐怖心を取り去る方法だったのです。この方法を見つけた我が祖先は大したもんだと思います。そういえば、父方の祖父は呉の海軍工廠に居たとの事で、戦艦大和の設計に携わったとか。代々技術関連の仕事に携わってきたので、迷信と事実を切り分ける思考を持っていたのかもしれないですね。
    (2013/8/11 記)

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