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vol 112:それぞれの役目
大好きで愛しい恋人が遠く離れた異国から、
俺の居る日本に帰ってきた。
俺はどうしても出迎えたかったから、
仕事も休みを取って、空港に迎えに行って。
少し離れただけに感じた寂しさ、不安、心配、
俺も頑張らなきゃって気持で、
ますます愛しくなるのを感じた。
帰って来たカンは、
きっとまた強く勇ましいくらいになってるって思ってた。
でも、空港で泣くカン。
車の中でも家に着いても弱々しく感じる表情。
滅多に自分から求めてこないのに、
家に帰って来た時はまだ昼間。
風呂に入った後、時差のせいと疲労のせいで眠いのに、
俺に求めてくる。
土産話しもしないまま、
ただただ俺の名前を悲しく呼んで。
激しくカンを抱いた後、
気を失うかのように眠りに落ちた俺の恋人。
「よぉ。寝たのか?。」
リビングに行くと弥勒はまだ起きていた。
「うん。弥勒、コーヒー飲む?。」
「あぁ。」
2人分の熱いコーヒーを入れてリビングに運ぶ。
まだ出しているコタツに座り、一口飲んでから気になる事を聞く。
「・・・何があったの?。」
今のカンには聞けないと思ったんだ。
弥勒は煙草を吸いながらコーヒーを飲んで、
柔らかい笑みを溢し、
「現実を見たって感じだな。」
現実。
「人が目の前で亡くなったり?。」
内戦の国に行ったんだ、それしか思いつかない。
「それもあるし、仲良くしていた子供が殺された。」
「っ!!。」
俺は目を見開いた。
カンの性格、俺の性格。
両方が入り混じる。
「殺した犯人も解っていたのに、何も出来なくてなぁ。
そのまま帰国。」
カン。
「でも、アイツには必要な事だったんだ。
嫌でも見せられる事。
逃れられない。」
俺は見ていない。
「俺は・・・見なくてよかったのかな。」
一緒に体験しなくちゃいけないんじゃないのか。
弥勒は目を閉じて笑み、
「お前にはまだ無理だ。
カンも感情を抑えられないたちだが、
お前はもっとだからな。」
置いていかれているように感じる。
寂しさと、悔しさと、情けなさ。
「まっ、お前にはお前の今置かれている事があるはずだ。
そしてお前の役目。」
「役目?。」
「そう。お前が強く望んだこと。
アイツを守る事だろ?
そう言って反対を押し切って人間になったんだからな。」
俺は蛇の国のみんなの反対を押し切って、
カンを守る為に、一人にしない為にこの世に降りた。
「アフガニスタンでも機内でも一睡もしないでさぁ、
1回は泣いたが、あれは衝撃を受けたからだ。
空港でお前を見た時に泣いたのは、
素直な気持ちが爆発?
日本に帰って来たら、あの様だろ。
お前には素の自分しか見せられなくなってる。」
俺だけに見せる弱さ。
「俺には見せねーからな。
カンの中で、お前の存在はデカイぞ?。」
何気に言う弥勒の言葉は俺には大きくて、
嬉しさも責任感も存在する。
シロも加わってはアフガニスタンの話を聞き、
サタンの話しも聞き、
サタンがなんの為にイエスとして人々を救う側に今いるのかは、
大体想像がついた。
人間は地位や権力に魅力を感じるが、
本当に求めるものは救い。
地位や権力に魅力を感じる人間は平和な場所に住んでいる証拠。
日々、死と向き合っている者や、
苦しんでいる者は救いを心から求め、
また、とても弱い。
平和な場所が追いやられていっている現代で、
どんどん増えていっている救いを求める人間を、
サタンは狙っている。
自分を信じさせ、自分の為ならなんでもする。
自分を神の子だと思わせ、
そして最後には滅ぼし、
神とはこういう存在だと人間に思い知らせ、
また、神にも、弱く自分が救われたいだけを思う人間が、
救われなかった時に神への憎しみを抱く様を見せたいんだ。
そしてサタンは俺達、黄泉の国の神々にも、
天界の神は冷酷で残忍だと思わせたい。
だって、こんなにも犠牲になっているのに、
何も手を下していないから。
俺とカンの寝室に入って、ベッドに腰掛け、
眠るカンを見つめる。
頭に触れて柔らかい猫っ毛の髪を撫でても起きない。
「・・・天界の神は冷酷で残忍か。
こんなに傷ついて頑張ってるのに。」
サタン、君に是非会って言いたい。
カンも天界の神。
そして、俺達黄泉の国の神々は、
今や天界と共に見えない力でいつも人間を守っている。
全力でね。
ただ、追い付かない事と、見極めて動いている。
本当に神を信じ、救いを求めている者は、
自分の命より他人の命を尊く思い、
君たちと戦って死ねるなら本望だと思ってるよ。
そんな人間は来る時まで死なせないように、
神々は全力で守ってるんだ。
それぞれの人間に役目を与え。
そして、神々の子供たちが俺達のように人間として生まれている。
この事が解ったのは、今日の夜だった。
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