vol 110:神と悪と人間





月明かりのみで照らされる廊下。
ドアを開けるとシスターが立っていた。
シスターは俺の心の声が聞こえない。

『ラドゥン、いらっしゃい。』

シスターは俺の腕を掴んで廊下へと強く引っ張り、
部屋のドアを閉めては、
眉間に皺を寄せ月明かりで照らされたその顔は、
俺には恐怖にしか映らない。

『お前は鏡を見た事があるのか?
その顔、バケモノめ。
なぜまだ生きている・・・臭くて、
汚らわしい悪魔の子め。』

小さな声で俺を睨みながらボソボソと呟く。
怖い。
でも、シスターが言う言葉は俺も思う事。

どうして・・・まだ生きてるんだろう。

『私に恥をかかせたお前は死にあたいする。
お前は、お前は人間ではないバケモノ・・・。
殺さないと・・・ころさ、。』

俺は・・・人間。





「うわぁああああああああ!。」

「カン!。」

ラドゥンの今までの感情をもろに感じる。
俺は地面に両膝をつけて膝まづいた。
シスターはそのまま銃をラドゥンにつきつけて、
額を撃ち抜いた。

正面にしゃがみ込んで俺を心配気に見つめる弥勒、
俺はサタンを睨むように視線を上げる。
どうしても、悪魔なだけに疑ってしまうんや。

「お前・・・ほんまにシスターになんにもしてないんやろうなぁ。」

サタンは俺を無表情で見つめ返す。

「やっていないよ・・・なんにもねぇ。」

信じていいべきか、
疑い続けるべきか。

「まぁ、そう思われるのも慣れてる。」

ニッコリと笑むその笑顔は、
感情のない笑顔やった。

事情が解ったとしても、
この国での俺らは無力。
シスターが子供を虐待し、殺してる。
そんなことを内戦で今を生きるのに必死なこの国の警察は、
話しを聞いてくれるやろうか。
神父のジムになんて説明する?。
ラドゥンの思いを見たって言うんか?。
神を信じる神父は人間で、ただ、神を信じてるだけ。
子供達は虐待の現状を知っとるはずやけど、
一番シスターを恐れてるんは子供達や。
昨日来たばっかりの外人の俺らに心を開くはずがない。

チー・・・ジャンヌ。

サタンは言う。
ホンマか嘘か解らんことを。

「君たちが帰国した後、僕がシスターを解任する。
僕らは当分この施設にいるみたいだからねぇ。
実体を暴くなんて簡単な事。
1度やれば、すぐにまたやるさ。」

天の子、それが人間。
君が救いたくてしかたがない人間なんだ。

ニッコリ笑みながら言われた言葉には、
違うと思ってきた事を再び揺さぶられる。

部屋に戻っても眠れるはずがない。
弥勒も同じやった。

「カン・・・。」

「・・・。」

「俺は見極めが出来る仏だ。
他の闇の者は嘘、偽りの塊。
何度も言うがサタンはルシファー。
サタンと言われようと、彼は神使い。
嘘はついてはいない。」

「ほんなら、信じろ言うんか。」

「今回の事はな。
でも、何のためにサタンが今の行動をしているか、
それをちゃんと把握しておかねばならん。」

サタンの行動は人を救おうとしてる。
・・・なんでや。

「弥勒、なんでサタンは、。」

「それは自分で先を読め。
聞くのは簡単だ。
だが、見極めの力を持つ為には相手を読む事が最も必要だからな。」

サタンの考え。

人間の本性。

神は生き物を創造した。

その中で最も神に近くなったのが人間。

無垢だった人間は悪魔の声を聞き、

恥じらいを覚えた。

人間はこの時に、両方の声を聞き、

両方を信じた。

神だけを信じてたはずが。

人間の中に善と悪が生まれ、

あの世にも、神と悪が生まれた。

神にも理由があり、

悪にも理由があり、

人間にも理由があり、

この其々の理由を知ろうとする神も悪も人間も1か2に等しい。









『・・・?。』

『ジャンヌ・・・一緒に寝ていいか?。』

『・・・。』

『・・・ラドゥンはちゃんと天国に行けたかな。』

『・・・。』

『・・・オレも天国に早く行きたい。』

『っ・・・。』











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