vol 107:悲しき大きな誤解



「はぁ~!風呂に入りた~い!。」

「カン、さっきから煩いぞお前。
1日くらい入らなくても、どうもならないだろう?。」

「アホか!デリケートな俺とお前を一緒にすんな!。」

夕飯も食ったのか食ってないのかわからんまんま夜になって、
また弥勒と二人部屋の中。
この施設に風呂なんかない。
そないな事解ってるんやけど、何かしゃべってたいんや。
黙ってたら気が狂いそうで。

「なぁ、弥勒。」

「風呂はねーぞ。」

「わかっとるわ!。」

「だったらなんだ?。」

「俺達がこの国に来た時にも、既に人が何人か死んだやろ?。」

「あぁ。」

「あちこちで何時間か、何分かに人が死んでるのに、
1回も霊を見とらん。」

俺の話しにベッドに座って本を読んでいた弥勒が顔を上げた。

「それって、戦争で死んだ人は保障されてるからか?。」

弥勒は再び顔を本に向け、

「さぁ。どうだろうな。
この国は殆どがイスラム教だろう?
あの世も沢山の場所に分かれてる。
イスラムの国もお前の国系列だろ?
俺より、お前の方が詳しくなくちゃいけないんじゃないか?。」

天界に住んでいた頃の俺は、
無知の塊で、ただただ好奇心大盛やった。
せやけど、その好奇心は自分の国ではなく、
他の黄泉の国に対して。
せやから、自分の国の事も知らん事が多い。

「弥勒、俺ちょっと行ってくるわ。」

仰向けに寝て胸の上で両手を組む。

「行くって・・・、おい!。」

弥勒の返事も聞かんまま、あの世の世界に。
天界の主の元に話しを聞きに行く。

「おや、カン。おかえり。」

主は笑顔で出迎えてくれた。

「ただいま。忙しい?。」

「いつも変わらずという感じです。
イスラムの事ですか?。」

俺を見守っててくれてるだけあって、
話しが早い。

「うん。イスラム教の国って近所?。」

「近所?ハハハ、ご近所さんです。
天界の中にあります。」

「うっそ!知らんかった。」

「貴女は天界よりも黄泉の国の方にばかり行ってましたから。
イスラムという国ではなく、アラーが管理している場所です。」

「アラー?。」

「えぇ。アラーは彼等の守護神ですよ。」

「守護神。」

イスラムの神様は、今のイスラムを見てどない思ってるんやろうか。
まぁ、えぇ様には思ってないやろうけど。
俺は主に場所を聞いてアラーに会いに行った。
アラーの周りの人々は顔は厳ついけど、
天の子や言うたら笑顔で迎え入れてくれた。

「天の子よ。良くいらした。」

アラーは想像以上に若い男や。
30代か?。
俺は床に座り、直ぐに聞きたい事をぶつける。

「イスラムの国の事・・・どない思う?。」

アラーは微笑んでは、

「歴史ある素晴らしい国です。」

やっぱり、この言葉では止まらんかった。

「ですが、今は・・・。」

アラーの笑みは消え眉が下がり悲しい表情に変わる。

「聖戦に良い事など一つもないのです。
聖戦も戦い。
人間は誤解している。」

「どう誤解してるん?。」

「命を奪う行いに良いものなど一つもないと言う事です。
神の為に戦っているなど・・・。
神はそのような事を望まれた事はない。
一番の聖地で沢山の罪のない人間が命を奪われています。」

「けど、それがイスラムの教えやろう?。」

アラーは小さく首を左右に振った。
アラーは詳しく俺に話をしてくれた。
結局、神の言葉に従順やった人間が、
徐々に自分の欲も入り、
自分達の良いように教えを広めた。

「人の命を奪う為に、自分の命を投げ出した者が、
この世に来た時に、どの様な事が待っているか解るでしょう。
神々の教えは皆同じ。
ですが、もう誰も気付いてはくれぬ。」

「アッラーフ・・・。」

目元を押さえて辛そうに話すイスラムの神。
俺だけに告げられた想い。
しかも、悲しい事にアラーと側近の神以外は、
死しても未だ聖戦の意志が消えてへんらしい。
難しく、悲しい問題。

その後は、とにかくアラーを元気付けようと楽しい話題を話して、
アラーの笑顔を見た。
少し、ホッとして、

「カン!起きろ!。」

弥勒の声に呼び戻された。

「ん~・・・やっと笑ったのになんやねん。」

顔を顰めて目を覚ました俺の腕を掴んで体を起こされ、

「ラドゥンが死んだ。」








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