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vol 105:霊から見える人間へ
大好きな人は今、内戦の続く異国にいる。
俺は弟と何も変わらない時間を過ごし、1日が明けた。
時差のせいで夜中にカンと電話してたから、
眠りが浅い。
でも、声が聴けた。
「シロ、ずっとテレビ見てたの?。」
スーツに着替えてからリビングに行くと、
テレビの前でシロが座ってテレビを見てる。
霊は寝る感覚がなくて羨ましい。
(映画というものを見ていると、
人間が大事な事を学んで伝えているのに、
これを見て解らんとは愚か。)
キッチンに行って、熱いコーヒーを作る。
シロの言う事は良く、カンや弥勒が言う同じ言葉。
「でも、それをどう見てるかだと思うよ?
一般的に、ただの空想の物語で、
映像としか見ていない人が多いんじゃない?。」
カップを片手にリビングに行き、コタツに入る。
「好きな俳優が出てるから、その理由だけで見てたり、
好きな監督が作ってるからとか。
カンや弥勒やお前みたいに、
映画とかで何かを掴もうなんて人は少ないよ。」
俺は眉尻下げて笑みながらシロと会話をする。
シロが居てくれるから、寂しさは半減。
(霊を上手く伝えている映画だと思ったが、
これは人間が作りだしたわけではないな。)
「え?。」
シロが顔を横に向けた。
俺はシロの目線を追うと、そこには白人の男がいる。
アメリカ人のような顔で、若い男の霊だ。
(お前が人間に作らせたのだろう。)
シロが男に言う。
男はゆっくり頷いた。
(何故だ?。)
「なぜってシロ、。」
そんなの伝えたいからに決まってるじゃないか。
自分達の存在を伝えたいからだろ。
今更あえて霊に聞く事か?と思いながらシロを見ていると、
霊が口を開いた。
(私は、伝えたい。)
ほら。
昔は見えるだけで、声を聞けなかった。
でも、いろいろと接してるうちに、声が段々聞きとれるようになったんだ。
コーヒーを啜る。
甘めに作ったつもりだったのに、苦いし不味い。
カンが出してくれるコーヒーはすごく美味しいのに。
(お前の存在をか。)
(存在はもう知っている人は多いんです。
後は信じるか信じないかだけの問題で。
私が伝えたいのは、
私達が見える人への希望。)
「希望?。」
いろいろな霊と遭遇したけど、
こういう言い方をした霊は初めてだ。
(私達が見え、私達の声が聞こえるなら、
どうか話しを聞いて欲しい。
そして、私達の声が聞こえる人は少ない。
私達が大事な人に大事な事を伝えようと話しかけても、
誰も気付いてくれない。
アクションさえ起こしたくても起こせない。)
ポルターガイスト現象。
伝える為に物を動かしたりする事は、
どんな霊にも出来る技じゃなく、
よっぽど強い力と想いがなければ出来ない。
想いが強くても、やり方を知らなければ出来ない。
(だが、霊もそれぞれであろう。
お前が伝えている我々が見ても納得出来る内容をもつ霊も、
少ない。
中には生きていた頃の物欲絡みも多い。
霊になろうとも人間は人間だ。)
シロはハッキリものを言う。
まだ直らないな、このズケズケな性格。
(でも、自分の家族に危険が迫っていたり、
自分が死んでしまった事で寂しさで苦しんでいる者もいるんです。)
(いないとは言ってない・・・。)
「っぶ!。」
つい吹き出してしまった。
だって、なんか今のシロの返事が可笑しかったから。
シロは吹き出した俺を顔を顰めて見つめた。
「ご、ごめんなさい。」
(私は霊の見える人達に伝えたい。
その為に耳元で囁いて書いてもらいました。)
霊の見える人達に・・・か。
「じゃ、作者も貴方の声が聞こえるんだね。」
俺は霊に微笑んで話しかけた。
霊は眉尻下げて笑みを返し、
(いいえ。解らずに書いてました。
自分で作りだした物だと思っています。)
物事は、そう上手くはいかないのが現実。
夢は、夢で終ってしまうケースが多いのも現実。
「そうか。残念だね。」
(それは構わない。
ただ、作者もこの物語をただの物語としてしか思っていない事。
一番関わっている者が、未だにその状態なんです。)
(それが人間だ。)
「シロ・・・。」
落ち込んだ悲しい気がリビングの空間に流れ込む。
「あのさ、。」
俺の声に二人が俺を見つめた。
「俺よりも、もっと貴方達、霊の気持ちを受け止める人間が、
今は出かけてるけど、ここに住んでるんだ。
彼は今は人間として生きてるけど、
元は、。」
(兄様!。)
「いいんだよ、シロ。
カンは話してもいいってきっと言う。」
カンや俺はあの世の住人。
霊から見れば、魂の光が普通の人間の魂の光と違うのは解る。
でも、なぜ違うのかまでははっきり解らない。
神にしか。
そして俺達は、自分達の素性を滅多に明かさなかった。
今は普通の人間だと思っているから。
「彼は天の子。貴方はカトリック?。」
(・・・はい。)
「そう。主の妹、神の娘が人間として、
この世に今、男で生きてるんだ。」
霊は目を見開いて口に手をあてては驚きを隠しきれない。
「主がされたように、生き物を救う為に自ら人間に生まれた。
でも、わざとあの世の記憶をなくして生まれた。
だから、ある時期までは普通の男の子。
彼は自然とあの世に興味を持ち勉強し、
霊を見えるようにと望み、
沢山の霊と関わって苦しみ、また喜んで、
高校生の頃に自分が天の子だと気付いた。
でも、男である自分が女だって事がショックでさ。」
昔を思い出すと、
懐かしくて、あの頃の俺もカンも無知すぎて、
感情のまま必死だった頃を可愛く思う。
「彼はもう今は20歳で、
天の子って言っても普通の人間とこの世界では変わらない。
生きている人間に自分は神の子だなんて言う気もなくて、
皆と同じ人間として、
神の存在、闇の存在、霊の存在、地球の存在、
生き物の素晴らしさ、今の世の中の事、
それを作家として伝えてる。
そして、それをしながら、困ってる霊の力にもなって、
天界や黄泉の国の調和、
そして・・・闇と闘ってるんだ。」
きっと、彼は熱心なカトリック信者だったんだろう。
両手で顔を塞いで泣いている。
「俺やここにいるシロは黄泉の国の者。
貴方達に嫌われている存在の蛇なんだ。
でもね、カンは・・・天の子は俺達を綺麗だって言う。
とても神秘的で、大蛇の神の事をとても優しい素晴らしい神だって。」
シロは俺をジッと見ては、
恐れ汚らわしいと言われていた俺達の存在を、
唯一初めて綺麗だと言ったカンの話しに眉尻下げ伏せ目がちに微笑んだ。
「俺達の一族も皆から嫌われる存在だと思ってた。
でも、天の子の言葉と態度で俺達も変わった。
そんな天の子がこの世で負けずに立ち向かって、
必死で頑張ってるんだ。
だから、貴方も伝える事を諦めないで欲しい。」
(・・・今、その方はどちらに?。)
「今は・・・内戦の地に、黄泉の国の神と、
大人の犠牲となった戦争孤児を救いに行ってる。」
天界の神と、黄泉の国の神が手を取り合って、
同じ目的の為に動いている。
こんな事は今までであの世でもなかった。
それぞれが認め合わなかった頃。
でも、今は神々は異国の神々を認め、
共に大きな力となり、
闇よりも手間のかかる人間の為に動いている。
「神は大きな役目の為に地味に頑張ってるから。
貴方の今やってる事も大きな役目のひとつなんだ。
だから、。」
霊は表情を険しくしては大きく頷いてくれた。
気持ちが伝わったんだ。
霊は、また会いに来ると言って姿を消した。
「ねぇ、シロ。
どんな映画見てたの?。」
テレビの番組表を見て確認したら、
「これ、映画じゃないじゃん。
海外ドラマ。」
(ドラマ?。)
「そう。途中で終らなかった?。」
(うむ。中途半端に終わった。)
ズバズバと考えをクールに言うシロの、
この無知差加減が堪らなく可愛いんだ。
「アハハ、シロ、また来週続き見ないとな。」
(・・・。)
「来週は一緒に見よう?。」
(・・・解った。)
カン、弥勒。
また一人、頑張ってる霊を見つけたよ。
メールで教えてあげよう。
今のカンや弥勒が知ったら、
きっと、心の癒しになるから。
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