vol 103:僕の世界




『イエス、私はシスターの所に行ってくる。』

『はい、わかりました。』

徐々に敬語を使いだす。
人間の大人は話し方一つにしろ印象を変える。
外見しか見ていないから。

『いいか?くれぐれも、出歩かないように。
母さんに電話してやるといい。心配してるからな。』

心配?。
全く家に居ないのにかい?。
家にでも電話を掛けてきた事あるの?。
殆ど父親から電話してるじゃない。

『えぇ、そうします。』

僕はニッコリと笑んで部屋を出て行った父親を見ては、
ベッドに腰掛けた。

さっきの出来事。

僕が欲を増幅させたのに、
あの小さな子と醜い子は僕の所に来なかった。
なぜ?。
ここじゃ、お菓子なんて貰えないだろ。
チョコレートって名前を知らないのは皆同じはず。
カンの日本語が解る?。
あんな小さな子に。

カンと出会って数時間の間に、
屈辱に感じた事が2回も。

ガラスのない窓に1匹のカラス。
僕の使者。

「お前に探って欲しい。
シスターの行動だ。」

一番闇を感じるのは、ここのシスターエリー。
40代か50代か。
命の危険と子供達の世話。
奉仕をしていても、美味い物を食べられるわけでもなく、
精神的に限界を迎えてる。
シスターエリーが子供達に何をやっているのか、
子供達の心の中に興味がある。

僕は部屋を出ずに探索を彼に任せて、
ベッドに横になり目を閉じた。

闇の僕の世界に戻ってみると、
えらく賑やかだ。
悲鳴しか聞こえやしない。
僕が行きたい場所を自然と頭に浮かべれば、
瞬時にその場所に移動出来る。
これはあの世では誰でも出来る。
ただ、頭で考えるんじゃなく当たり前の様に思う事。

僕が行った先は、本当のイエスの元。
てっきり部屋に居るものだと思っていたけど、
実際は祭壇のような物が造られ、
そこに置いた立派な金の椅子に座ってる。
祭壇の前では悪魔達が殺し合いをしてるじゃない。

「これは何のイベントだい?。」

ニッコリ笑んでイエスの隣で問いかけた。
彼はいきなり現れた僕に驚いたものの、
満面の笑みを見せ、

「サタン!戻ってたの?。」

「うん。今ね。
で?これは何?。」

「一番強い悪魔を僕の家来にするんだ。」

僕は殺し合っている悪魔達に目を細め、

「へぇ。で、ここにいる悪魔全てを殺させる気かい?。」

「え?。」

馬鹿な頭。

片手を前に出して手のひらを向け、
黒い光の玉を作って争う群衆に向けて放つ。
殺し合っている群衆のひと固まりが塵になる。
イエスは目を見開いた。
周りの悪魔達も悲鳴を止めて闇の世界が静かになる。

「ねぇ、イエス。
こういう事、勝手にするの・・・やめてくれない?。」

「サタン・・・?。」

「僕の大事な駒を君はいくつ無くした?
クズがどれだけ居ても邪魔にはならない。」

好き勝手はいい。
ただ、人間の君が闇の世界の従事者達を好きに操り、
この世界を変えようとしている事に僕は不機嫌になる。
ここは僕の世界だ。

イエスの手を掴んで祭壇から降り、
金の椅子ごと無くす。
これはイエスの創った物だから、その創造物を無くすのは簡単。
僕が創造し直すだけ。

「怒ってるの?サタン。」

「うん。少しね。
僕の計画を邪魔される程、腹の立つ事はないよ。」

「ご、ごめん・・・。」

イエスの僕に対しての恐怖心が体中に伝わってくる。
僕は目を閉じて、ゆっくり瞼を上げてイエスに顔を向けた。
そしていつもの穏やかな笑みを見せ、

「解ってくれたのなら構わないよ。」

単純な人の子は僕の笑みに安心し、

「どうして戻ってきたの?。」

「ちゃんと、仕事してるかなぁ~って見に来たけど、
出来てないね。指示をし直さなきゃ。」

もっと、早くに見に来るべきだった。
大きな誤算。

僕は闇の世界の悪魔達に再び指示をし直す。
イエスには闇の世界でのルールを教えた。







『イエス?イエス。』

肉体に戻り目を開けると父親が顔を覗き込んでいた。

『どこか具合でも悪いのか?。』

ベッドに横になる僕を見て、
体調が悪いのかと思っているみたい。
僕は眉尻下げ、

『ここに来て、沢山の人が死んでいくのを見て、
ここの子供達・・・胸が痛くて。』

『あぁ・・・イエス。』

父親は僕を抱きしめる。

『父さん、僕は無力なのでしょうか。』

『お前は無力などではない。
今から教会で祈りを捧げる。
一緒に来なさい。』

『はい。』











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