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vol 94:1年の終り
今日は12月30日。
今年も残り1日になった。
「ちょー!弥勒、雑巾もっと絞れや!
水!水水水!垂れとるっちゅーねんっ!。」
「カン~、この漫画本捨てていいのぉ~?。」
大掃除。
1年の終りの一大イベントの一つを、
30日の朝からやってる。
3人が朝から揃うのは珍しく、
今日にしようと言うことになった。
引っ越してまだ間もないはずが、
普段汚れの見えるところしかやらんせいか、
電気やら冷蔵庫の上やら、
いろんな所に埃がある。
弥勒がブツブツ何か言いながら拭き掃除。
耳を澄まして聞くと、
「すまんな、微生物。
お前達の住みかを奪ってしまうな。」
埃の中にいるであろう微生物に懺悔。
有り得ん。
大樹は俺の本に困ってる様子。
このままでホンマに終わるんか的な脱力感に襲われる俺。
せやけど、時間は過ぎて、
昼飯も食わんとやってただけあって、
夕方には掃除も終了。
「あー、疲れた。」
弥勒、脱力。
「やっと終わったね。
そろそろ窓閉めていいかな?。」
大樹は元気。
「・・・ハァ。」
俺は夕飯の支度。
今日のメニューは串カツ。
テーブルに電気の揚げ物機を置いて、
食う時に各自が好きな物を揚げる。
肉や野菜を串に刺して、
衣をつけて皿に盛る。
「弥勒、寝てんとビール持っていけや。
飲むんやろ。」
嫁のように言うも、
俺はアイツの嫁やないから口調はキツイ。
大樹は、せっせと皿を運ぶ。
コイツは何をやらしても楽しそうや。
今から3人で串カツで1杯。
コタツに3人座り、
油が熱するまでビールで乾杯。
「お疲れ~!。」
「お疲れ。」
「お疲れ様。」
こういう時に、いつもテンションが高いのは弥勒。
大樹はのほほん。
俺は結構疲れ気味。
「俺もすっかり人間染みたな。」
弥勒がしみじみと呟く。
「ホンマや。
神のくせして、煙草にビール、
もってのほかやぞ、お前。」
「それを言うなら俺達だって同じだよ?。」
大樹はいらん事を言う。
「せやけど・・・俺もなんも出来んかったなぁ。」
玉ねぎの付いた串を油に入れる。
「何も?。」
弥勒は肉の串を入れ、
「カンはすごい年だったじゃない。」
大樹は玉子を入れる。
再び3人同時にビールを飲み、
1年を振り返る。
「仕事ー、仕事ー、仕事ーばっかしとった。
なんや本来の目的の為やのに、
本来の目的が遠くに感じて。」
「確かに、俺達はその為に動いているにも関わらず、
この世界で見える事は危機感が少ないし、
神々の話しで今の世の中の事を知ってるだけだものね。」
「せやねんなぁ。
弥勒、あんまつつくと衣が剥がれるやろ。」
揚げ物が気になって仕方ない弥勒に、
俺は注意。
「でもな、お前らは今準備時だ。
基礎が出来たら次は、それに向かっての準備に入る。
その準備も必要不可欠。」
準備。
俺は学生の頃と違って、
今は霊の依頼をこなすわけでもなく、
ただ、小説を書いている毎日。
それが、アニメ化になるという事で、
来年はその事で頭がいっぱいで。
だからこそ、自分の役目を忘れそうで。
「大樹は根本の修業。
カンは神の引く道を歩いてる。
俺は調べ物。」
「調べ物かよっ!。」
弥勒にツッコミを入れてみる。
ツッコミを入れると弥勒はムキになることが多い。
「おまっ、調べ物っつってもなぁ、
めちゃくちゃあんだぞ!
しかも、俺の調べてるやつなんかっ、。」
「あー、さいですかぁ~。
ハイハイ、そですね~。」
グビグビ、ビールを飲んでは煙草を咥えて火をつける。
「こーんな分厚い教本やら、
人間の解釈の仕方やらをそこから読み取ってだなぁ~。」
「弥勒、カンもう聞いてないよ。」
のほほん大樹が熱くなった弥勒に告げる。
「なんだよ、なんだよ・・・。」
拗ねる弥勒。
そういや、
俺が以前関わった霊はどないしてんねやろう。
大和の姫、龍に狐たち。
いろんな類の霊達と共に悲しみ、怒り、苦しんだ。
「カン、揚がったよ?。」
大樹が俺の串を皿に置いてくれる。
弥勒は目をキラキラさせて自分の串を取っては、
ソースにつけて食う。
この微笑ましい事を平和だと思う。
ただ、仕事をし家事をし掃除をし、
寝て1日1日を過ごす。
これを平和だと俺は思い、
これに毎日笑って過ごす事を平和ボケだと思う。
自分の小さな事は自分では大きな事で、
でも、その悩みは自分の事。
それが家族や誰かの幸せが入っていたとしても、
叶って欲しいのは自分が幸せになるから。
俺も同じ。
周りが幸せになれば、俺も幸せになれる。
天界も幸せになれる。
子供達を救い、夢を持たせる。
そしたら神々が幸せになれるから。
「来年は、ホント、カンは忙しくなるね。」
「まぁた、俺からどんどん離れて行く~って泣くんじゃないのか?。」
弥勒にからかわれて、大樹はムキになり、
「泣かない!。」
「泣いてたろーが。」
「煩い!。」
二人の言い合いを無関心で聞きながらも、
思った事を口にする。
「追いかけて、来てくれるんやろ?大樹。」
「・・・勿論。」
大樹は俺に笑んだ。
以前の様に、悩む姿も見せずに。
大樹は大樹で大きく成長しとる。
神々は、世の中全ての生き物へ愛を注いでる。
でも、それに気付ける生き物は少なく、
神々は気付いてくれんでもええって言う。
生きていく上での辛さを乗り越えながら、
笑う笑顔はかけがえのない活力で。
来年になると、もっと目に見えて荒んでいくのが解るらしい。
俺は、その為にも早く何かをと思う。
でも、その何かが解らん。
焦り、答えの解らない問題に空回り。
サタン、
お前は人間になって上手い事やってる?。
演じてるんやろうけど、
その演技はいつまで持ち堪えれるか。
本性ださんように、
まぁ、頑張りや。
俺は、俺一人やなく、
俺の築いてきた仲間と共に頑張るから。
お前には、こんな仲間はおらんやろ。
俺がお前も助けたる。
「カン、食わないのか?。」
「あ?食う。」
「いろいろ悩んでても、焦るばかりで、
答えは出ない。
お前は歯痒くても、敷かれた道を歩め。
それがお前のやるべき事だ。」
「俺もいるしね。カン。」
「泣き虫大樹かぁ~?。」
「弥勒っ!。」
「っぷ、アハハハ!。」
俺の今、一番大事な愉快な仲間2人と、
こうして年の終りを迎える事を、
今は楽しみたいって素直にそう思う。

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