2019年

本を読みたくなるかも。そんな期待もあって、ネット上で受賞作品、それを買った人が買っている本、というように、年の始まりに10冊ばかり注文しました。でも、なかなか本を読むという気持ちには。
2度の大変な手術の後すぐに入院中も本だけは読んでいたのに、どうしたのでしょうね。
理由自体は自分でも分かっているつもりですが、それでも、ここまで本を読まなくなるとは思わなかった、という不思議な気持ちでいます。
その中の一冊を手に取って読んだのは3月にはいっていました。

2019年3月17日
LESS(Andrew Sean Greer)☀☀☀


50歳の誕生日を迎えようとするゲイの作家、Arthur Lessが主人公。タイトルは彼の名前(名字を付ける時に作家は考えてつけてるね)。作家としての一作目は成功したアーサーも、最新作は出版社からダメ出しをされて書き直す必要があり、仕事も、恋も順調とは言い難い。長い間つきあってきた15歳年下のフレディは他の男性と結婚へ。招待された結婚式に参列したくないアーサーの考えたのが、そうでなかったら応じなかったかもしれない数々の招待を全部一気に受けて、その間は自分が長い旅に出ること。メキシコ、パリ、ベルリン、モロッコ、インド、日本へと旅をするけれど、これらの招待の理由も結果もいまいち恰好悪い。初めて出会う人々、再会する知人達、そうした人々の人生に、自分の人生を想う。かつて若い時の彼が長い関係を持った25歳上の世界的な詩人ロバートとの日々、出合いと別れ、そしてフレディとの日々。一つの恋ではアーサーが若い恋人であり、もう一つの恋では、アーサーは年上の恋人。でも今は、“How to live alone and yet not be alone?” (p.9) と考えてしまう、そんなアーサーを知る頃には、これは面白い本と出会えたよねと思った。何度もくすっと笑って、それでも数か所、急にグッとこみ上げるものがある。ともかく、欠点はあるけれど、善い人間、愛さずには、気にかけずにはいられない主人公についての物語を楽しく読んでいる、そう久しぶりに思った。最後はこうなってくれるよねと期待し始めて、なんだか、ひと昔前の大ヒットしていたアメリカのロマンチックコメディーを見ている時みたいな気分も。そんな映画と違うのは、二つ。そう簡単にハッピーエンドには作家はしないだろうと別の結末に心の準備をしている自分が同時にいたこと。ゲイの50歳の作家が主人公ということ。その違いもまたいい。ピューリッツア賞受賞作品なのも頷けます。

多くの褒めちぎった書評があります。
“Less is the funniest, smartest, and most humane novel I’ve read since The Imperfectionists…Career writes sentences of arresting lyricism and beauty. His metaphors come at you like fireflies…Like Arthur, Andrew Sean Greer’s Less is excellent company. It’s no less than bedazzling, bewitching, and be-wonderful.” (New York Times Book Review)