2014年3月15日の花

2014.03.16

ゆうすげ

スープセロリ

アゼオトギリソウ

トモエソウ

ヒオウギ

Path: /hana | Link Edit



2014年2月の日記

2014/02/16

まぶいの会・京都 肝苦りさぁ沖縄(抄)を観劇する

第35回Kyoto演劇フェスティバル まぶいの会・京都 肝苦りさぁ沖縄(抄)を観劇した。以前、多分、10年以上前に、とあるお寺で見せていただいたことがある。

改めて見て、沖縄のことを考える。そして、命の大切さを考える。命がこれほど軽く扱われたことがあったろうか、上陸してきた米兵に白旗上げて降参した方が、まだ、助かった命も多かったのではないか。そんな思いに捉われつつ、思うのは、人はそれほど強くは無いということだ。だからこそ、こういった状況にならないように考えていかなきゃならない。

ただ、敗戦後、70年近くが経つ中で、当時を経験した人達が少なくなってしまった、それに比例するかのように、どうも、この時代、きな臭くなりつつある。

今のフクシマの問題にしても、基本の部分は一緒だと思う。
他人の辛さ苦しさを、我がこととする、肝苦りさ、これを胸に、生きて考えていく中で、命の大切さを自分のものとすること、そして、命はとても大切なんだよという社会の方が、生きていきやすいことを再発見していかなければ、またもや、同じ失敗を繰り返してしまうことになりかねないと思う。

この後、ホールにて京都放送劇団 秋日狂乱 を見る。
初期のラジオドラマ録音風景を模した舞台は興味引くものだった。内容はコミカルであり、そして家族というモノについて考えさせられるものであったと思う。

戦前、いやもっと前は、家族親戚一族郎党が一つの基本集団だった。それが、家族という形に分断され、次は個人という形に分断されることで、個人が一人で社会とあい対さなければならない時代になった。ある意味、個人が疲弊する時代だ。その頃に書かれた作品だろう、その葛藤が面白く描かれていたと思う。
ただ、舞台の後、深田さんがおっしゃっていたが、1時間に収めるために、かなりの台詞を削ったとのこと。その結果として、観客に訴える力が少し弱まったのではないかなと思う。その辺、なかなか難しいことだと思う。

パンフレットの中に、鴨沂通信 番外編というのがあった。鴨沂高校移設についての高校生達の強い思いが書いてあり、是非とも、それと関連した舞台を観てみたいと思ったのだけれど、次の用事のために観ることが出来なかったのが残念だ。
いっそのこと、今回の舞台すべてをyoutube辺りで見せてくれないかなとか思ったりもする。

 

2014/02/15

ちと、思うこと。

夜回り先生こと、水谷修氏の著書やDVD、講演にも行って、ここ2,3年はまったく読んでいないのですけど、曖昧な記憶でお恥ずかしい限りですが、初期、水谷氏は夜の街を彷徨う子供たちに家に帰るようにと声をかけていたのですが、その後、家に帰るようにとあまり言わなくなった、というような、曖昧な記憶が私にはあるのですけど、この文章を書くために改めて水谷氏の著作や録画した番組を見ていないので、どうだったか。
さて、こういうことを書き出したのは、家が子供の安心できる場所でなくなったと、改めて気づいたからです。

子供が何を考えているかわからない、芯がないと嘆く父親を見まして、あぁ、これは、家が子供の安心できる居場所でなくなっているのだなと思いました。
子供が何か自分の言葉を発しようとすると大声で遮り、その言葉を退ける、父親は自分の意見を語り始める。
多分、父親は良かれと思って、自身の思う方向へと指し示そうとしているのでしょうが、そのやり方に間違いがある、まずは子供の言葉を一度受け入れて、その上で、言いたいことがあるのなら、それを言えばよい、と思うのです。
子供の側から見れば、自分の思いを手前で遮られてしまった、その絶望感だけが心に残ってしまう、そして、子供は親に心を見せるのが怖くなってしまう。結果、親は子供が何を考えているかわからないとなるわけです。
これは、本来、親の側が変わっていかねばなりません、が・・・。
親が子供にそういった行動を為すのは、親が子供を支配したいという欲求で、それが例え子供のためと思っての行為であっても、それによって、子供が家にいられなくなってしまうのではと思っています。

 

昨日の大雪から、今日は一日、寒雨。
あれも、これもしなきゃとは思うのですが、寒くて元気なし。

2014/02/14

豪雪地帯から見れば、この程度の雪、たいしたことはなかろうなとは思いますが、こちら京都ではなかなか厳しい。

京都新聞 夕刊 2014.02.13
『秘密法は違憲』提訴 特定秘密保護法は憲法違反だとして、静岡県の弁護士会所属藤森克美弁護士が国を相手取り違憲・無効確認と施行の差し止めをもとめる訴訟を静岡地裁に起こしたとのこと。
政治家が、どうも当てになりづらくなる、そんな気がする今、個人がそれぞれの手法で蠢きださなければならないのかなと思っていたりしますが。
どうも、このところ、国威を無理からにあげようとする、これはグローバル経済と関わりあると思いますが、なにやら無理やり感を感じておりまして、そんな中で、秘密法がありますと、国の、もしくは国民の暴走を止められなくなると申しますか、そんな気がしましてなんだか嫌な

京都新聞 2014.02.13
経団連 武器輸出拡大を提言 三原則見直し 平和理念逆行も
命を経済の言葉で語ろうとする典型かなとか思ったりもしなくはありません、近代より、侵略戦争は存在しません、すべての戦争は自国を守るための戦争であり、などという考え方をする人達が為政の多くにある、それがこの社会だと思ったり致しますと、武器の輸出拡大は、なにをかいわんやと思ったりも致しますし、今こそ、しっかりと命の大切さについて考えなきゃならないのではと思います。京都新聞2014.02.04 柳田邦男の現論 『想像力が問われる』に紹介されている文章でカラシニコフ銃の開発者 ミハイル・カラシニコフ氏が生前、自分の作った小銃が人々の命を奪うことに対して、痛みに耐えがたい。自分は罪に問われるのだろうかとロシア正教会の総主教に手紙を送ったとのこと、ロシア正教会は祖国を守るためなら兵士も武器も正当と認められるとしたとか。私は宗教に詳しくありませんが、ロシア正教会と言うのはキリスト教だったと思いますけど、それは他のキリスト教の団体も同じ考え方なのでしょうか。キリスト教は命は大切だと伝えているのではと思っているのですが、自分の側の「命」限定と言うことでしょうか。

カラシニコフ氏がキリル総主教に書簡

 

2014/02/08

第35回Kyoto演劇フェスティバルを見に行く。
京都西陣創造集団アノニム「ベロ出しチョンマ ソメコとオニ」を観に行こうと思っていたのだ。幸い、早くに出たので、京都市立久我の杜小学校演劇部「バースデー」と宇治っ子朗読劇団 Genji「源氏物語宇治十帖朗読劇」も見ることが出来た。

京都市立久我の杜小学校演劇部「バースデー」 びっくりする。完成度が高い。本もしっかり出来ているし、演技もしっかりしている、というか、ちょっと感動してほろっと来た。演劇の劇とは、劇薬という言葉にもあるように、人の心をどれほどに揺さぶることが出来るかだ。劇的な舞台だったと思う。

宇治っ子朗読劇団 Genji「源氏物語宇治十帖朗読劇」 子供というのは侮れない。揺れる心をうまく表現している。源氏物語は私的にはそれほど好きではないのだけれど、恋のどうしようもない辛い思いが、純粋に表現されていたと思う。

さて、京都西陣創造集団アノニム「ベロ出しチョンマ ソメコとオニ」を観に行ったのだ。
特に私は斉藤隆介の世界が好きなので、これは外せないと思ったのだ。
斉藤隆介の世界の魅力は弱い人達の持つ前向きな力強さを昇華させることにあると思う。
今回の舞台は子供向けの演出をされていたわけだけれど、それ故に雑味なく、まっすぐに斉藤隆介が伝わってきた、そう思う。
私としては、他にも『立ってみなさい』など他の作品も観てみたいと思うし、長編の「ゆき」も舞台にしてもらえたら嬉しい。

 

2014/02/06

創造集団アノニムの公演、Kyoto演劇フェスティバル ベロ出しチョンマ を観にいく予定。チケットも買った。
作者 齋藤隆介のファンでもあるので、楽しみ。彼は童話作家として知られているけれど、元は新聞記者で、当時だったか、職人をインタビューした作品はとても興味深いものだった。

2014/02/05

雪降る

2014.02.04

ばてた

Path: /nikki | Link Edit



2014年1月の日記

2014.01.29

「ヒトに問う」倉本聰著 双葉社 注文していた本が入荷し、受け取りに行く。これから、読む。

2014.01.26

少年、トレイの向きを手直しする

叔父が入院したので、見舞いに行く。
帰り、病院近くのレストラン(どちらかと言うと食堂っぽい)で昼御飯をいただく。
そのレストランはトレイに載った食器を返却口へと返すのだけれど、さて、食器を返そうと返却口にて。少年が返却口に自分のトレイを返している。その少年のトレイの横には先客のトレイが返却口に置かれていた。
トレイは長方形で、縦向きにするほうが多くのトレイを並べることができる。
先客のトレイは横向きになっていたのだが、少年はそれをすいっと縦に置きなおし、端に寄せた。小学生、3年か、4年生だろう。
ちと、感動する。親の教育も善いと云うことか。

2014.01.24

通り道、紅葉橋より。

2014.01.22

ゲルソン療法―がんと慢性病のための食事療法  生活習慣病の改善にはいいかもしれないと思う。

2014.01.20

案内の葉書をいただく、行こうと思う。

京都放送劇団公演 「秋日狂乱」、楽しそうだ。


2014.2.16 京都府立文化芸術会館
主催 kyoto演劇フェスティバル実行委員会

前売り800円 問い合わせは京都府立文化芸術会館 電話 075-222-1046

2014.01.19

当相「秘密法改正は困難」 改善努力発言を修正 47NEWS を読んで少しばかりのこと

森担当相「秘密法改正は困難」 改善努力発言を修正 47NEWS
政治家は自身の言葉にどれだけ責任をもてるか、これは、政治家に限らず、大人全般のことではあるが、特に政治家は自分の言葉に責任を持つべきだと思う。
だから、その言葉の内容が、以前と変わったなら、変わったことへの妥当性を説明すること、それに誠意と時間をより割くべきであり、そうでなければ、その言葉に何の意味も無いばかりか、迷惑この上ないなぁとか思ったりもするのだけれど。
と、思いながら記事を読む。結局、前回の運用において改正できるかも、というのが、いや、難しいです、となったわけで、ころっと変わったという感は否めな い、結局のところ、彼女は伝言者であり、それ以上ではないということか。他人の言葉を伝えるだけならば、言葉に責任を持つことなど出来ないし、持ちようも 無い。ただ、それならば、なにやら偉そうな肩書きを外していただく方が良いのではないか、なんて思わなくもなかったりして、なんて気もしなくはない。
言葉を発すると云うことは、とても重いことだと思う。書いたものなら、消しゴムなり、打ち消し線でなかったことで、なんてことも出来るけど、発した言葉は消しゴムでは消えない。
言葉に責任を持たない、無責任な政治家は、大人全般ではあるけれど、信用するのは少々困難であるなぁと思うし、正常な社会が成り立たなくなるのではと危惧をしたりする。

好きな文章 神社合祀に関する意見 南方熊楠

抜粋

むかし孔子は、兵も食も止むを得ずんば捨つべし。信は捨つべからず、民(たみ)信なくんば立たず、と言い、恵心僧都は、 大和の神巫(みこ)に、慈悲と正直と、止むを得ずんばいずれを棄つべきと問いしに、万止むを得ずんば慈悲を捨てよ、おのれ一人慈悲ならずとも、他に慈悲を 行なう力ある人よくこれをなさん、正直を捨つる時は何ごとも成らず、と託宣ありしという。俗にも正直の頭(こうべ)に神宿ると言い伝う。

森担当相「秘密法改正は困難」 改善努力発言を修正  47NEWS
政治家は自身の言葉にどれだけ責任をもてるか、これは、政治家に限らず、大人全般のことではあるが、特に政治家は自分の言葉に責任を持つべきだと思う。
だから、その言葉の内容が、以前と変わったなら、変わったことへの妥当性を説明すべきに時間をより割くべきであり、そうでなければ、その言葉に何の意味も無いばかりか、迷惑この上ないなぁとか思ったりもするのだけれど。

2014.01.16

カラスウリと拾った種を蒔く。

2014.01.15

「脱原発」議員の利用拒否、福井 敦賀のタクシー会社- 共同通信(2014年1月15日10時54分)

脱原発議員に配車拒否 敦賀のタクシー会社 2014年1月15日 13時47分

ちと、考えられないような話。配車担当の社員がいったん電話を切り、ネットで議員が脱原発を謳っており、それを確認した配車係が議員の秘書に電話をして、独断で依頼を断ったとのこと。
どうも、引っかかりすぎる話だ。

一社員が独断でこんな行為を出来るものだろうかと考える。会社名が掲載されているないのでわからないが、千葉から福井に電話をする以上、それなりの規模のタクシー会社ではないかと推測する。一人の社員が独断でと記事にあるけれど、こんなことをするれば、相手は議員だ、ほぼ、間違いなく、クレームが会社へと来るだろう。それを予測することはその社員にとってそれほど困難なことではなかろうと思う。悪くすれば首になりかねないと思うのだけれど、それでも、そのような行為を為したというなら、十二分に裕福で首になっても生活に困らないか、首や減俸にならない理由があったのではないかと思うわけだ。

一つにはそのタクシー会社、もしくは上司から、議員に対しては、ネット等で発言や思想を確認し、脱原発なら断るべしという職務命令があったか、もしくはそれを当然とする風土が企業にあったと考える方が自然であるなと思われるし、はっきりとした文書ではなくても、配車担当の社員が戸惑いなくそう行動する、もしくは忖度して不思議でないモノがあったのだと思う。
さて、では、その風土が、そのタクシー会社固有のものであり、福井県では例外的な考え方であったのかと云うと、はてと首をひねる。

ま、ともかく、
「脱原発」議員の利用拒否 福井・敦賀のタクシー会社  2014/1/15 10:37 に拠ると議員の目的は原発関連施設を視察するためだったらしく、単純に、タクシー会社は日本原子力発電に目を付けられることをひびったんだなと思う。びびらせる歴史と風土があるのだろう。

特に上記の文章とは関係ないけれど、こんなリンク。

原発地元に「風評被害」という言い訳は許されない〜原発計画を阻止した住民の言葉

近所の家の壁

2014.01.14

2014.01.13

2014.01.12

すき焼き御呼ばれする。

2014.01.11

夜から、町内会 新年会。

2014.01.10

迷子に「どうしたの」と声かけるべきか 「不審者」扱い怖く、「110番」した実例巡り議論 これは、なんとも、難しい。

2014.01.09

消される? 負の歴史、関東大震災時の中国人虐殺名簿/神奈川 ちと、メモをしておく。忘れないように。

2014.01.08

古賀茂明氏がズバリ「安倍首相の靖国参拝は金正恩と同じ」日刊ゲンダイ 記事を読んでいて、おおよそ、そういうことなんだろうなぁと納得する。ちょっと、ジョージ・オウエルの「動物農場」を思い出した。

京都市立芸大、10年後に移転 市が計画発表 京都新聞。現在、西京区大枝にあるのが、京都駅の近くに移転となるらしい。
私が住んでいるのは、その大枝の隣り、大原野だけれど、地区の住人として見たとき、宝物を譲ってしまうのだなぁと思った、ほんの少しばかり、大原野の活性化の集まりに顔を出すようになって、十代後半から二十代の発想や、前向きさに感化されていたのだが、それがなくなってしまうというのは、地区としては大きな痛手だなと思う。
といっても、記事にあるように、当てにしていた地下鉄が通ることも、今後無く(私は関係者ではないけれど、無いと言い切っていいだろうと思う)、不便であると言われれば、返す言葉はない。 記事より抜粋

 門川大作市長は記者会見で「京都駅に近い好立地で市民や観光客が音楽を楽しむ拠点となり、インパクトの大きさは計り知れない」と述べた。

そりゃそうでござんしょうね、としか言えない。

 

2014.01.07

知事笑顔「いい正月」 記者質問に強く反論 2014年1月7日 07:00 沖縄タイムズ を読んで、また、この件に関する他の記事も読んで、つくづく思うことの一つに、批判の未熟さがあると思っていたりする。あぁ、言い切るとあれなので、未熟さがあると思っていたりするのだけど・・・、と訂正する。批判者は本気なのか、なぁと思ったりするのだ。

仲井真弘多知事が出した結論に対して、同じ結論に至るまでの思考を、彼の背景と時系列に応じて展開していくことで、彼は何を考え、何に頼ったのかを見極めていかなければ、有り体に言って痛くも痒くもない批判を形式上、行っているようにしかみえない・・・、ような、そんな気もするのだけれど。

2014.01.06

医療費の膨張が止まらない 「金の切れ目が命の切れ目」なのか- 産経新聞(2014年1月6日16時05分)思想・哲学にそって、命の問題は考えていきませんと、つまり、経済の言葉で命を語りだすと、お金で命を区分けするようになる。この件については、もっと考えないとうまく書けない。

2014.01.05

「検証 官邸のイラク戦争 元防衛官による批判と自省」柳澤協次著 岩波書店刊を買う。同じ過ちを繰り返さないためにも、検証と言うのは大切だなとは思う。このところ、老眼が進んだのか、細かい字が読みがたいので、ちと、厳しい。
ついでに。 →イラク戦争の検証を台無しにした民主党政権 天木直人 http://www.amakiblog.com/

憲法9条ノーベル平和賞を」実行委員会 https://www.facebook.com/nobelpeace9jou

こういう動きがもっと活性化すれば良いなぁと思う。現実を変える勇気を持たなければ、現実は変わらない。

10年以上使い続けたデジカメ、

三洋電機 DSC-SX150 製品版レポート http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990820/sanyo.htm

150万画素と言う、携帯のデジカメにすら、かなわない画素数だけれど、使い勝手はとても良いと思う。今も使えるのだけれど。

新しいのはキャノンのコンパクトデジタルカメラ 1万円台のカメラだけれど、なかなか良い感じだ。
新しいデジカメが欲しいと思ったきっかけが取引の業者さんからいただいたかわせみの写真、まさに枝に着地する瞬間を写したもので、こういうの、私も撮りたいなぁと思ったのだ。
ただ、よくよく訊いてみると、一眼レフに望遠、しっかりとした三脚も用意してということで、お金がかかるなぁということで、まっ、しょうがない、カワセミの写真はその業者さんにまた新しいのを見せていただくことで満足しようと考え直す。
ただ、新しいデジカメが欲しいと言う気分はさめやらず。
基本、電気製品は今のが壊れないと次のは買わないという主義で、SX150の電池の蓋が割れていて、輪ゴムで止めておかないと作動しないのだけれ ど、この程度は壊れていると云う範疇に入らない私としては、現時点で新しいデジカメを買うというのは、基本を逸脱した行為である。
そんなわけで、買うのに随分と悩み日数をかけたのだけれど、いま、買って結構楽しい。

月の写真も、SX150では、ズームもないし、白い点でしか写せなかったろうと思うと、少しばかり、クレーターらしきものも写っている写真に、概ね、満足している。

あぶく銭で稼いだ町や人間は滅亡する〜NHKEテレ「福島浜通り原発の町」を見て つぶやきかさこは、度々、拝読している。今回の記事も、私自身、鎌田慧の書籍など随分読んできたので、そうだろうなと思う。ただ、利権のおこぼれに浴した人達と、そうでない、損なくじを引いた人達が、時系列を考えれば混在している。辛いことだなと思う。

2013.01.04

事情につき、1時間ほど歩く。
健康のために歩くというのではなく、単に自家用車とかバスとかの交通手段がなく、ならば歩くかと1時間ほど歩いたわけだ。
歩くと色んなことを考える。

仕事のこと

とある車のディーラーの前を歩く。昔、勤めていた会社だ。十数台の展示車両、大きなショールーム、受付の可愛い女性、喫茶店をコンセプトにしただけあって、良い雰囲気だ。

いま、私は自動車の販売整備業、業界の分類としては、専業と呼ぶ仕事で生業を得ているけれど、専業の一般的な流れとしては、こうしたディーラーに似せていく方向にある。小さなショールームを作って、数台の展示車両を置いて、そんな感じである。
私の働く店は、道路から奥まっているし、ショールームを作ることは出来ない。
さて、ディーラーに右倣えでは、正直なところ、個人や小さな会社である専業では、そうそうたいしたショールームが出来るわけない。正直な物言いしてあまり敵は作りたくないが、ぶっちゃけ、ディーラーのショールームに比して、小さいというか、侘しいというか、劣化版と言われても、うーんというところであ。もちろん、そんな中で、専業は頑張っているのだ、頑張ってはいるけれど、こうして休みの日に歩いて、前を通ったディーラーのショールームを思い起こすと、まっ、そんな感じなわけだ。お金をかけることがそれほど出来ない以上、これはしょうがない。さて、特別な事情がない限り、誰だって良いモノとほどほどのモノがあれば良いモノへと靡くだろう。
つまりは、専業はディーラーへ右倣えをしても仕方がないというか、哀しいだけだ。いまの時代はお客様に店の選択権がある、これが常識だろうと思う。そして、店側は、どうすればお客様が来てくれるだろう、この店を選んでくれるだろうと考える。
でも、資金的にも劣化版なら、有り体に言って無理。
大きな店には勝てない。だから、ここで大事なのは、同じ舞台に立たないようにするということだ。
つづきはあとで。
 

知る権利 秘密主義化する米政府 Muzzling the Freedom of Information Act 
なにやらきな臭い話。私が学生の頃、今のアメリカの姿は10年後の日本の姿だと言う人が多かった。多分、それは良い意味で言っていたんだろうと思うけれど、現在において、10年、ではないが、今のアメリカの姿は数年先の日本だ、と思ったりする。都会と田舎の関係よろしく、アメリカと日本の関係であるならば、少しばかり時間差があるのだ。多分、数年後、息苦しい全体主義的な国に日本もなっているのではと危惧せざる負えないとか。

ディズニーの魔法が消えた日 そんなにまで、ディズニーに惹かれる理由はとか思う。なお、私はディズニーランド等は行ったことがないし、ディズニー映画もなんだか拒絶という気分だったりする。そういう人間から、この記事を読むと、なにやら宗教にすがる信者の姿と重ねてしまう。理性を保つためには、多分、ディズニーは禁忌ではないかという気もするのだ。
お昼、事情により、牛丼屋さんで牛丼を食べる。休日ということもあるのか、小さな子供を連れた人たちが多い。それを見ながら、この子達の基本の食とは、もしくは、基軸となる食、料理とは、牛丼であったりハンバーガであったり、冷凍食品であったりするのだろうかと考える。それが幸せなことなのかというと、あまり善きことではないなと思ったりもするのだが、ディズニーもそういうものかなぁとか思ったりする。パチンコの大きな音と賑やかな明滅する光、これにより、脳がそれを欲してしまうようになるらしいけれど、ディズニー効果とか呼ぶのもありではとか。
こんなことを書くとディズニー好き(信者)の方達から怒られそうな気もするので、気弱な私は、それじゃ、一度、ディズニーランドへ、行ってみようかな、楽しそうだし。とか、書いておく。

京都新聞 アウトサイダー 「反原発」で逃した成功。それでも
フライングダッチマン リー・タバスコさんの言葉。彼の言葉は真っ当だと思う。

2014.01.03

母と甥と三人で父の墓参りへと行く。

多分、アゼオトギリソウの芽。

去年移植した蕗

蝋梅の花芽が少しだけ膨らむ

夕方から、定例の新年会へと出かける。

2014.01.02

高島屋まで、土手沿いに歩く。

2014.01.01

あけましておめでとうございます。本当にめでたいなぁと思える善き年でありますように

朝、9時過ぎ、近所の寺院の年賀へと行く。

Path: /nikki | Link Edit



2013年12月の日記

2013.12.28

キャノンのデジカメを買う。Power Shot SX280HS いままで使っていた150万画素のデジカメとは随分違うなぁ、ズームもあるし。

2013.12.25

弾薬を提供したと言うことを知り、南スーダンのことを知る。なお、私は武器三原則は例外なく堅持する方が良いと考えている人ですが、ま、それは置いといて。
銃で人間を殺すとはどういうことなのかと考える。
幸いにも、そういう状況に陥ったことはなく、出来うる限り、今後もそういう状況下になりたくないと切に願っているわけですが、「殺す」という状況になったとき、行為を為そうという、彼、もしくは、彼女はどういう心理状態なのであろうと考える。
魚釣りに行き、釣った魚をその場でから揚げなんかにして食べる。特に罪悪感はない、魚の命を奪ったのにだ。彼、彼女にとって、もしくは私にとって、人の命と魚の命の差異は何処にあるのか。本来はそういうものなんだの一言で済ましたいのだけれど、多分、そういうものなんだという言葉の持つ力がすっかり弱くなってしまった現在、ちと、細かに展開していかねばならなくなったのではと、そんな気がするのだ。

2013.12.22

メモ 宇治山宣会 http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yamashiro/yamasen/

禁コンビニ

ここ数年、うーんと考えることがあった。たいしたことではないのだけれど。
尾篭な話で恐縮だけど、年に数回、痔になることがあった。
椅子に座ろうと思っても、普通にすとんと座れない。微妙に位置をずらさねばならないと云う、情けない状態が十日ほど続くだ。
加齢によるものかと思っていたのだけれど、ふと気が付いたのは、そのような状態へとなるきっかけ。
これが、コンビニでお弁当やおにぎりを買って食べた次の日だということだ。お弁当といっても、焼きそばやパスタは大丈夫。ご飯、お米を食べた次の日に必ず痔へとなるのだ。私的には、ご飯に塗ってある油との相性が私の体と悪く、そうなるのではないかと推測しているけれど、特に何の根拠もない推測というか、ただの愚な思い付きであることは一言添えておかないと、本名で書いているブログである以上、コメントなどで辛辣な攻撃を受けるかもしれないなぁということで、逃げを打っておく。

周りの知り合い数人に、そんな話をしてみたが、自分はそんなの全然ないよという返事ばかりである。
別に私も拳振り上げて主張したいわけでもなんでもなく、単純にコンビニでお弁当を買わなければよいだけの話である。ただ、年寄りで、お弁当を買った後で。あぁそうだったと、涙するのは避けたく、そんな同じ失敗をしないために、ちと、こんな記事を書いたに過ぎません。
平伏。

2013.12.21

寒い中、水洗いをしなければと、あぁ、ならば、ロケットストーブで水を沸かそうではないかと思った次第。
ただ、ロケットストーブも火を起こすのにコツがありまして、それが上手くないと火が消えます。
煙突部分の温度を最初に上げてやらないとなりません。
新聞紙を一枚、ぎゅっぎゅっとねじって、マッチで火をつける。新聞紙が燃え出したら、煙突に放り込みます。すると、いきなりごぉっと音がして炎が上がります。そく、50センチくらいの半分に割った竹を、同じく煙突に放り込みます。
そうしますと、竹が燃えている間、かなりの炎、写真にレンガが二つありますが、まずは、そこで数本、竹や木を燃やしまして、燃え出したら、焚き口に移します。
写真は、最初に差し込んだ竹が燃え尽き、焚き口に差した竹や木が燃えた炎が上まで噴出している様子です。

2013.12.18

無形文化遺産登録決定するも日本人は「和食」離れで肥満増加- NEWSポストセブン(2013年12月18日16時00分)を読んで思うのは、炭水化物ダイエットのくだり。つまりはご飯、お米を食べよということを主張したいようだけれど、記事というのは、なんらかの意図の上に成り立つものであり、日本人に糖尿病が多いのは、米食にあるのは間違いなかろうと思う前提で、記事を読むと、つまりのところ、いままで日本人は米を食べすぎていたため、糖尿病が多かったのであり、控えることで症状が良くなるのであれば、炭水化物である米はもちろん、小麦製品も、パンだとかうどん、パスタ、こういったものを食べるのを控え、今と比較して、小食となったほうが体に良いのではと思ったりする。つまりは、米を作る側、販売する側への慮りが透けて見えてしょうがない。専門家が、必ずしも良心の下、正直で正確なことを言うかどうかはわからないと言うことをフクシマで経験した今、もうちっと発言は考えた方がなんて、思ったりしないこともない。
地位協定の改定「応じられない」 アメリカ国務省のハーフ副報道官、もともと、私は経済の言葉で事象を語ることを好まないのだけれど、あぁ、これは、国を株式会社としてみれはわかりやすいのではと思ったりする。地位協定を見直すということをアメリカ政府側から見た場合、利益を一失するに他ならないわけで、株式会社であれは、株主に問い詰められること、間違いないわけで、応じるわけがない。それを応じさせる材料も無しに、頑張ります的なことを言うのは、詐欺でもある。つまりは、地位協定というものは、日本国内でどうしようこうしようと言っても仕方のないことで、アメリカ政府の膝元に、こういうのはありなんですかと問いかける方が、まだ、改定の可能性はあるかもしれない。多分、政府としては、ずるずるとこの状況を続けて行きたいだろうと穿った見方を私はしているけれど、彼の国の有色人種政策を良く研究して、突きどころを見出す方が、また、可能性はあるなとか思ったりはする。日本政府がそれを快く思うかどうかは知らないけれど。

2013.12.12

サイレントマジョリティとは、日々の生活に疲れて、押し黙ってしまった人を、諦めてしまった人達を云うのではないか。

2013.12.11

石破氏、報道機関の処罰に言及 直ちに撤回、彼は先日のテロとデモの同一視も合わせて、様子を伺っているのだろうなと思う。汚くて賢いというところか。検討の共謀罪、対象はテロ対策に 政府、実行行為なしで処罰、世界を寄りよい方向へと向かわせていこうと言うなら、秘密を出来うる限り無くしていくこと、秘密は欲を土壌に発生する、欲を如何にうまく制御できるか、それが秘密そのものを減らすことと繋がる。色んな欲があるが、味噌もくそも一緒にせず、良く考えていくことが大事だし、共謀罪を国民に向けると言うことは、政府の嘘を、欲を暴かせないための手法であり、そもそもの目的がテロ対策だといっても、いずれは国民全体に向かっていく、それは太平洋戦争で随分と経験したはずなのだが、経験しつらい思いをした人達が鬼籍に随分と入ってしまったいま、またもや蠢きだしたのだなと嘆息。

2013.12.10
皇室関係の文章はほぼ書いたことがない。住井すゑの小説やエッセイに学生時代随分と感化した所為かなと思う。お茶大附属入学の悠仁さまをめぐり学内で様々な悲喜こもごも、さてだけど、ちょっと興味深いなと思ったので書いてみる。
天皇制と差別の関係について。つづく
2013.12.08

特定秘密法案について、国民生活には影響ないという記事が目に付くようになった。読んでみる、なるほど、これは3年前と同じだ。枝野氏をはじめ、専門家という方たちが「ただちに影響はない」と言っていた言葉と同じだ。現在、放射能だとか、放射性物質について、様々な影響が、国民の生活に出てきているではないか。

2013.12.06

特定秘密法案、近代史を読み返せば、国だとか政府だとか云うモノは、常に国民が適切に監視していなければ暴走する性質を持っていることは理解できるだろう。国民が選んだ議員達だが、民度と議員の質は比例するというなら、私たちは民度が低いのだなぁと、嘆く。

2013.12.04

いつの間にか、12月も4日目。慌しい
朗読用の一人語りの小説を書いてみようかと思いつき書き出してみる。改めて、自分が書きたいものというのが、既に決まっていて、どうすれば、それをうまく書くことができるのだろうと腐心していることに気づく。

2013.12.01

 

Path: /nikki | Link Edit



黒い傘

紆余曲折がありまして、昨年はこのお話を元にした朗読劇を上演していただいたりとありましたが、それ以降、なんとか、自身がわりと納得できる形で、オーディオドラマとしてきっちり仕上げておきたいとか思うこともありまして。
「わりと」と「きっちり」、どっちなんだというものですが、少しばかり、逃げの要素も残しておきたい小心者ですから。

最後まで書いたので載せておきます。
400字詰め原稿用紙44枚。
権利は私にございますけれど、黒い傘についてのみ、ご自由に演じていただければと思います。特に私へのご連絡は必要ございません。また、演じることで、例えばCDやダウンロード販売などで利益を得られるのもご自由にどうぞ。私への利益の分配は必要ございませんし、特にご連絡も必要ございません。

 

黒い傘

(囁くように、でも、はっきりと)
女 「こんにちは」
女 「はじめまして」
(静かな音楽)
女 いつからだったろう、黒い傘の、あの女の子を見かけるようになったのは。冷たい雨の降る夕暮れ時だったろうか、それとも雪の降りしきる吹雪の朝、そう だ、思い出した。夜に降り続いていた雪がやんだ朝、久しぶりの青い空、地上は雪に覆われた真っ白な世界、新聞を取ろうと玄関を出た時、その真っ白な世界の 中に黒い傘を差したあの女の子がいたんだ。黒い傘のあの子だけが白を拒絶し、道の向こう側に立っていた。誰もいない二人っきりだった、急いで道の向こう側 へ渡らなきゃと思ったのに、手を伸ばしてしっかり抱きしめてあげなきゃと思ったのに、私は怯えて立ちすくんでしまった。どうして私は怯えたんだ、どうし て。
どうしてだかわからないのに、私、怖くなってドアを閉ざしてしまった。
それから何度も、傘をさしたあの女の子を見かけた。陽だまりの、公園のフェンスの向こう、夕日に伸びる私の影の下。
小さな黒い染みが、私の心の中で見る間に広がって、いつのまにか、黒い傘をさす小さなあの女の子が、心の中を、大きく占める存在になっていったんだ。
名前も知らない、話をしたこともない、ううん、顔すら、黒い傘が邪魔をして見たことがないんだ。それでも、なんだか、そわそわと気掛かりでしょうがない。 思い切って声をかけてみようかと思う、思ったことはあるのだ、でも、なんだか怖いんだ。円満とは程遠いけれど、夫との安定した生活。近所の人達との、天気 がいいだとか、悪いだとかのつまらないお喋りをする日常。それが、黒い傘に隠れた小さな女の子に話しかけた途端、一瞬にして消え去ってしまいそうな気がし て怖いんだ。
どうして、そんなふうに思ってしまうのだろう、わからないくせに、いつも、こうしてためらってしまう。怯えてしまうんだ。

(少し元気に、呼びかけるように)
女 「こんにちは」
女 「はじめまして」
女 「私、この近くに住んでいるんだ」
女 「君もかな」
女 「大きな傘だね、お父さんの傘かな。」

女 簡単なことだ、返事がなければそのまま、通り過ぎればいいだけのことだ。でも、返事があれば。返事があればどうしたらいいんだろう。私、怖くて逃げ出したりしないだろうか。

(鍵を開けて、ドアを開ける音)

女 「あぁ、お父さん、居たんだ。ただいま」
女 夫は三日間の出張、一人でいてもしょうがないと、久しぶりに実家に帰ってきた。
女 「母さんは」
父 「一泊二日の温泉旅行、お仲間とな」
女 「なるほど、その言い方。定年退職、ごろごろしている亭主として立派に疎んじられているわけだ。たまには姉さんや兄さん、帰ってくるの」
(女、椅子を引いてテーブルにつく、女、落ち着いた口振りで)
父 「お前くらいだな、思い出したように帰ってくるのは」
女 「まぁ、しょうがないよ、姉さんも兄さんも子育て大変だからさ」
父 「おまえはどうなんだ」
女 「ん、私」
父 「子供は」
女 「いきなりだなぁ。そういうのはいらない」
父 「亭主殿は欲しがっているんだろう」
女 「それが大問題だ、最初はさ、子供はいらないよ、君さえ居てくれればねって甘い声で話してくれてたんだけどなぁ」
女 父さんの読んでいた新聞がテーブルの上にある。大見出し、生後すぐの赤ん坊がゴミ袋の中で発見された事件だ
父 「亭主殿はお前が本気で子供がいらないとは思ってなかったんだろう。男は無条件に女は子供好きと思い込んでいるからな」
女 「今にして思えばね」
父 「新聞に載るよりかはましというものだな」
女 「どういう眼でうちの父さんは娘を見ているのやら」
(女、わざとらしく溜息をつく)
父 「件の母親未満にとっては赤ん坊が生まれることが迷惑だったんだろうな」
女 「だからって、自分の子供を殺して良いわけはないよ。命はかけがいのない大切なものなんだから」
父 「なるほど、命は大切なものなのか。俺や母さんの命もお前にとって大切なものなのか」
女 「もちろんだよ」
父 「なら。例えば、日本の裏側、ブラジル辺りの、一度も会ったことのない、これからも会うことがないだろう男の命も大切なのか」
女 「え」
父 「銀行強盗、間が悪くお前が人質になった、その銀行強盗の命も大切なのか、お前は」
女 「そんなのわからないよ」
(父、少し笑う)
父 「いつだったか、新聞に日本人は命の大切さを初めから知らないと書いてあったことがある。命の大切さは普遍的なものだ。つまり、どんな命も大切だと言い切れないうちは、そんな言葉は偽物だということだよ」
女 「凹むなぁ。父さんは意地悪だ」
(父、愉快に)
父 「謝るよ。大切な娘が凹み過ぎて自殺でもしたらかなわんからな」
(冷蔵庫を開ける音)
女 「百年先、私が父さんの死に水をとってあげるさ。さて、冷蔵庫は、なんもないなぁ。父さん、朝から何か食べたの」
父 「動かないからな、腹も減らない」
女 「そんなこと言ってると、動かない、じゃなくて、動けないになってしまうよ」
(冷蔵庫を閉める音)
女 「ご飯、食べに行こう。母さん、どうせ、旅先で美味しいもの食べているんでしょう」
父 「そうだな、出かけるか。外で食べるのは久しぶりだ」
女 「父さん、何食べたい」
父 「お前は何が食いたいんだ」
女 「優しくて美しい、とっても親孝行な娘が自腹で父さんに美味しいものを食べてもらおうっていうんだからさ、自分の好きなのを言ってよ」
父 「不思議なものだな」
女 「ん、何が」
父 「お姉さんと呼ばれるのか、それともおばさんと呼ばれるのか、その端境の娘なのに、親から見れば、まだまだ、小学生にもならない子供のように思えて仕方がない」
女 「困ったもんだよね、親ってのは」
父 「そうだな、困ったものだ。齢を取ると目が悪くなって二重写しになるんだ、今のお前と子供の頃のお前とがな」
女 父さん、懐かしそうに少し笑みを浮かべる、いま、子供の私、どんな表情をしているのだろう、笑顔、浮かべているのかな
父 「そうだな、中華でもするかな」
女 「中華いいね、思いっきり食べよう」
父 「確か、商店街にあったろう」
女 「そうだ、あったよね、豚の角煮が美味しいお店」
女 「ね、父さん」
父 「なんだ」
女 「子供の頃のあたしって、可愛かった」
父 「ああ、自分の娘だからな」
女 「あたしのこと、大切だった」
父 「大切に思っている、今も昔もな」
(女、照れたように)
女 「ありがとう、大切に思ってくれる人がいる、へへ、それが嬉しい」

(商店街の賑わい)
女 一歩先を歩く父さんの背中。あたしが初めて父さんに会ったのは、小学一年生だった、新しいお父さんよ、って気楽な様子で母さんがあたし達三人を前にし 紹介したんだ。父さんの一瞬、戸惑った顔を忘れない、母さん、自分は独身で子供も当然いないって言っていたらしい、まさしく、結婚詐欺だ、でも、すぐによ ろしくって、父さん、あたしたちに笑いかけてくれた

(商店街の中華料理店、扉を開ける音)
店員 「いらっしゃいませ」
女 空いたテーブルにつく。几帳面に背を伸ばして座る父さん、いつもの癖だ
女 「小皿もらって、一品ずつもらおう。その方が、いろんなの、食べられるよ」
父 「それもそうだな、お前は若いんだからたくさん食べろ」
女 「父さんこそ、しっかり食べて体力をつけてくれないとさ、父さんが寝たきりになったら私が介護しなきゃならないみたいだし、元気にしててくれないと大変だ」
父 「大丈夫だ、お前にはお前の人生がある、お前の世話にはならんよ」
女 「力強いお言葉、ありがとう」

女 餃子にチンジャオロース、もちろん、角煮。いくつかをまとめて注文する。冷えた水を少し口に
含む、なんだか良い感じだ。ん、写真入りのお品書きを見ている父さんの顔
父 「どうした」
女 「親子しているなぁって、自分の親孝行ぶりに感動していた」
父 「気を使いすぎるな、元気でいてくれればそれだけでいいんだ。ところで、お前、うまくいってい
るのか」
女 「えっ」
父 「亭主殿とうまくいっているのかってことだ。結婚した娘が不意に戻って来て親孝行をしだす。
鈍感な男親でも、家で何かあったのか、くらいは思うものだ」
(「いいの」は問いかけるように)
女 「あるけど、言うと、あたし、泣き出すかもしれない、いいの」
父 「ああ、泣きながら餃子を食え。思いっきり食って、思いっきり泣けば、すっきりして良い道筋も見えてくるものだ」
女 「それが泣けないんだ、自制心が強すぎて」
父 「娘は父親と似た男と結婚する傾向があると何かで読んだが、お前は、お前自身が俺に似てしまったようだな」
女 「父さんも自制心が強いの」
父 「あぁ、こんな娘と向かい合って飯を食おうというんだからな」
女、小さく笑いながら。
女 「ひどいなぁ、父さんってば。でも、なんだかそういうのも嬉しいんだ、今はね」

女 角煮が最初に来た、小皿にとりわけお箸を添えて渡す。なんでもない、こんなことが嬉しい、ずっと一人で食べていたから

(女、電話口にて、夫と話す)
女 「晩御飯、食べないの。そう、帰りが遅くなるの。え、ううん、そうじゃないけど、たまには一緒に晩ごはん食べたいかな、とか・・・、ううん、ごめん」
(電話を切る)
(力が抜けていくように)
女 なにを謝ってんだろう、私は。謝る理由なんてないはずなのに。心が、私の心、崩れてしまいそうだよ

一瞬、すべての音が消える。
女 私は白を拒絶する、あの黒い傘の女の子から逃げ出した。本当は・・・、本当は。道の向こう側、立っていたあの子。 私も道の向こう側へ行かなきゃと思った、しっかりと抱きしめてあげなきゃって思った、それなのに。私はおびえて立ちすくんだ。どうしておびえたんだ。そん なに今の生活にすがりたいのか。
父 「どうした、ぼぉっとして」
女 「ううん、なんでもない」
女 父さん仕方無さそうに笑った。
父 「まるで迷子だな。流され続けて、自分の道を見失い、立ち尽くしているようだ」
女 「なら、どうすればいいの、私」
父 「お前の真っすぐを行けばいい、それだけのことだ」
女 「真っすぐ走ったらすぐにぶつかってしまうよ」
女 父さん、いたずらっぽく笑みを浮かべた。
父 「人の体は七十パーセントが水ということだ。水というものは、動かなければ腐ってしまう。人も
な、動いて行く、変わっていく、そうしないと腐ってしまうぞ」
女 「私が腐りだしているっていいたいの」
父 「少なくとも気持ちはくさっているだろう」
女 「まっ、そうだけど」
父 「ぶつかっても、足を止めるな。走り続けていればそのうち何処かに行き着くし、案外、そこが
自分の行くべきところだったりするもんだ」
女 そういうと、父さん、豚の角煮を頬ばる。
父 「お前も食え、悩んだ時は食う。そうすれば頭へ回る血が胃腸へ流れて、悩まずに済むというものだ」

父 「俺は子供の頃から金科玉条、大切にしてきた言葉がある」
女 「理性に対して常に正直であれ。耳にたこができるほど聴かされた」
父 「それを忘れるな。心の真ん中に立てておけ」
女 「父さんはほんと、頑固な人間だな。母さんも苦労が絶えないだろうね」
父 「俺の石頭は」
女 「面倒なことに、末っ子の私が引き継いでしまった。子供の頃から姉さん羨ましく思っていたん
だ。私もあんなふうに自由に振舞うことができたらなぁって」
父 「あきらめろ、人の性分はかわらん」
女、少し笑う。
女 「自分の性格、納得しているよ、少しだけ気に入っている」
女 お茶をいただく。どうしてだろう、いろいろ悩むこともあったはずなのに、私、父さんと話してすっ
かり和んでいる。こんなに気持ちが落ち着いたの何年振りだろう。
父 「少し顔がやわらかくなったな」
女 「わ、私だって、色々あるんだよ、色々さ」
父 「そうだな。生きていれば色々ある」
女 父さん、仕方なそうにほんの少し笑みを浮かべる。こんな表情も、父さんするんだ。
女 「別にさ、子供が嫌いってわけじゃないんだ。ただ、今の私には無理だよ。なんていうかな、子供が居ることでたくさんの何かを得ることができるだろうと 思う。でも、きっと、失うもの、失わなきゃならないものがある、いまはそれがいとおしい。たまにね、姉貴の子供、世話するのはいいんだ。でも、それが自分 の子供でずうっと世話しなきゃって思うと不安になるんだ。足元がふらふらして倒れそうになるんだ」
父 「おまえは生真面目すぎるからな、その上、臆病だ。生真面目だけなら、まだ良かったんだがな」
(女、深く、溜息をつく)
女 「厳しいなぁ、父さんは。私、どうしたらいいんだろう」
(父、少し笑って)
父 「年老いた親にすがるんじゃない。まっすぐ行けばいい、勇気を持ってな。それだけだ」
女 「ね、父さんは悩みとか、ないの」
父 「ある」
女 「私のこと」
父 「ん」
(父親の声音を真似るように)
女 「上の二人はうまくいっているのに、末っ子はどうしようもないな。甘やかしすぎたか」
父 「まぁ、甘やかしすぎたのは違いないな。上の二人とは、年も離れていたからな。しかし、お前達がどう生きていくかは、お前達自身が悩むこと、俺が悩んでもしょうがないだろう」
女 「それじゃ、母さんのこと」
父 「朝から晩まで居なかった人間が、急に、一日中、目の前でぼぉっとしているわけだ。うっとおしくもなるだろうな」
女 「夫婦仲、うまくいってないの」
父 「いや、悪くはないだろう、良くもないがな。お互い、空気と喧嘩してもしょうがない、そう思っているだろうな」
女 「少なくとも父さんは母さんを空気と思っているわけだ」
父 「透けて見えるわけではないがな。まぁ、それでも悩みというほどのものではない。うまく言えないが・・・」
女 父さん、少し顔を傾げる、父さんは何かをしっかり見ようとすると、顔を傾げる、左右の視力がかなり違う所為だ。父さん、何を見ようとしているのだろう。
父 「年をとって、暇になると妙に子供の頃が甦ってくる、無性に子供の頃に戻りたくなる」
女 「子供に戻って人生をやりなおしたいとか」
父 「いや、子供の頃に戻りたいというのは正確じゃないな。子供の頃に見た風景、出会った情景、出会った人達に会いたい、そう思えて仕方がない。なんだか、取り残されてしまったような気がするのさ」
女 「父さんの叔父さんはまだ生きていたっけ」
父 「俺が子供の頃に出会った人達、その出会った頃のままに会いたいってことだ。人生の中で、少しずつ組み上げていったはずのジグソパズル、完成したつも りでいたのに、気づけば、虫食いしたように、あちらこちらのピースが落ちて何処かに行ってしまっている。それをなんとか、拾い集めたい、そんなことをな、 考えてしまう」
女 「私ほどの親孝行な娘でも、それは無理だ。私も年をとったらそんなふうに考えるのかな」
父 「さぁな、ただ、俺もこの先、それほど長く生きるわけじゃないが、なんとか生きていく。子供の世話にはならんよ。お前は自分を精一杯生きていけばい い、臆病でも、何が大切で、何が必要じゃないか、見極める目はあるはずだ。人生は思うより短いぞ。人は生まれた瞬間から死へと走り始めているのだからな」
(女、思い切ったように)
女 「あのね、訊いても良い」
父 「なんだ」
女 「ねぇ、父さんはどうだったの、いきなり子供が三人も出来てさ」
父 「自分以外は他人だ、親であろうと、女房であろうと、兄弟であろうと、子供であろうとな。だから、無理して家族を装おうとも思わなかった、ただ、一生 をかけた実験なのかも知れないとは考えた、俺達は家族だと思う、その思いの繋がりが、血の繋がりを越えることができるかどうかのな」
女 兄貴も姉も私も、父とは親子だけれど血は繋がっていない。母の連れ子だ。だから、父さんには血の繋がる人はもういない。
女 「実験は成功だったの」
父 「わからん」
女 「どうして」
父 「俺も当事者だ、外から観察も分析もできるわけじゃない、間抜けなことだな。ただ」
女 「ただ」
父 「良い娘と息子がいてくれて良かったと思っている。俺も歳食ったな、臆面もなくこんなことを言うとは」
女 私はこの目の前にいる人が自分の父親と素直に思うことができる。まだ、小さかったからだろうか、兄さんや姉さんはいまも 血の繋がる人と付き合いがある、私は絶対にあの人には会わない。多分、大切なのだ、目の前の、無骨で不器用で、真面目なだけが取柄の父さんが
女 「あのね、父さん。・・・あのね」

女 初めて、黒い傘の女の子のこと、・・・話をした。

(道路沿い、雨上がりの車の行き交う音)


女 父さんと二人、歩道に設えられたバス停のベンチに座る。 バスで帰るわけじゃない、ただ、父さん、ふいっと思いついたようにベンチに座ってしまったのだ、そして、車の行き交う夜の道を眺めている。
父 「子供の頃のことを、ひとつ、思い出した」
女 父さんが道を眺めたまま、呟いた。
父 「とても大切なことなのに、大人になると忘れてしまうことがたくさんある、そんなひとつだ」
女 どうしてだろう、一瞬、父さんが小学生くらいの少年に見えた気がした。
父 「理性において正直であれ、その言葉を忘れるなよ」
女 「え・・・」
父 「お前は命は大切だと言った。でも、日本の裏側、ブラジルの見知らぬ男の命は大切かどうかわからない」
女 「どうしたの、父さん」
父、小さく笑う。
父 「お前の大切なものが、例えば、鞄や指輪、お前にとってはとても大切なものであっても、父さんにとっては、特に大切なものではない、つまりは、その存在の大切さは、そのもの自体に存在するのではなく、関係性の上にあるものだ、それはわかるな」
女 「う、うん」
父 「でもな、命の大切さは違う。命の大切さは、それ自体に宿っているものだし、そうあるべきなんだ。だから、お前はブラジルの見知らぬ男の命も銀行強盗の命も、父さんや母さんの命もすべて大切だと言い切ることが本来であり、それがまたお前自身の命を大切にすることであり、その大切さを担保することなわけだ、しっかり覚えておけよ」
女 父さん、そういうと、ベンチの背もたれに背中を預け、目を瞑ってしまった。どうしたんだよ、父さん。幹線道路、目の前をヘッドライトを灯した車が何台 も行き交う。風が少し冷たい。父さん、帰ろうよ、暗いのは嫌だよ。ふと目の端に黒い影が見えた。傘、黒い傘だ。ぎゅっと父さんの手を握った。
父 「ん、来たか」
女 父さん、体を起こすと、ゆっくり振り向いた。
父 「後ろを見てみろ」
女 ゆっくりと振り返ってみる。黒い傘が目の前にあった。目深に傘を差していて上半身は見えないけれど、黒いスカートとその足元だけが見えた。
父 「選びなさい、この子を受け入れるか、拒絶するか。どちらを選ぼうとお前は俺の娘だ、それにかわりはない」
女 「父さんてば、わけがわからないよ。どうしたらいいの」
父 「この子に寄り添いたいか、拒絶したいか、それを選べばいいだけだ。拒絶すれば、この子は二度とお前の前には現れない。拒絶しなければ・・・、それは俺にもわからん」
女 どうしてだろう、恐怖や不安よりも、初めてこの子がいとおしく思えた。寂しくはないのだろうか、傘の影で泣いてはいないのかと思う。自然とベンチから立ち上がっていた。 黒い傘の女の子が不意に後ずさりし、背を向けると歩き出した。
父 「それもありか。さてと、歩くか」
女 黒い傘の女の子の後を追って歩く。幹線道路の歩道、橋の手前を折れて、土手を歩く。今度は、土手を離れて、細い路地。家灯かりが濡れたアスファルト道 路を鈍く照らす、赤ん坊のような猫の泣き声、意味の分からない人の言葉、まるで異国を歩いているようだ。一瞬、光が目に差し込む、繁華街、酔った男と女が 大声を上げる。横断歩道を渡り、向こう岸へと行く。確かに人の言葉だけれど、妙にくぐもって何を話しているのか分からない。
女 「お父さん」
女 父さんの手をぎゅっと握った。
父 「父さんに「お」が付くのは久しぶりだな」
女 「何処へ行くんだろう」
女 少し前を黒い傘の女の子が振り返らずに歩き続ける、何処まで
父 「わからんな、ただ、これは方違えだ」
女 「なんなの、それ」
父 「目的の場所へ真っすぐ行かずにあちらこちら方向を変えながら目的地へ向かっているんだ」
女 「どうして」
父 「それが目的地へたどり着く唯一の方法だからだろう」
女 いつの間にか、住宅街に出た。瀟洒な住宅街が続いている、でも、なんだか変だ
父 「変だな、そうか、街灯も窓明かりも、灯り一切がこの街にないんだ」
女 でも、なんだか赤い。夜の中に急に西日が入って来たみたいだ、そっと、後ろを振り返って
父 「後ろを見るな。お前では耐えられんだろう」
女 「お父さん、それって」
父 「珍しいところに来たということだ。角を曲がるぞ」
女 お父さん、ぎゅっと手を握って、少し駆け出す。黒い傘の女の子を追って、角の家の向こうを曲がった。
女 「女の子がいない、見失った。」
父 「ああ、そうだ。捜せということだ」
女 そう言って父さん、ポケットからボールペンを取り出した。
父 「歳を取るとな、物忘れがひどくなる、だから、いつも書くものを持っているというわけだ」
女 父さん、私にボールペンを手渡した。
父 「掌の上にそれを立ててみろ。そして倒れた方向へ向かえばいい」
女 「子供みたいだ」
父 「本当のまじないは得てしてそういうものだ。大人の了見、思案というものが、真実に霞をかけてしまう。ボールペンを摘む指の力加減、受ける掌の角度、それが行く道筋を教えてくれる」
女 本当に行きたいところ、本当に。私、やっぱり、あの子に会ってみたい、ううん、どうしても会わなきゃならない。どうしても・・・。左の掌を星の空に向ける、立てたボールペンは、これは羅針盤だ。私と父さんは、夜の海、二人、漂っている。ボールペンは左に倒れた
父 「左だな」
女 「うん」

女 随分歩いた。どれくらい、ボールペンを手のひらに、辻を曲がったろう。変だ、ほのかに赤い住宅街、朝が来ても良いくらい歩いたはずなのに。
女 「父さん」
父 「どうした」
女 「なんだか、変だよ。」
父 「あぁ、変だな。」
女 父さん、平気なふうに言う
女 「もう朝が来てもいいはずだよ」
女 「どうしてだろう、目が慣れたのかな、少し明るくなった気がする」
父 「上だ、空を見上げてみろ」
女 なんなんだ、空一面が赤く炎に燃えている
女 「空が、空が燃えているよ、空一面が炎に焼かれている」
女 父さんと私を空が紅く照らし出す。並ぶ家々も燃えるように赤く染まり、道路も赤く鈍色に輝いている。立ち止まってみる、雨の降った後か、アスファルト道路の窪みに溜まった水溜まりが紅く燃える空を鮮やかに映しだしている。
父 「つまりはな、向こうから来てくれる内に会っておけば簡単だったということだ」
女 「私、何がなんだかわからないよ」
父 「もう一度訊いておこう、お前はその黒い傘の女の子とやらにどうしても会いたいのか。会わずに済ませられないのか」
女 「会いたい、どうしても会いたい。なんだか、いとおしくて仕方がないんだ」
父 「仮に自分自身が死ぬようなことになっても、それでも会いたいか。会わなきゃならんのか。」
女 穏やかに言う父の声。私、睨むようにして答える
女 「どうしてかわからない、でも、どうしても会わなきゃならない。・・・死ぬのは嫌だけど」
女 父さん。ぎゅっと唇をかみしめて、おもむろに口を開いた。
父 「大きな願いを叶えようというなら、それにふさわしい代償が必要だ。昼と夜の狭間、お前は炎に燃えるあの空へと身を投げなければならん、落ちていかなければならない」
女 「空へ墜ちるって」
父 「道路の少し凹んだ水溜まりだ、水溜りが空を映しているだろう」
女 赤い水溜り覗き込む、確かに茜色の空だ、空そのものが紅蓮に燃えている。
女 お父さん、いくつかの茜色の水たまりを覗き込んで、一番大きい水たまりの前で足をとめた。
父 「これなら人が通ることができるな」
女 「お父さん」
父 「ん」
女 「黒い傘の女の子は」
父 「ここから空へと落ちて行ったんだろう。もうすぐ炎が燃え尽きてしまう。追うなら今のうちだ、闇に戻ってしまうと、黒い傘に阻まれて、あの子を見失ってしまうだろう」
女 「ここを通り過ぎればいいの」
父 「そうだ、だが、俺はここまでだ、お前が一人で行きなさい。行くか」
女 「行きます。なんか、変だね。あんなに怖がっていたのに、今は、気になって仕方がない、あの子のためならなんだってできる気がするんだ」
父 「まるで母親だな」
女 父さん、少し笑うと、水たまりの縁に腰を下ろし、あぐらをかいた。
父 「俺は星の一つになってここから見守っててやろう。どうしてもの時は俺のこれからのすべてを代償に、お前を引っ張り上げてやる。さぁ、行きなさい」
女 「お父さん、ありがとう。行きます」
女 茜色の水たまりへ飛び込んだ、地面が消えた。熱い、私の体が炎を噴き出して燃える・・・、燃える空と一つになる


(お昼過ぎ、時計の音。自宅)
女 あれ、目が覚めた、昼下がり、私、洗濯物を終えて、テーブルに座ったまま居眠りしていたんだ。居間のテーブル、食べかけのお煎餅の袋。テレビもついたままだ、そうだ、久しぶりの休日、思いっきり洗濯するぞって・・・ 違う、これは違う、本当じゃない
(ドアを開け放つ音、駆けだす)
女 ドアを開け、外に飛び出した
女1 「あら、どうしたの。そんな、慌てて」
女 隣の叔母さんだ
女1 「何処へいらっしゃるの」
女 「子供を、黒い傘を差した女の子を見ませんでしたか」
女1 「そんな子は捜さなくてもいいわ」
女 「えっ」
女 おばさん、いつもと変わらない笑顔を浮かべたまま、薄れるように消えてしまった。な、なんなんだ。とにかくあの子を探さなきゃ。早く、早く
男1 「おおぉい、どうしたんだい、そんな走って」
女 あれは、あれもそうだ、斜向かいのおじさん、定年退職、今時珍しく悠々自適のおじさんだ。
男1 「どうしたんだい、そんな慌てて」
女 「黒い傘を差した女の子を見ませんでしたか」
男1 「だめだ、捜さなくて良い、そうだ、かなえとお茶でもしていきなさい」
女 「急いでいますから、ごめんなさい」
女 えっ、ふうぅっと叔父さんの姿と後ろの風景が重なって消えた。どうして、人がそんなふうに消えるんだ、夢か、あたし、夢を見ているのか。何もかも夢なのか。
少年 「すべてはゆめまぼろし、巨人の見たほんの一時の夢、君の人生はその断章ですらないのさ」
女 少しひねくれた顔付きの男の子が私の前にいた。何処かで見たことがある、この顔。
少年 「お姉さんは真っ直ぐを知らない。だから、まっすぐの嫌いな奴らの言葉に惑わされる。右手を左の胸、心臓の上だよ、当ててご覧、心臓の鼓動わかるかい。」
女 「分かる、どくどくいってる」
少年 「それが、お姉さんの真っ直ぐだ、そうやって手を当てていれば惑わされないよ」
女 「君の顔、何処かで見たことがある。」
少年 「僕はお姉さんの顔を知らない、今はね。さぁ、もう時間がない、急いだ方がいいよ」
女 「うん、ありがとう、お父さん」
女 そうだ、父さんだ、写真で見たことがある、子供だった頃の父だ。少し手を上げて笑う男の子、君、いい男になるよ。走れ、私は臆病でひきょう者だ、もっと早く受け入れてあげれば、きっと、きっと。
女 まっすぐ、まっすぐだ、塀も家も擦り抜けて、ひたすら真っすぐ走る、真っすぐ走る
(心臓の鼓動、少しずつ早くなる。最後に鈴の音一つ)

女 茜色の水たまりは凪いだ夜の海に変わった、静かな海だ。満天の星空を海が映しだ し、なんだか、上下天地があやふやになるくらい明るい。足もとの海、きらきらと漣が無数の星明りをきらめかせている。陸が見えない、ひたすら夜の海のただ 中に、私は佇んでいる。私は死んだのか、海に沈むことなく浮いているなんて。両の掌を合わせてみる。ぶつかる、透けたりしない、少ししゃがんでみる。 水、確かに水の感触だ、少し冷たい、ひんやりしている。ん、誰かがいる、顔を上げた、あれは。思いきって声を掛けてみる。
女 「こんばんは」
女 ほんの少し先、黒い傘をさした女の子がいた
女「大きな傘だね、黒色の、お父さんの傘かな」
女 なに、つまんないこと言っているんだ、私は
少女 「ありがとう」
女 初めて、女の子の声を聴いた。やわらかい、でも、ほんの少し大人びた声だ
女 「ありがとう、もっと早く君に声をかけて、かけてなければならなかった、ごめんなさい」
少女 「ううん、声をかけてくれただけで嬉しい、だって、これはあたしの我が儘だから」
女 「どうしてか、わからないけれど、君にとても会いたかった。会わなきゃって思ったんだ」
少女 「それは多分」
女 「多分・・・」
少女 「あたしが会いたいと願ったから」
女 「君は誰、君の名前、教えて欲しい」
少女 「あたしには名前がない」
女 「その黒い傘を降ろして君の顔、見せて欲しい」
少女 「あたしには名前がない、だから、顔もないんだ」
女 「君は、まだ誰でもないってことなの」
女 女の子、肯いて。ううん、傘で顔が見えないくせに頷いたのがわかったんだ
(女、思い切って)
女 「君が自分のこと、誰でもないというなら、私が決めてあげる、君は私の娘だ」
少女 「いいの」
女 「いいよ、君は私の娘で、私は君の母親だ」
女 少女がゆっくりと黒い傘を降ろしていく。あどけない、でも少し緊張した少女の顔、唇をぎゅっと結んだその顔は私の子供の頃の姿だ。父さんに初めて会っ た時の顔だ。私、ゆっくりと女の子に近づき、そっと顔を寄せた。髪をなでる、女の子、少し戸惑ったように目を伏せた。そして、ゆっくりと、私の胸に顔をう ずめてく。
少女 「自分で選んだくせに、どうしようもなく心細くて、頼ってしまった、ごめんなさい」
女 「母親なんだもの。頼ってくれるのも楽しいんだ」
少女 「お母さんを苦しめてしまうことがわかっいたのに、本当にごめんなさい」
女 「謝ることないよ。さぁ、一緒に帰ろう、そして、一緒に暮らそう、私がお母さんだ。ね、一緒に帰ろう」
少女、囁くように。
少女 「ごめんなさい、最後の最後でとっても迷惑をかけてしまって」
父、不意に現れる。
(父、疲れ果てた様子で)
父 「年寄りにこの道行きはきついな」
女 「お父さん」
(父、哀しげに)
父 「やはりな。この子は流れを変えることを選んだ天の川の堰守、流れを自分たちの体で堰き止めて、違う道筋を与えるなどと、最悪な、そしてあまりにも純粋な選択をした子供たちだ」
女 「堰守って・・・」
父 「待っているつもりだったのだが、気になってやってきた、来て正解だったな」
女 お父さん、ほっと息をもらすと、座り込んで、女の子に哀しげな笑みを浮かべた。
父 「歳をとると、最近のことは思い出せないくせに、ついぞ、昔のことを思いだしてしまう。だから、君の切な思いも少しはわかる」
女 お父さん、ゆっくりと立ち上がった。
父 「聴きなさい。星占い、占星術。人の人生は星に導かれる、そして、星の川、天の川は、たくさんの人、つまり時代を導いていく。今の時代はすっかり狂っ てしまっている、勝手な理屈で人間同士が殺し合う。命の大切さが忘れ去られた時代だ。この時代の流れをなんとか本来に導かなければならないと、この子達は 考えたんだよ」
女 お父さん、ゆっくりと空へ指さした。
女 あ、満天の星空に、いくつもの、数え切れないほどたくさんの、黒い傘の子供達が空へと、空へと墜ちていく。本当に落ちていく。
父 あの子達は天の川に、その身を沈めて堰を作る。天の川がいつか溢れ、その流れが変わるように。本来の流れへと変わりますようにとな。そして、見るはずだった自分達の親や、生まれることを選んだ子供達が幸せに生きていけますようにと切に願うのだよ」

女 ゆっくりと、女の子の体が浮き上がりだした。
少女 「ありがとう、お母さん」
女 どうして、どうしてなんだ
父 「母親として、顔を上げて、しっかり見ておきなさい、この子の選んだ道は変えられないんだ」
女 「やだよ、お父さん」
(父、女に囁くように)
父 「顔を上げなさい、しっかりと見てやりなさい」
女 ぎゅっと、歯を食いしばって顔を上げた。空に落ちていくあの子、片手でそっと手を振ってくれた。
(女、叫ぶ)
女 「幸子(ゆきこ)、幸せな子供と書いて幸子。君の名前だ、幸子」
女 あたし、思いっきり手を振る、体いっぱい、手を振る。肩が千切れてもいい、狂ったように手を振る。幸子、黒い点になって、消えてしまった・・・。
女、呻くように。
女 「うわぁぁっ。幸子」
父 「右の手のひら、心臓の上に置きなさい。どくどくという音がわかるか」
女、息苦しそうに。
女 「うん、とっても大きく伝わってくる」
父 「あの子の笑顔、見えたか」
女 「うん、手も振ってくれたよ」
父 「そうか。親として名前も付けてやれたな」
女 「うん」
父 「大人の我儘や醜い思いで、世界は狂いだしている。それを、子供が、それも生まれる前の子供が、生まれることをやめにしてまでして、正していこうなんてな。どうにも情けない、大人は」
(女、呻くように)
女 幸子。見える、君が見えるよ。深い川の底、たくさんの子供たちが目を瞑り沈んでいる、傘を手放した幸子が膝を抱えて沈んで行く。ぎゅっと唇を引き締めて、眼を瞑り俯いている、幸子。
父 絶望するなよ。たった一人でも世界を変えることは出来る、諦めさえしなければな
女 え
父 世界が善い方向へと向かえば、あの子の、幸子の役目も終わるってことだ
(女、勢い込んで)
女 頑張る、何をどう頑張ればいいのか、まだわからないけど、でも頑張る

(雨の音、車の行き交う音)
女 バス停だ、夜のバス停、お父さんと二人座っていた。今までのことって・・・、あれは夢じゃない、本当のことだ、幸子を抱き締めた、この手のひらは幸子を忘れない
父 お前が幸子を忘れずに信じ続けてやれば、あの子はお前のことを思い続けることができる、笑みを浮かべていられる、わかったな
女 お父さん、黒い傘を私に手渡してくれた。頑張るよ、私。幸子と暮らせるように頑張る

終わり

 

Path: /cinario | Link Edit



2013年11月の日記

2013.11.30
お揚げのピザが食べたい。
2013.11.29
2013.11.27

国は国民をグローバル企業に捨て値で売り払ってしまったのかと思う。
そして、国が株式会社と化した、念のために書くと、国民はその社員ではない、商品だと思う。
そして、あらゆるものに値札をつけ、経済の言葉で語りだそうとしている。

民主主義という仕組みは、効率性も低いし、国のこれからも決めていこうという層にとっては、わずらわしいものであっただろう。
しかし、幾つもの戦争を超えて、とりあえずは民主主義が一番ましだと認識したはずだった、ただ、認識した世代が鬼籍に入る中で、また、一度、歴史を顧みない無謀な冒険者が力を持ち出したのだなと思う。

さて、どうして。この無謀な冒険者達を押しとどめることが出来なかったのか。

続きは後。

2013.11.23

パスワードがわからなくなったので、マウスで右クリック、「画像を保存」でパソコンに画像を保存し、それをブログに送ってください。

2013.11.18

Mさんからカワセミの写真をいただく。綺麗に撮れているなぁと驚く

2013.11.11

急に寒くなった、ストーブを出す。

2013.11.10

京都新聞より 2013.11.10

「知る権利軽視 発言
国家の安全に優先誤り TVの批判放送違反」

という記事を読む。恐ろしいことを言うなぁと驚きます。彼らが当然のことと発言していることに対して、私が恐れ危惧するのかというと、「国家・国」というモノは、国民を含む多数の眼で監視していないと、ろくなことはしない。このことを、この国の人達は昭和の始めに学習したはずだった。そして、それを上手く継承していかなければならなかったのだけれど、送り手、受け手、もしくは双方にそれを伝える、受け取る強い意志や勇気がなかったことで、実際の戦争体験、太平洋戦争時に成人だった人達が九十代となり、霧散霧消しつつあると私は考えています。
国や政治家は、国民の権利を、何故、反故にしようとするのでしょうか。
理由の一つにグローバル化、もしくは、国よりも企業の上位化があげられると思いますけど、それは、また、別のところで。
(政治家が何故、こういった発言を始めだしたのかは、立場主義にそって考えてみると面白いかなと思ったりもしますが)

2013.11.08

パブーという場所で、連載を始める。いつまで続くかはわからないけれど。
http://p.booklog.jp/book/78951

2013.11.04

おからを買う、一袋60円。

Path: /nikki | Link Edit



2013年10月の日記

2013.10.31

月末、
メモ おからを買いにいくこと、ざるを買うこと、大豆を収穫すること

2013.10.30

本を注文する、安房直子著 きつねの窓。

Path: /nikki | Link Edit



砂浪

砂浪

男性の朗読を想定して書いた小説です。

「砂浪」 


遙かな昔、砂の民族、砂の民と噂される人たちがいた。
いま、私は彼らの道を辿り、取り残された子供のように、この砂漠に立ちつくしている。
皮膚の焼ける感触、靴の底からも砂の熱さが伝わってくる。サングラス越しに空を見上げる。ほんの少しサングラスをずらせば。目に突き刺さるのはまさしくの青だ。
そうだ、青い空だ。あれは、学生時代の夏、暑い昼下がりのことだった。
蝉の声、油蝉の唸る音。木漏れ日の並木道を歩く。アカシアの薄い葉が日差しを緑に染める。歩きつづけ、古びた図書館、涼を求めるように私は埃っぽさとその薄暗がりの中へと入り込んでいった。
もともと、さして本を読む質ではない。いたずらに背表紙を眺めて廻る。
私にとって、微かに木の床がきしむ書架に囲まれたこの空間は、未知の世界に他ならない。
薄暗がりの所為だろうか、ひたすら奥へと続く本の背表紙、果てなく何処までも続いていく。一歩、足を踏み出す度に一つの世界を、一歩、足を踏み出す度に一つの歴史を私は通り過ぎていく。
声が・・・。
いったい何処からだろう、ほんの一瞬、子供達のはしゃぐ声が聞こえた、いや、こんな薄暗い図書館の・・・、暑さに疲れているのか・・・
少し座ろう・・・
何気なく、私は書架から一冊の本を抜き出し、机へと向かった。

ひたすらに続く砂漠、限りのない広がりだ。
砂漠は空の青の広がりを映し込む。砂漠は砂の空だ。私は空の中にいる。
何一つとして目印のない、建物があるわけでなく、オアシスが見えるわけでもない。でも、私は確信している。もう少し、もう少しで辿り着くことができるのだと。

手ぶらで机につくのもなんだかと、何気なく書架から抜きだした一冊の本。
これはシルクロード調査隊の残した記録だった。
ゆっくりとページを繰る指先が止まる。小さな写真だ。砂漠の風景が微分化され、小さな黒の点でこの本に移し込まれている。そして、この風景こそが、約束を・・・、この砂漠に私がやって来た理由となるものだった。
蜃気楼・・・、地平の彼方に揺らめく何かが見える。
揺らめく所為で、それがどんな姿を光が演じようとしているのか、わからない。無数の巨人達がやってくるようにも見えるし、また、遥かに望む巨大な建造物のようにも思える。
かの地では人はまだ住んでいるのだろうか。生活を、営みを続けているのだろうか。
遥かな昔、この地はこんな砂漠などではなかった。オアシスの、たゆとうたる湖、賑わう街があった。交易の要所として栄えた街だった。
立ち止まり、見知らぬ言葉を私は話している。不思議と意味が分かる。誰に話しかけているのだろう。私の横に誰かがいる。遠い記憶。やわらかな指先がそっと私の指を絡める。そして、ほんの少しの未来、ほんのささやかな希望を語り合う。誰と・・・。このやわらかな指先は誰だろう。とても儚くて哀しい。少しでも力を入れれば、この指先はふっと消えてしまうかもしれない。
声だ・・・、子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。何処から・・・。
風紋、風が砂漠に規則正しい模様を描く。
そうか・・・、少し日が傾きだした所為だ、風紋のグラデーションが際だち浮かび上がる、これは砂漠の年輪だ。何処までも何処までも続いている。
一つ一つの光と陰の連なりが、砂漠の見てきた、人の営みも、なにもかもを樹木の年輪のように、その陰に移し込んでいる。
子供の頃、不思議に思ったことがある。どんなに大切なことでも思い出せないことがある。どうして思い出せないのだろう、とっても、大切な約束なのに。そして、ある時、気がついた。思い出せないのは、きっと、記憶を落としてしまったからだと。落としてしまった記憶は陰に吸い込まれてしまう、でも、消えるのじゃない、陰の中にうずたかく蓄えられていくんだ。たくさんの記憶や、大切な思いがひっそりと蓄えられていく。
それなら、どうなんだろう。この光と陰のグラデーションを一歩、一歩、越えていけば、落としてしまった記憶たちが私を待っていてくれるのではないだろうか。
空の青が少しずつ薄れ、紫帯びた赤に変わる。頬に感じる風がほんの少し涼しくなった。今更に、なんて静かなんだろうと思う。音・・・、風の音と砂を踏む足音だけが、少なくとも私がこうして歩いていることを実感させてくれている。少し立ち止まって、空を見上げる。空はいつの間にか赤く赤く紅蓮に燃えている。複雑な炎の色だ。空が、空そのものが燃えているようだ。五十六億年後に現れるという弥勒菩薩の見る風景はこれと同じかもしれない。
視線を落とせば、砂漠一面が赤く染まっていた。砂一粒一粒が赤く色づいてる。砂漠は砂の空、ならば、私は夕暮れの空を歩いている。そうだ、遙かな昔、湖が消え、オアシスが消えて、街を失った砂の民もこの砂漠をさまよい歩いた。いったいどれほどの思いで住み慣れた地を離れ、この砂漠をさまよったのだろう。たくさんのものを失い、儚き未来の幸せだけをよりどころに歩きつづけたのだろう。
私は・・・、いったいどんな気持ちでいたのだろうか。
声だ・・・、一瞬、子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。どうしてだろう、不思議と懐かしい。とても、懐かしくて、懐かしくて仕方がない。とても大切な大切な記憶。歩くことで、落としてしまった記憶たちが私の元へと帰ってきてくれているのだろうか。
空は燃え尽き、虚空に白い月が浮かびあがる。風が緩やかになり、そして凪いでいく。月の明かりが砂漠を白く照らし出して。白い光に呼応して砂の一粒一粒が水晶の粉のように輝きだす。
ここまで歩いてきた。そして、たくさんのこと、無くしてしまっていた記憶を拾い上げてきた。
そうだ、ここだった。ここだったよね。気がつけば姿の見えぬ同伴者。私の横を歩いていた。月の明かりの、その中でその存在は確かな存在として蘇る。
立ち止まる、そうだったよ、ここだったんだ。
白く輝く砂の一粒一粒から蓄えられた記憶が光とともに浮かび上がる。
光がその速度を停止させ、靄のように漂う。
そして少しずつ光の靄は形を生み出していく。
人の生きていた街を生み出す、白い光のオアシスだ、光の湖が街を生み出していく。そうだ、白く輝く砂漠が、その輝きに湖へと生まれ変わろうとしているんだ。
声だ・・・、子供たちの声が聞こえる。
目の前で光の靄が子供たちの姿に生まれ変わる。遊び、鬼ごっこだろうか。光の子供たちが光の街を駆けめぐる。なんて、賑やかなんだ。
絡める指先、暖かい・・・
未来、いつの日か生まれ変わり、また、もう一度、君と出会おうと約束した。いま、その約束をしたときの君とこうして指を絡めている。
どうなんだろう、君はいま生まれ変わり、私を探してくれているのだろうか。これから私は君を探し見いだすことが出来るのだろうか。
月が沈み朝がくれば、また、私は独りだ。
そっと振り返り、光の君を見つめる。少し恥ずかしそうに笑みを浮かべる君。
これから君を探しに行くよ。

Path: /butai | Link Edit



ひとめふため

ひとめふため

以前、ネット上にて素人同士でオーディオドラマを作ろうという企画「おとつれせんプロジェクト」がございました。
その企画に提供したシナリオです。お話は童歌から始まります。

001 夜である。夜であることは会話からわかってもらうこと。列車の中である。
002 あけみ1 ひとめ
003 あけみ2 ふため
004 あけみ1と2 みやこし、よめご
005 あけみ2、ちいさくあくび。
006 あけみ1 あけみ。もう、遅いからさ。朝、ついたらね、起こしてあげる。
007 あけみ2 でも、一人で起きてるのって、あけみは寂しくないの
008 あけみ1 なんだ、あけみ。気遣ってくれているの
009 あけみ2 だって
010 あけみ1、少し笑って。
011 あけみ1 それじゃ、あけみ。もう少し、起きていてくれる。
012 あけみ2 うん、そうする
013
014 あけみ1 窓に映る自分の顔
015 あけみ2 え
016 あけみ1 夜はさ、あけみ。列車の中が明るくて、外が暗い。だから、窓に顔を近づけても、自分の顔しか見えない。
017 あけみ2 そうだね、でも、あけみ。ほら
018 あけみ1 どうしたの
019 あけみ2 すうぅっと顔をガラスに近づけてみて。ね、あけみ、鼻の頭がガラスにくっつくくらい
020 あけみ1 はは、あけみ、変な顔
021 あけみ2 でも、あけみ。でもさ、見える
022 あけみ1 何が見えるの、あけみ
023 あけみ2 黒い瞳の向こうに夜が見える
024 あけみ1 黒い穴二つ、外の風景が見える
025 あけみ2 あけみ、遠く外灯があるよ
026 あけみ1 白い光が流れていくね、あけみ
027 あけみ2 ね・・・、あけみ
028 あけみ1 どうしたの、あけみ
029 あけみ2 いつからかな。とっても、とっても、大事なこと、忘れている気がするんだ
030 あけみ1 大事なこと
031 あけみ2 うん
032 あけみ1 大事なこと・・・。そうだね。とっても大事なこと、忘れている気がして。でも、どうしても、それが、なにか思い出せない
033 あけみ2 あけみ、人が。窓の外に人がいるよ
034 あけみ1 人って、夜だよ。誰も外にいるはずないじゃない
035 あけみ2 でも、瞳の向こうに外の人たちが見える
036 あけみ1 外の人たちって、あけみ。この列車、走っているんだよ
037 あけみ2 でも、あけみ。いるんだ、何か叫んでいるよ
038 あけみ1 ほんとだ、見える。大声で叫んでいるみたいだ
039 あけみ2 泣いている人もいるよ
040 あけみ1 みんな、泣きながら叫んでいるんだ
041 あけみ1 なんて、なんて言っているんだろう
042 あけみ2 手招いてるよ、こっちに来いって叫んでいるんだよ。ね、降りよう、みんなのところに帰ろう
043 あけみ1 帰ろう・・・。え、帰るって、どういうこと・・・
あけみ2 ねぇ、帰ろうよ
あけみ1 そうだ、あたし。どうして、列車に乗っているんだ
あけみ2 早く帰ろう、帰ろうよ
あけみ1 帰る・・・、思い出した、あたし、ベッドに、病院のベットに寝ていたんだ

044 あけみ2 あけみ、窓を開けよう、力一杯開けよう
045 あけみ1 そうだ。開けよう。帰るんだ
046 窓をがたがたと。
047 あけみ2 開かない、開かないよ
048 あけみ1 どうしても、開かない
049 あけみ2 がたついているのに
050 あけみ1 思いっきり力を入れれば
051 あけみ2 開くのに、開くはずなのに
052 あけみ1 どうしても、開かない

053 あけみ2、力無く。

054 あけみ2 苦しいよ、息が出来ない
055 あけみ1 なんだか、息苦しい、水の中にいるみたいだ
056 あけみ2 あたし、もう、だめなのかなぁ
057 あけみ1 なにいってんだよ、あたし。大丈夫だよ
058 あぶくの音、次第に大きくなってくる。列車の走行音が、あぶくに変わる。

059 あけみ1 ね、あたし。目をつぶってじっとしていな。あたしがずっと起きていて、抱きしめていてあげる。だから、きっと、きっと朝が、いつもとかわらない朝が来るからね

060 あけみ1 ひとめ
061 あけみ2 ふため
062 あけみ12 みやこし、よめご・・・

063 次第に声が小さくなる。

064 あけみ1 いつやのむさし、ななやのやつし、ここのや、とおや

終わり

 

Path: /cinario | Link Edit



ないふ 流堰迷子

「ないふ 流堰迷子」

列車の中にて。
女一 帰りの電車の中、あたし、通路側。彼女、彼女だ、彼女は向かいの窓側。こう、なんていうの、二人用の座席が向かい合った列車の座席って、あぁ、なんていったっけ、あぁ、そんなことはどうでもいいんだ。
彼女、足を投げ出して気持ちよさそうに眠っている。無防備なほど気持ちよさそうに寝ている。
声を、声をかけてみようか。
で、でも・・・、ほんとは何事もなかったように、すっと立って席を替えればいいだけのことなんだ、あたしの中でもう一人のあたしが叫んでいる、逃げろ、逃げろって。
・・・透けているんだ、彼女の躰。透けて、座席が見えるんだ。
あたし、おかしくなったの。幻覚、幻影、勉強のしすぎ、ってわけない、わけない。えっ、あ・・・、そうだ、そうか、幽霊だ。彼女、幽霊なんだ。
え、あたし、どうして・・・。
本当にどうしてだろう、彼女の頬に手を触れていた。
冷たいけど、なんだか、気持ちいい。
そっと、彼女が目を開ける。口がにぃぃっと微笑んだ。
消えた・・・。あぁ、幽霊だ、昼間っから幽霊だ、春なのに幽霊だ。
逃げろ、逃げろ、逃げるんだ。

女二 なんだよぉ、人が気持ちよく寝ているのにさ

女一 あたしの耳元で声がした。うわっ、目の前に顔がぁ

女二 おおい、叫ぶなよ。恥ずかしいぜ。女の子が白昼の列車の中、一人、座席で大声あげたらさ、なにぃ、この娘(こ)、変なんじゃない、ってさ、白い目で見られてしまうぜ。ふふっ。
女1 彼女、あたしに顔を寄せて、あ・・・、口づけ、やわらかくて少し甘くて、あたし、あたし・・・
女2 大丈夫さ、数には入らないよ

女1 なんだか、足の力が抜けてしまって、あたし、座席にぺたんって座り込んでしまっている。何をどうすればいいんだ
女2 何処で降りるんだ
女1 叶意町(かないまち)、二つ先の駅です
女2 時間あるね、少し、お喋りしよう
女1 にぃぃぃって笑って、彼女、幽霊さんがあぐらをかく、長いスカートだから、あ、足。足はあるんだなぁ・・・
女2 あんた、名前は
女1 私、幸子です。
女2 どんな字書くの
女1 幸せな子
女2 親の願いが詰まった名前だ、いいね、そういう名前
女1 あの、貴方は
女2 覚えてないんだ
女1 それは死んだ、いえ、あの、お亡くなりになった時のショックで
女2 いや、死んだ時は名前を覚えていた。覚えていたんだという記憶はある。結局さ、あたし、いま、一人だからさ、名前を呼んでくれる人がいないんだよ。だから、どうしても思い出せない、思い出せず、何処に帰れば良いのかもわからずに漂っている。
女1 思い出せれば、成仏できるのでしょうか
女2 さてね、そもそもさ、成仏ってどういうことかわからないよ、やったことないからさ。ただ、自分が居るべき場所があって、なんっていうかな、いま迷子になってんだって焦りばかりがある
女1 幽霊さん、ちょっと笑った、でも、それはとっても哀しい笑顔だ。
女1 名前を思い出しましょう、そうすれば、必ず道が見つかります
女2 どうしたの、いきなり
女1 あ、え、いえ、あたし・・・
女2 でも、面白そうだ、駅に着くまで女の子の名前を出し合ってみよう、なんか、引っ掛かるかもしれない
女1 そうしましょう、きっと見つかりますっ
女1 あたし、どうしてだろう、ぎゅっと幽霊さんの手を握っていた。ひんやりとしてとっても冷たい、でも、不思議、優しいんだ

間、少しずつ大きく

女1 恵子、洋子、良子
女2 あかね、明美、幸江
女1 恵美子、裕子、礼子
女2 あ・・・
女1 気になるのありましたか
女2 そうだ、「子」が付いていた気がする
叶意町、到着のアナウンス、ドアが開く音。
女2 ありがと、なんだかさ、幸ちゃんとはまた会えるような気がする。いつか会える時までに、しっかり自分の名前を思い出しておくよ
女1 嫌です、思い出すまでお付き合いします
女2 え・・・

ドアの閉まる音、列車が遠ざかって行く。
女2 列車から降りることはできる、ただ、駅からは出られないんだ。多分、降りるはずの駅が何処かにあるんだろうって思っているんだけどね
女1 ごめんなさい
女2 はは、幸ちゃん、必死な顔していた
女1 なんだか、どうしても、このまま、別れるのが寂しくて
女2 出会いに偶然はない、すべては必然だと言い切ったっ奴がいた。多分、この出会いも必然なんだろう、左の手首出してみな
女1 え・・・
女1 おそるおそる差し出した
女2 手首のためらい傷、随分とあるね。痛かったろう
女1 はい
女2 でも、痛いと感じる自分がいることで、ほんの少しだけ、生きているって実感を得ることができる
女1 どうしてだろう、泣きそうになりながら、あたし、頷いている
女1 幽霊さん、髪を一本抜いた、そして、その髪をあたしの左手首に巻いてくれた。ひんやりして気持ちが良い
女2 護り髪だ、神様の神転じて髪の毛の髪。幸ちゃんの手首に溶け込んで、髪が災いから護ってくれるだろう。
女1 ありがとう・・・、ございます
女2 しかし、護り髪、どうして、こんなこと知ってんだろう。生きている時、あたしは呪い師か詐欺師だったのかも知れないな。
女1 幽霊さんはとてもいい人です
女2 わかんないぜ
女2、くすぐったそうに笑う。
女2 今日はありがとう、あたしも久しぶりに笑った。さて、幸ちゃん、もう帰りな、そろそろ暗くなる
女1 でも、名前を
女2 今はこれ以上思い出すのは無理だ。
女1 どうして
女2 なんとなくだけどわかってきた気がする。
女2 あたしがこうして彷徨っているのは、何かの役目か、自分の罪を滅するためのやり方なんだ。
女1 役目・・・、やり方
女2 こうして彷徨って、出会うべき必然を待つってことさ。出会い、相手になんらかの益を提供することで、あたしはあたしを、ほんの少しずつ取り戻して行く。気の長い話だ
女1 あたしとの出会いはもう済んだということなのでしょうか
女2 いや、始まったということ。この出会いであたしは少し変わった。幸ちゃんも少し変わった。成長という変化を始めた。手首を切らずに生きて行ける、そんな行き方を幸ちゃんは見つけなければならないし、見つけようとするだろう。いっとき、重なった道筋は、また、離れて行く、でも、それは始まりだ。出会うことで縁ができた、この縁はいずれ、あたしを幸ちゃんに会わせるだろう。その時を楽しみにしているよ
女1 はいっ
女2 泣いた子供がもう笑った
女1 子供じゃないですよ
女2は小さく笑う。
女1 幽霊さん、手を振ってくれた。あたしも、そっと手を振る。少しずつ、幽霊さんの姿が薄れていく。消えた・・・。
女1 寂しい、とても寂しい。でも、あたしは今までで一番元気だ。前へ進んでいくことが出来る。

おわり

 

Path: /cinario | Link Edit



普段着の文章

search

Yahoo! JAPAN

  • ウェブ全体を検索
  • このサイト内を検索


Page 5 / 12 :  « ‹ Prev 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Next › »

目次

RSS

最近の記事

説明
ちょっとした備忘録
2015.04
腰痛を避けるには
社会問題についてちょっとした意見を書いてみる
高浜再稼働差し止め 「司法の暴走」町に痛手 町長「私の責任で判断」- 産経ニュース を読んで思うこと
2015年4月の写真
特に書くほどのものでもないかしれないけれど
防衛省、背広組優位を転換 それは許すべきではない
病院のベッドでは寝てはならない
何故、人は他人を殺すのか
何故、イスラム国へと向かうのか
夕さん
テロと戦ってもろくなことにはならんと思う
世界一貧しい大統領"は言う「金持ちは政治家になってはいけない
宮尾節子の明日戦争がはじまる
稽古について
社会が不安定である以上は、自身で警戒するということ
1月28日
1月26日
12月29日
管理人として
1月24日
1月19日
1月21日
1月23日
一日雨
仕事始め
波脚について
最初に
2014年4月の日記
チェルノブイリと罪とか
他人の文章を題材に
なんにせよ、控えをとっとくのは
命の大切さについて。または、その周辺のこと
2014年4月2日の花
2014年3月の日記
2014年3月29日の花
2014年3月26日の花
2014年3月23日の花
2014年3月15日の花
2014年2月の日記
2014年1月の日記
2013年12月の日記
黒い傘
2013年11月の日記
2013年10月の日記
砂浪
ひとめふため
ないふ 流堰迷子
ないふ
結婚思案
海の卵
かがみ
霞は晴れて
色あせた教室
幻影悠華譚 15分版
幻影悠華譚
朗読劇 堰守物語
流紋物語 オーディオドラマ用シナリオ 2013年修正版
左右の入れ替え
杖術一本目、背中から下がる
形意拳の掌打
足の裏はほぼ水平に
位相差の解説
流水、天空について
サンドバック等を利用した
爪先の方向と膝のゆるみ
夕景の月
レナード現象には
人生後ろ向きの
確認
「点 殺意あり」読む
拒否できない日本
ぶっこわすのは
予想してなかったと言えば
均等に割るということ自体
ブログってのは
選挙近く
興味あること
軍事力では人を救うことは出来ない
薬物が若者にしのびよる を観る。
土下座はいけません。
毎日の
用事があり
雪柳的蹴り
衝動買いをする
歩けなくなる
鴨川にて
2006.10.8
2006.10.11
2006.10.10
推手
不安である
太極拳の動作など
シャドーのこと
間合いは一瞬で捕ること
攻撃性の純粋持続
向き合うと云うこと
初速
正座して素振りを
椅子から立ち上がる
足の裏全体を
超低式
素振り
型の本質は攻撃にあります
繋ぐと切る
纏糸掌について
回転掌
翻手掌について
足の裏のこと
直線的な動き
基本連環杖 追い突きから
基本連環杖 腰構え
基本連環杖 先の記事追加
杖の持ち方。
基本連環杖
基本連環杖2

April 2015 (7)
March 2015 (2)
February 2015 (8)
January 2015 (12)
June 2014 (1)
April 2014 (6)
March 2014 (5)
February 2014 (2)
January 2014 (1)
December 2013 (1)
November 2013 (1)
October 2013 (2)
August 2013 (12)
April 2007 (5)
January 2007 (53)



リンク