平成24年9月28日 定例会
平成23年度決算賛成討論
平成23年度決算賛成討論
相模原市議会議員 小 林 正 明
お久しぶりでございます、賛成討論するのは。(笑声)あるいは初めてかもしれません。御存じのとおり、決算の認定の原理原則は、議会議決に基づく予算の適正な執行にあり、その結果としての行政効果を確認するものであります。私自身、今までは行政効果上の疑義を強調する立場から、決算認定に反対してまいりましたけれども、予算の場面では行政効果に力点を置き、決算の場面では適正予算執行に力点を置くとの原理原則に立ち返り、決算特別委員会委員長報告のとおり、市民連合として、平成23年度決算の認定に賛成の立場から、評価や課題などに言及しながら、討論を行います。賛成討論にふなれなため(笑声)皆様方のお耳になじみなく、お聞き苦しい点もあるかと存じますけれども、しばし御清聴のほど、よろしくお願いいたします。
まず、評価についてであります。
公契約条例。平成23年度の施策の中でも、特に評価したいのは、公契約条例の整備です。全国で3番目、政令市として2番目に制定されました本市の公契約条例は、全国から注目を集め、視察や問い合わせが相次いでいると聞き及んでおります。公共事業などに従事する労働者の生活を守り、事業の質を確保する目的で、対象労働者に、いわゆるひとり親方を含めたことや、労働報酬下限額について生活保護基準の額を取り入れたこと、指定管理者の施設管理や業務委託に従事する者を対象にしたことなど、より適正な労働条件の確保を具体化するものとして、高く評価できます。条例は、ことし4月から施行されておりますけれども、今後も条例の実効化に向けて、チェック体制の強化や対象とする公共事業、業務委託の拡大等により取り組まれ、暮らし先進都市の道を着実に前進されるよう期待したいと思います。今後、条例の趣旨が生かされ、働く者の生活が保障できるような体制づくり、また、現在の3億円以上の契約を対象とする現行条例を川崎市などのように適宜見直され、2億円、1億円と対象金額を下げていかれるように見直しを求めていきたいと思います。
次に、線引きです。政令市関連として、都市計画上の課題といたしまして、旧津久井3町に係る線引きの課題があり、地元の皆さんの熱意と加山市長の英断で、現在は凍結状態にあります。他の政令市の動向の中で、政令改正に引き続き注視をされている加山市長の慎重な姿勢を評価するものであります。
次に、課題及び問題点について言及したいと思います。
まず、政令市の課題があります。政令市に関しては、市民負担を伴う市債発行によって収支の均衡が保たれていること、国直轄事業、国県道整備費は全て国が負担すべきであり、日赤償還金経費の負担には合理的理由がないことが政令市の課題であると認識しており、平成23年度決算においても、同様の認識であります。
次に、基地の問題です。23年度の基地問題を振り返りますと、基地返還運動の前進と基地の強化という2つの側面がありました。いわゆる評価する点と問題点です。在日米陸軍司令部のあるキャンプ座間では、長年問題でありましたゴルフボールの飛び出し、これが市民の活動や市の取り組みを受けて、米軍がゴルフ場のコース変更、レイアウトの見直しを行って、ボールの飛び出しがとまりました。やればできる、逆に、やらなければできないの見本であります。いろいろな事件や事故が起きないと、市民の安全確保のために動かない国や米軍の遅い対応は問題であります。もっと早く動けば、国や米軍が対応していれば、子供たちが、保育園児が安心して暮らせたのにと思うと残念に思います。
今、キャンプ座間では、基地の下を通るトンネル道路、市道新戸相武台の拡幅工事が、平成27年度の完成予定で、6カ年の継続事業で、平成23年度から本体工事に着手されました。まだ完成までは何年もかかりますけれども、市民の利便性確保のために、工事を早めることを要望したいと思います。
そして、キャンプ座間では、会派で何回も質問で取り上げましたけれども、ヘリコプターの騒音問題があります。キャンプ座間の北西部に所在するヘリポートを利用して、米陸軍ヘリコプターが訓練するだけではなく、厚木基地の米海軍ヘリコプターや横田基地の米空軍のヘリコプターが同ヘリポートを利用した訓練を行い、市民からの苦情が多数寄せられております。最も騒音被害を与えている主な原因が、米海軍のヘリコプターであることも判明しております。厚木基地等に対し、低空、旋回飛行の禁止など、騒音被害の解消、軽減をしっかり求めていただくことを要望いたします。
また、キャンプ座間では、第1軍団前方司令部が2007年12月19日に発足しましたが、カウンターパートナーである陸上自衛隊中央即応集団司令部の庁舎と隊舎の建設が始まっております。連携相手の米軍がわずか90名の前方司令部、そこに300名近い陸上自衛隊の司令部が来るわけであります。意味のない、自衛隊側も求めていないキャンプ座間への移駐に、きちんと反対すべきだと思います。何十億もの無駄な経費をかけないでほしいと、そのお金があれば、もっと救えるものがたくさんあるはずです。そうした声を防衛省にも届けてほしいと思います。
次に、相模総合補給廠です。昨年度は、補給廠の一部返還や共同使用に動きがたくさんありました。その点、市の取り組みとして評価をいたします。しかし、一方で、名前は任務指揮訓練センターと変えましたけれども、戦闘指揮訓練センターの完成があり、さらに現在は、訓練支援センターの建設が行われております。返還が決まった道路、鉄道用地部分の市民利用は、なかなか進まないわけであります。立派な道路が欲しいのではありません。市民が、歩行者が、自転車が通行できるような通路でもいいのです。宮下地区の住民の皆さんが通行できる道路の確保を早く実現してほしいと思います。一部返還が決まりました15ヘクタールの現在米軍住宅になっている用地の返還、有償返還を無償返還にさせる取り組みや、先日、横浜市が、小柴貯油施設の返還跡地を特例で国が無償で横浜市に国有地部分を返還すると報道されておりましたけれども、本市でもしっかりと国との交渉、市民のための基地跡地となるよう進めていただきたく要望します。
そして、厚木基地の騒音問題です。厚木基地の騒音、爆音被害が、ますます、すごくなっています。何としても声を大きくして、騒音被害解消に向け取り組むよう、要望いたします。
次に、市民の生活を守る安心、安全を確保する施策の充実について求めます。先日発表になりました23年度の市民の自殺統計を見ると、昨年度、市民の自殺者が、10万人当たりの自殺率を超えてしまいました。さらに生活保護受給者もふえ、現在では211万人に全国では達しております。市民の貧困化も同時に進んでおります。市としての対策、雇用の確保を含め、取り組みを求めたいと思います。
次に、原発事故と、それに続く放射能被害対策の充実です。自然エネルギー、再生可能エネルギーの確保についても、昨年の東日本大震災と東電福島原発事故が原点です。市としての取り組み、きちんと取り組んでいくよう求めます。日本は地震列島、しかも地震活動期に現在あり、浜岡原発が爆発するようなことがあれば、首都圏は壊滅状態になるとの指摘もあります。
次に、教育費について述べたいと思います。本市の目的別歳出構成を見ますと、全歳出に対する、ここ10年間の教育費の割合は、2002年度の13.3%から、03から04年度が11%台、05年から09年度が10%台となり、政令市に移行した10年度が8.2%、今、11年度決算で8.1%と縮減し、10年度からは、当初予算額において200億円を割り込んでおります。このように教育予算の厳しい運営が続く中で、本市教育行政において、課題はさまざまあるものの、基本的には、これまでのさがみはら教育が維持、推進されるとともに、政令市移行に伴う変革の過程にあって、今後の確かな展望を切り開く局面に置かれ、諸課題に真正面から取り組んでいく必要があると認識しております。その視点から、例示的に若干の問題提起を行います。
教育委員会のあり方が問われている折、平成23年度から、教育委員の報酬の位置づけが変更されました。非常勤の職であり、全教育委員同一とはならないとしても、合議制のあり方といたしまして、委員の活動の位置づけや具体的な内容は、常に検証されなければなりません。教育委員会の活性化に向けて、市民理解を一層広げていく必要があります。平成23年度の教育委員会の点検、評価では、教育振興計画の進捗を確かめながら、1年間の成果と課題が示されております。学校教育への成果数値を見ますと、児童生徒へのアンケートで、学校が楽しいと感じる指標は、計画開始時の平成20年が90%でありましたけれども、平成22年度が87.9%、平成23年度が89.9%、授業がわかりやすいと感じる指標では、平成20年度の80.5%から、平成22年度、23年度とも79.1%と推移しております。いわゆる楽しい学校、わかる授業は、学校教育の基本目標です。教育行政の取り組みを検証しながら、学校現場へもしっかりとフィードバックし、教育の向上に向けた施策、支援を充実する必要があると思います。いじめ、不登校、学ぶ意欲の衰退、非社会的行動、子供の貧困、格差、そして学校の多忙化などなど、現場が抱える今日的な課題解決に向けては、行き届いた、きめ細やかに対応するためには、人的環境の整備が絶対的に必要であります。
支援教育学習指導補助員や少人数指導等支援員、青少年教育カウンセラーなどの人的配置につきましては、これまでの水準が維持され、さらに、スクールソーシャルワーカーも導入されました。このことは、厳しい財政状況の中で、発達障害を初めとする子供たち一人一人の個性やニーズに対応する教育指導を重視したものとして、評価したいと思います。しかし、少人数指導の拡充など、先進市に学ぶ課題は少なくはありません。例えば、他の政令市の例として、京都市は独自に小1、2年生で35人、中3で30人の学級編制を行い、広島市も独自に、中1まで35人学級を実施しております。ほかにも国の措置を超えて、独自の少人数学級の取り組みをしている政令市は、県内の川崎市を含め、15市に及んでおります。近隣市にも、独自の対応、実施を図る例があります。いずれも、その市の教育を向上させる力、魅力になっております。本市においても、学校現場が子供の確かな学びと成長を実現する場として、教職員が健康に働き、一人一人の子供に丁寧にゆっくりと向き合う、豊かな教育実践の場として確立する教育環境の整備、充実を強く求めたいと思います。
平成23年度の特筆する取り組みとして、中学校完全給食推進事業があります。対象地域の生徒、保護者の希望による弁当併用デリバリー方式の中学校給食が完全実施となり、この間の諸準備の労を評価したいと思います。しかし、多額の初期投資、運営コストのかかった大事業として、また、食育や指導の一貫性から見て、60%に満たない利用率のままでいいとは決して言えません。生徒や保護者にも、メニューや量、事前注文のシステム等、手数料などに、さまざまな要望意見があるとも聞いております。利用者の拡大に向け、現場の声を聞き、一つ一つ解決、改善を図られるよう要望いたします。
昨年は3.11大震災に続く福島第一原発の事故があり、放射能汚染への対応が大きな問題になりました。行政も学校も手探りの状態から、子供の安全、健康のため、全力で取り組まれたことを、特にさまざまな不安情報が錯綜する中、学校における安心、安全と授業など教育活動の優先確保に向け、学校現場に連携し、前面に立って保護者対応を行われ、空間線量や給食食材の放射能調査などに取り組まれたことを評価いたします。放射能の問題は、わからないことも多く、学者間の説明にも開きがあります。しかし、個々の不安や疑問に真摯にこたえ、不安を少しでも除去するために、可能なことはしっかりと取り組まれることが重要です。今後も、いわゆる放射能汚染の問題に適切に対応されるよう要望いたします。
また、3.11の大震災に関連して、子供の安全と学校防災の観点から、学校安全の手引地震編の改訂を行われ、学校BCPも含めた新たな指導指針を構築されたことも評価できる取り組みです。
学校教育以外で、1点だけ、図書費について言及します。教育委員会の点検、評価を見ますと、市民1人当たりの図書貸し出し冊数は、09年度の4.8冊に対しまして、11年度4.3冊と減少し、振興計画の目標数値5.3冊にかなりの開きがあります。図書館利用者数も減少しております。そうした中で、図書館資料充実経費を見ますと、平成21年度の1億1,183万円に対して、平成23年度は6,072万円、平成24年度の予算では5,371万円と縮減の一途でありまして、類似政令市などと比較しても半分以下、図書予算は全く冷え切っています。このため、図書購入冊数で見ますと、平成21年度の4万7,585冊に対しまして、平成24年度は2万9,200冊と、そのような半減に近い数となっています。図書館における資料充実度は、市民の図書館ニーズの満足度に直結しますから、図書館利用者数あるいは貸し出し冊数の減少につながっているのではないかと思います。これでは、本市総合計画の基本目標である、学びあい 人と地域をはぐくむ教育・文化都市の実現が図られるものかどうか、一律のマイナスシーリングという予算編成の問題点を含め、具体的な改善方策を強く求めるところであります。
以上、残された課題は数多くありますけれども、例示的に若干の問題提起を行いました。厳しい財政状況が続く中でありますけれども、市長におかれても、人が財産の理念のもとに、教育予算を一層充実され、相模原の魅力ある教育施策を支援、構築されるよう、重ねて要望いたします。
まとめに入ります。
山路を登りながら「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」「住みにくいところをどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。」という草枕の冒頭で考えたのは、夏目金之助こと夏目漱石です。住みにくいところ、つかの間の命をつかの間でも住みよくすることが議員という天職、使命と肝に銘じながら、平成23年度決算に対する賛成討論といたします。以上であります。