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平成24年3月26日 定例会

一般会計予算反対討論



一般会計予算反対討論

相模原市議会議員 小 林 正 明


議長の許しをいただきましたので、議案第1号平成24年度相模原市一般会計予算に反対し、また、組みかえ修正動議を提案している市民連合の立場から、県債償還金負担と債務負担行為を中心に討論を行いますので、しばし御清聴をよろしくお願いいたします。

 討論の柱は、1、青本と政令市の財政問題、2、県債償還金の負担問題、3、債務負担行為と議会の議決、4、県債償還金と債務負担行為に対する市の論理、5、市の論理に対する反論、6、基地問題、7、教育問題、8、まとめの8本の柱で討論を構成いたしました。

 まず、第1番目の青本と政令市の財政問題に入ります。

 市長と議員諸兄との認識の距離を可能な限りなくし、でき得ることならば共通の認識に至りたく、市長と議長が署名されました青本を参照しながら、あす、学習会に使用される青本に沿って、青本の用語を借用して、青本の立場から議論をいたします。

 ここで、聞きなれない言葉、議員の皆さんには御存じの略称でありますけれども、いわゆる青本について、御紹介をしたいと思います。ここに実物があります。青本というのは、色が青いから青本というふうに通称されたものだろうというふうに推察をしております。正式名称は、大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望、毎年度、国に対して政令指定都市が提出している、国に対する政令市の財源の不足を補うための要望書であります。

 この青本の12ページから13ページには、政令市の市民は行政サービスを政令市から受益しているのに、県民税は県に今までどおり納付し続けるから、受益と負担にねじれが発生していることを指摘し、その結果、政令市移譲事務に係る税制上の措置不足額が生じているとあります。

 平成23年度予算に基づく概算では、移譲事務経費は3,538億円となり、これに対する税制上の措置額は1,406億円、結局、税制上の措置不足額が差し引きで何と2,132億円にもなることを、私ではなく、市長と議長が指摘されています。

 青本の15ページから16ページには、国と地方の役割分担を見直し、国直轄事業負担金の早期廃止を国に求められていますが、もちろん、私も同感です。

 青本の31ページから32ページには、指定都市の実態の概要の中で、政令市の財政状況として、1、政令市特例事務に係る税制上の措置不足、2、多額の起債が必要、3、税の配分の問題など、税財政制度が確立していないから政令市に合った税財政制度の構築が必要と、私ではなく、市長と議長が指摘されています。

 青本の40ページから43ページには、厳しい政令市の財政状況として、1、スケールメリットを上回る財政需要がある、2、税収の割合が低く、多額の起債が必要になる、3、税制上の措置不足から、一般財源からの持ち出しとなっている、4、50万以上の政令市以外の市に比べて、政令市では財政状況が悪化している実態を、経常収支比率、実質公債費比率、人口1人当たりの地方債現在高について、図表を示して、私ではなく、市長と議長が明瞭に説明されております。

 市長と議長が署名されました青本によりますと、政令市の財政の実態は、1、移譲事務の経費が税制措置されない、2、多額の起債の発生や一般会計からの持ち出し、3、スケールメリットもない、4、50万以上の政令市以外の市に比べると、経常収支比率も悪化、実質公債費比率や人口1人当たりの地方債残高は約3倍から4倍にもなることを、私ではなく、市長や議長は青本の中で認められております。

 まさに、一言で言えば、財政面に関して言えば、政令市にはメリットがなく、デメリットがあると、私ではなく、市長と議長が言っておられます。もちろん、政令市の財政問題に関しては、私も同感であり、市長と同一認識に立てたことは光栄至極であります。

 思い出してもみてください。市長は政令市移行の際、議会や市民説明会で、青本のとおり説明されたことは1回もなく、青本の内容とは真逆に説明されました。私は、国から自治体に事務移譲を行う場合は、財源保障が伴わなければならないとする考え方、いわゆる事務移譲、いわゆる事務仕事と財源の対応関係の一致、すなわち、連結性の原理がドイツ連邦の憲法では保障されていますけれども、日本には連結性の原理がない、不十分であることを指摘しておりました。だからこそ、政令市は大都市の税財政制度の確立を国に長年要望しており、政令市は慢性的、深刻な財源不足であり、それは公知の事実であり、政令市には豊かな財源保障がないことを私は指摘していたのです。

 市長は明らかに市民説明会で青本とは真逆の説明、矛盾した説明をされたのですから、市長は青本に署名した青本の立場で市民説明会を再度開催し、政令市には財政的メリットがないことを、青本の図表を使用して、わかりやすく市民に説明する必要、否、義務があると思います。

 私は、今思っています。今さらのこととはいえ、この青本の中にある悲惨な事実こそ、市民が政令市移行に関して最も知りたかった情報ではなかったのかと。そして、加山市長がこの青本に初めて署名された際に、市民説明会との相違に関して、いかに心の整理をされたのかと。

 次に、第2番目の県債償還金の負担についてです。

 平成20年11月18日締結の相模原市の政令指定都市移行に係る事務移譲等に関する基本協定書では、平成15年度分から7年間分の国県道に係る県債償還金の負担をすることを決め、このたび、その額が199億円と確定いたしました。しかし、この協定は、執行機関である県知事と市長の判断に基づくものであり、締結したといえども、協定締結の当事者である市長のみを拘束するものであります。少なくとも、提案されている債務負担行為が議決されなければであります。

 確かに、平成20年12月の暁の議会では、政令市実現に関する意見書が採択されましたが、その内容は、首都圏南西部の広域交流拠点都市としてさらなる発展が期待され、自律的先進的な都市の総合力を高め、一層の発展を目指すために、政令市になることが市民の強い願いであり、国及び県に対して、政令市の指定を強く要望することを決議したものです。ですから、県債償還金についての議論は当時確かにありましたけれども、意見書自体は、県債償還金の負担を容認する議決ではありませんでした。県債償還金の負担は、合併特例政令市に特有の法的根拠のない負担であり、その負担の方法や範囲など、定められたルールなき負担、市民負担であります。しかも、法的根拠がないばかりでなく、地方財政法の負担転嫁の禁止に違反しています。

 そこで、地方財政法に言及いたします。地方財政法の第1条目的に、「この法律は、地方公共団体の財政(以下地方財政という。)の運営、国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め、もつて地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資することを目的とする。」というのであります。

 次に、第2条地方財政運営の基本に、「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。」そして第2項には、「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」とあります。

 そして、第4条の5、割当的寄附金の禁止には、「国は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金を割り当てて強制的に徴収するようなことをしてはならない。」とあります。

 また、第27条の2都道府県が市町村に負担させてはならない経費に、「都道府県は、国又は都道府県が実施し、国及び都道府県がその経費を負担する道路、河川、砂防、港湾及び海岸に係る土木施設についての大規模かつ広域にわたる事業で政令で定めるものに要する経費で都道府県が負担すべきものとされているものの全部又は一部を市町村に負担させてはならない。」とあります。

 そして、地方財政法第2条第2項で、国の地方公共団体に対する負担転嫁の禁止、そして、地財法第27条の2で、都道府県の市町村に対する負担転嫁の禁止、そして、地方財政法第27条の3及び第27条の4で、住民に対する負担転嫁の禁止が厳格に定められております。

 以上、るる紹介いたしましたが、財政秩序の確立を期すためには、負担転嫁が行われないことが必須の要件であります。そして、国県道に係る県債償還金は、都道府県が負担すべきものとされているものであり、全部または一部を市町村に負担させてはならない経費であることは明々白々であります。

 次に、3つ目の柱、債務負担行為と議会の議決についてであります。

 県債償還金の債務負担行為を議会が議決することは、法的根拠もない協定と地財法違反を議会が公然と容認することです。まさに、県の負担を市民に転嫁する決議であり、議決されれば、予算上は義務費に計上されることになります。今後、県債償還金の負担を不当と考える市長が誕生した際には、県債償還金負担拒否の政策を議会が封殺することになりかねません。

 次に、4番目、県債償還金と債務負担行為についてに関する市の論理についてです。

 市は、1、権限移譲と財源の移転に対応するための措置だから容認される、2、県と市の協議による合意で、県が請求した負担ではないから容認される、3、地方自治法第214条債務負担行為を根拠に、債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めなければならないと答弁しています。

 そこで、5番目に、市の論理に対する反論をいたします。

 1点目の権限移譲と財源の移転に関する対応措置を理由に、県債償還金を正当化することに対する反論です。具体的に言いますと、平成24年度予算では、歳入、これは県税交付金足す国庫支出金は54億円、そして歳出は、国直轄事業負担金と国県道整備費と維持管理費が119億円、差し引きいたしますと65億円の不足であり、平成22年度の決算では、歳入が47億円、そして、歳出が同様の計算いたしますと91億円、44億円の不足でした。平成24年度の予算、そして、ただいま紹介しました平成22年度の決算からも、権限移譲事務に対する財源の移譲措置としては、明確に不十分、不足であります。したがって、市の説明するように、権限移譲と財源の移転に対応する措置を理由に、県債償還金の負担を正当化することはできません。

 2点目の協議による合意、県が請求していないから正当化されるということに対する反論でありますけれども、地方財政法から財政秩序の確立を期すためには、負担転嫁が行われないことが必須の要件であります。たとえ県知事と市長の合意や協議であっても、県からの請求がたとえなくても、地財法の負担転嫁の禁止の趣旨は維持されるべきであり、市の主張には正当性はありません。

 3点目の地方自治法第214条を根拠にする市の正当化に対する反論でありますけれども、債務負担行為の内容である県債償還金負担そのものが地財法に抵触しなければ格別、法律違反を容認しない立場からは、法的根拠もなく、しかも、地方財政法違反である県債償還金に係る債務負担行為を認めることはできません。

 次に、6番目の基地問題についてであります。

 沖縄普天間基地移設問題で、米軍再編の行方が取りざたされていますけれども、米軍再編交付金が増額されている本予算案からわかりますように、本市の基地では、第1軍団前方司令部や自衛隊中央即応司令部の移駐などが進行しています。

 相模総合補給廠では、その一部、17ヘクタールの返還が合意されているものの、任務指揮訓練センターが着工され、新たに訓練支援センターの建設も明らかになりました。そして、米軍戦闘機やヘリコプターの騒音被害も増大し、学校行事やスポーツ活動への支障も深刻です。また、米軍用機からの部品落下などが頻発し、市民の安全、安心は危殆に瀕しています。

 基地の存在は、財政的損失だけではなく、計画的なまちづくりの阻害要因となり、市民に耐えがたい負担を強いております。基地の強化、恒久化の動向には、厳しく対処しなければなりません。故小川前市長が言われました、たとえ戦車にひかれても基地の強化には反対するという断固たる姿勢を市民にはっきり見える形で示し、基地の縮小、撤去の取り組みを進めるよう、強く市に対して求めていきたいと思います。

 次に、教育費についても、若干の討論を行います。

 厳しい財政運営が続く中で、教育費においても、苦心に苦心を重ねて、創意工夫を図った予算編成が行われましたこと、その労苦について、まずは評価をしつつ、学校教育関係予算に絞って、意見を述べたいと思います。

 1点目です。学校教育環境の整備については、国の動向を見据えながら、特定財源を確保し、直接には23年度予算を大きく補正する形で、校舎改造、トイレ整備、給食室整備、中学校武道場整備などの予算編成を行われ、前期実施計画における24年度事業推進を担保されたことについて、また、そこににじんでいる子供たちの教育環境をよりよくしたいとの教育委員会の思いを含めて、一定の評価をしたいと思います。

 しかし、今後の実施計画を順調に進捗させても、大規模改修の実施が校舎の耐用年数の時期に重なることさえ予想されます。地震災害時などの避難所対策、子供たちの日々の生活の安全対策として、学校非構造部材の耐震化も課題に挙がっています。子供たちの確かな学びと豊かな成長を目指す、より安全、快適な学習環境を実現するため、一層の取り組みを求めたいと思います。

 2点目です。支援教育学習指導補助員や少人数指導等支援員、青少年教育カウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの人的配置については、これまでの水準が維持されました。このことは、厳しい財政状況の中で、発達障害を初めとする子供たち一人一人の個性やニーズに対応する教育指導を重視したものとして、これも評価したいと思います。

 いじめ、不登校、学ぶ意欲の衰退、非社会的行動、子供の貧困、格差そして、学校の多忙化などなど、現場が抱える今日的な課題解決に向けては、行き届いた、きめ細かな指導を実現する人的環境の整備が絶対的に必要だと思います。学校現場が子供の確かな学びと成長を実現する場として、教職員が健康に働き、一人一人の子供に丁寧にゆっくり向き合う、豊かな教育実践の場として確立されるために、さらに一層、教育環境の整備、充実が推進されますよう、強く求めたいと思います。

 1点だけ、細かく指摘させていただきますけれども、図書整理員経費が少額とはいえ減額され、学校配置日数が縮減されております。公契約条例を踏まえて、時間賃金を増額する一方、労働日数を削減するとしたら、本市が全国に発信した公契約条例の理念にもとります。図書館教育の充実のために大切な役割を果たす図書整理員の位置づけの重要性も踏まえ、再考、善処する必要があると思います。

 3点目です。政令指定都市に移行し、本市は、いよいよ教職員の単独採用試験に取り組まれます。本市が教育面における政令指定都市移行の最大メリットに挙げてきた施策です。すぐれた教育人材を確保するために、相模原教育の目に見える魅力、優位性を具体的に全国に発信するなど、万全を尽くしていく必要があります。その中で、定数の欠員状況の解消にも取り組まれてほしいと思います。また、相模原教育の充実のためには、優秀な人材の採用と同時に、相模原教育を担う教員として成長し、本市に定着して活躍してもらうことが重要です。子供たちや同僚教職員とともに学び、成長していくことを可能とする学校文化、教育環境の充実は不可欠です。そのための細かな支援方策を独自採用にあわせて、具体的に推進されるように求めたいと思います。

 最後に、その他の事項について、まとめて述べます。

 今、子供たちは、福島原発事故による深刻な放射能汚染の問題に直面しています。これから何十年と、この問題に向き合っていかなければなりません。これまでも地域環境や給食食材などに対する安全チェックなど、誠実、丁寧に取り組まれていることを評価させていただき、今後も放射能汚染の問題に適切に対応され、子供たちの安全、健康と保護者の安心を確保されるように求めたいと思います。改訂した学校安全の手引による学校防災教育の推進や、災害時対応の備蓄品整備など、学校防災体制の充実が図られていることを評価します。より具体的、実践的検証を進め、さらに拡充していく必要があると考えます。

 デリバリー方式による中学校給食も、対象地域で完全実施となり、今後は利用率の向上など、施策効果を一層高める必要があります。そのための学校やPTAとも連携した周知、宣伝などを推進すべきだと考えます。給食費の公会計化の検討を含め、学校給食の望ましいあり方を求めて、積極的に取り組まれることを期待いたします。

 新学習指導要領が、小学校に続いて中学校でも完全実施になります。移行措置の取り組みなど、そのための準備を重ねてきた学校現場と教育委員会の労を多としたいと思います。しかし、国の施策の不全もあって、課題は少なくありませんし、授業時間増加の対応、子供と教職員のゆとりある授業環境、柔道など武道必修化における安全確保などなどの課題にも、積極、果敢に取り組む必要があると思います。

 以上、学校教育の予算の主要な課題に絞って、管見を述べました。

 教育長が常々述べられていますように、教育は未来の社会づくり、人づくりであり、人が財産の理念のもとに、どの子供にも、知、徳、体の調和のとれた生きる力を育成しなければなりません。厳しい経済状況、社会状況の中にあっては、すべてのニーズを満たす予算編成は困難だったと思いますが、今後も引き続き、強い信念と責任感を持って、相模原教育を推進されるよう期待させていただきます。

 まとめに入ります。

 基地や教育については、ともに取り組む課題として、認識と若干の指摘をさせていただきました。

 青本により、政令市には財政上のメリットはなく、デメリットでしかなく、そういう政令市の財政状況は厳しいことが共通の認識となりました。厳しい財政状況下、そもそも県債償還金については、先ほどるる述べておりますとおり、負担すべき法的根拠がなく、むしろ地財法に抵触するものであり、違法な負担を合法化する債務負担行為を含む予算には賛同できないことを表明して、ここでの討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。



相模原市議会議員 小林正明 Mail:masaaki@kuh.biglobe.ne.jp 相模原市緑区町屋4-16-9 TEL:042-782-5969