平成21年3月25日
市有林処分反対討論
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市有林処分反対討論
相模原市議会議員 小 林 正 明
小川工業に莫大利益!
利権劇場の役者は誰!
1番小林であります。
私は、今回上程されております議案第33号不動産の処分に反対の立場から、討論を行います。
今回の市有林の処分については、旧市の議員の皆様には、旧城山町時代の経過などを十分ご理解頂くことが何より重要であります。
そこで、心ならずも「短くもある長い」討論になることをご理解下さるようにお願い致します。
今回の討論は、第1「基準論と旧城山時代」、第2「代替論」、第3「利権論」、第4「責任論」、第5「まとめ」の以上5本の柱を中心に討論を構成しております。
それでは早速、第1の柱「基準論と旧城山時代」に入りますが、この中では、(1)基準とは何か、(2)基準の価値・果たした役割、(3)平成14年当時の小川工業の願望と動向、(4)平成15年当時の議会での議論、(5)局所的取扱基準を理由とする基準の廃止(論)の欺瞞性に触れていく予定であります。
T 基準論と旧城山時代
(1)基準について
@経過と目的
城山を除く旧3町・旧市の議員の皆様には、馴染みのない「基準」は、旧城山町のみに存在した「山林等の開発行為取扱基準」の略称であります。
この基準は、故中島秀昭町長が、城山町総合計画審議会の諮問を経て、業者からの開発申し出を断りやすくし、総合計画の定める自然保全及び災害の未然防止を図ることを目的に、昭和51年8月1日から施行されたものです。
この基準の内容は、@新規の山砂利等の開発行為やA既に県の許可を得ている開発でも拡張を原則として認めず、開発行為の特例として@公益上の利用や住民福祉の為に必要で、且総合計画審議会の議を経た場合やA区域の拡張のない防災上の必要性がある場合等は、例外として開発が認められるものであります。
前町長の小磯氏から町政を引き継いだ中島町長が、故郷の原風景を破壊する山林開発をこれ以上認めず、「水と緑」を基調とする城山の方向性を示したのであります。
A法的背景
山林開発の許可権者は、森林法により、県知事でありますが、知事は開発行為の許可の際には、森林法第10条の2第6項の規定により、関係市町村長の意見を聴かなければならないことになっています。
県知事から意向を打診された市町村長は、仮に、この基準が無ければ毎回対応に苦慮することは必至ですから、賢明な中島町長はこの基準で業者間に格差のない公平・画一的で透明性のある行政対応が可能になるようにこの基準を確立したものであります。
ご存じのように、法律は国会の議決で、条例は地方議会の議決で成立し施行されるものです。
これに対し、「要綱・規則・規程・基準等」は、行政の最高責任者である市町村長が事務執行上の必要性に基づき制定するものではありますが、制定した以上は事務執行に際して遵守されるべき行政内部の規律であり、地方公務員法上も第32条に法令等の遵守義務が規定されています。
(2)基準の価値・役割
故中島町長が昭和51年に制定されたこの基準が果たした役割・現実的機能をご紹介いたします。
この取扱基準が、山林開発の抑止力となり、県の意見照会の中で、城山町及び歴代町長はこの基準を遵守・判断基準にして対応し、城山町の平成15年当時の担当建設部長も長年の経過の中で、この基準の存在価値があったことを認めています。
具体的には、この基準の存在を理由に、露木建設工業とミユキ組の山林開発を事前相談段階で断った経過があります。
即ち、断ったことの意味は、山林開発の法律上の許可権者は県知事でありますが、県知事からの意見照会に対して、市町村長が事前に「拒否」の回答をしたことにより、事実上は山林開発が防止でき、水と緑の城山が維持できたことの証左であることは、明白です。
(3)小川工業の願望と動向
平成9年頃と14年頃の二つの計画を見る中で、小川工業の動向と願望について言及します。
小川工業は、平成9年9月頃、小倉共有林含む「大日方開発計画」を作成しましたが、一部町有林を含む計画の為に町の参画が不可欠であり、最大の課題であり、結果的にはこの計画は実現しませんでした。
そこで、次に小川工業は平成14年頃、香ノ田採取場拡張計画と称する小倉4地区共有林と学校林を含む町有地(今回の土地処分の山林)を対象に、山砂利開発の拡大を企画し、町に相談資料として開発申請案の書類を提出してきました。
山砂利採取業は、一旦採取を開始したら、新たな採取場所の拡大以外に存続の可能性は皆無となる命脈産業そのものですから、企業の将来・存亡は「拡張の実現」にあり、企業としては至上命題となることは必至であります。
私は、この企業努力を一般的に否定するつもりはありませんが、この基準の存在により、先ほど紹介した2件の計画は水泡に帰したことは、まごうことなき事実であり、この基準の廃止を最も望んだのが、小川工業自身であったこともまた十二分に推察可能であり、議員諸兄もご理解されると確信いたします。
ご紹介した平成9年の大日方開発計画に対して、当時の北島町長は、基準の存在により、「開発を認めない立場」でありました。
ことほど左様に、この基準が制定された昭和51年以降約30年間に亘り、城山町における山林開発の抑止力・緑の行政に寄与したのであります。
ですから、この基準は町づくりの哲学、城山町の緑の行政の指針といっても過言ではなく、決して軽んずべからざるもの、山林開発推進の立場にとっては、鉛のように重いものでありました。
(4)議会での議論
上記のような、小川工業の願望と動向を背景にして、平成15年12月の城山町議会では、基準尊重の立場から、山林開発の抑止力を評価し、基準に合致しない計画に関する相談資料を毅然と返却すべきとの主張、この主張とは対照的に基準廃止論の立場から、この基準が全く法律に基づかない、いい加減な条文と評価し、単なる役所の中の基準であり、外部の第三者に対して拘束力がなく、小倉地区の町づくりが先に進まない原因であり、昭和51年の基準を未だに振りかざして行政指導するのは、大きな問題との主張がありました。
結局、議論の末に「町の総合計画・町のマスタープラン・山林開発基準の中では、今の状況では香ノ田採取場拡張計画に同意できない」との答弁になった経過があります。
(5)局所的廃止論の欺瞞性
実は、この基準が合併期日の2日前の平成19年3月9日(金)に起案され、即日決済・即日告示の手続きを経て廃止されていた事実が最近判明しました。
合併期日が11日(日)でしたから、告示期間が実質2日間もないまま、しかも、今まで町民は勿論、当時の議員も廃止の事実をほとんど知らないのであります。
手元に、当時の決済書類があり、廃止の理由として「本町で用いていた基準が、新市域においては局所的な取扱基準となるため、新市での統一的な取扱を行う必要がある。」と記載されています。
23日(月)の藤井議員の一般質問に対し「開発業者に対する事前相談の基準であるから、町民の中での議論の扱いは無かった」「業者対策だから町民レベルでの議論は不必要である」旨の部長答弁がありました。
しかし、であります。
先ほど紹介しましたように、行政内部の取扱基準とはいえ、昭和51年の基準制定過程では、町の総合計画審議会の議論と諮問、即ち、町民間の議論を経て制定されているのであります。
従いまして、廃止の際にも町の総合計画審議会の議論と諮問を経るのが行政のあるべき姿ではないでしょうか。
部長は、この経過を先刻承知の上で、先ほどの答弁をされたのかの問いたいものです。
旧市と旧4町の現状については、当時も今も、旧市には山林がなく、旧津久井4町で山砂利採取は城山町・津久井町のみです。
@局所的廃止論ではなく、局所的が故の存続論
従って、現状からは客観的には、統一的取り扱いの必要性の根拠がなく、寧ろ環境行政の強化・充実のためには、この基準を旧津久井3町に拡大させる必要性こそ、論議されてしかるべきではなかったでしょうか。
旧市には事実上さしたる山林がありませんから、基準が存続したとしても弊害が発生する蓋然性はありません。
仮に、基準がなければ山林開発の申請に対して拒否する根拠を何処にもとめるのでしょうか。
A合併協議で存続の合意の経過
私は、当時の町長(副会長)として、合併協議の中で、この基準の存続を求めたところ、何ら問題なく合意を得ていた経過があります。
B廃止を渇望したのは誰
何よりも廃止を望んだのは、明らかに小川工業であり、それ以外には考えられませんし、この廃止で最大の恩恵享受者も、また小川工業であります。
C統一的取扱い基準
廃止の際には、統一的取扱いの必要性を強調しながら、現在までに統一的基準さえ設定せず、否それどころか、代替と称して市の山林を国よりも9分の1の極めて低額で処分したのは驚きです。
U 代替論
次に、第2の柱「代替論」に入りますが、この中では(1)代替とは何か、(2)代替の在り方を規定する法律・条例、(3)代替の可否の検討に触れていきます。
(1)代替とは
@国語的意味
代替とは、国語的意味としては、「他のもので、代えること」であり、代替物とは、「取引上、同種・同品質・同量の物をもって代えることのできるもの」であり典型的な物は「米や麦・酒・塩」であり、不代替物とは、「取引上、その個性が重んじられ、同種類の他の物で替えることができないもの」とされ、典型的な物は「土地・芸術品」の類であります。
A民法的意味
民法的意味としては、民法第586条の交換契約のことであります。
B非行政用語
不思議なことに、「代替」については、行政用語辞典などには登場しない「非行政用語」であります。
(2)代替の弊害を防止する法律・条例
代替の弊害を防止する法律・条例をご紹介し、その立法趣旨に言及したいと思います。
@国有財産法第27条(交換)
国有財産法第27(交換)には「普通財産は、・・・・と交換することができる。ただし、価額の差が、その高価なものの価額の4分の1を超えるときは、この限りではない。」とあります。
A相模原市市有財産条例
相模原市市有財産条例第2条には「ただし、価額の差が、その高価なものの価額の6分の1を超えるときは、この限りではない。」とあります。
B城山町・普通財産及び物品の交換、譲与、無償貸付等に関する条例
城山町・普通財産及び物品の交換、譲与、無償貸付等に関する条例第2条にも、相模原市同様「ただし、価額の差が、その高価なものの価額の6分の1を超えるときは、この限りではない。」とありました。
C立法趣旨
行政の公平性・信頼性・透明性の確保の観点から、俗に焼太り・ごね得防止策として、交換(代替)の際には、相互の価額が大体等しいものであることが原則であること、即ち、相互の価額の差があまり大きな開きがあると、それは、もはや交換とは、ほど遠く売買になります。
しかし、交換財産相互に若干の差があることも認めざるを得ないものであり、認められる交換差益の限度、即ち差益の程度が問われます。
この交換を濫用するときは、地方公共団体の財政のびん乱の原因となる恐れがあり、交換はあくまで、例外的なものとして必要最小限度に運用されるべきものといわれています。
D交換の基準
確かに、条例に定め、又は議会の議決さえあれば、一応いかなる交換も可能であるかのような形式的解釈も成り立ちそうでありますが、交換はあくまでも財政運営制度上の例外処理であり、公益上財政上の観点から容認される場合に限り、必要最小限度に運用される必要があり、この観点から、目的、種類、交換差金の面で制限があります。
@ 交換目的
交換は、その目的が公益上又は財政上の必要がある場合に限られるのは当然です。
A 交換の相手方
公益上の目的のために利用されることが望ましく、交換の相手方が、その財産を公衆衛生上、風紀その他の面から適当でない施設に利用する恐れがある場合は、交換は差し控えるべきであり、社会公益の面からその重要度の軽重を検討し、交換の可否を判断すべきであります。
B 交換差金の限度
交換は本来、対象財産の価格がほぼ等しい場合を想定しており、交換差金があまり多額であれば、交換は名ばかりで、実質的には売買と大差なく、もはや交換の名に値しないものであります。
これを敢えて、地方公共団体が交換として扱えば、特定の相手方に対し、正当な理由なく随意契約で売払うことと大差なく、地方公共団体の契約の原則(競争入札の原則)を侵し、ひいては、地方公共団体に対して、「得べかりし利益(収入)の減額を招く等の不利益を与えることになります。
交換差金の限度の一応の基準として、当時の自治省の通知により地方公共団体では「交換差金を交換対象財産の6分の1の範囲内」としています。
(3)代替性の有無の検討
@処分の妥当性
上記のような基準・観点から、今回の処分が果して妥当性・合理性があると言えるかどうかを、次に検討していきます。
A山林開発・採石計画の内容(要望書・平成12年頃作成)
ここに、平成12頃小川工業自身が作成した「要望書」があり、この中には山林開発・採石計画の内容が記載されておりますので、ご紹介致します。
@ 緑地復元が開発の条件であること(P4上段)
A 採石・埋め戻し計画として、全体計画と第1期計画の記載(P4下段図表)
B 第1期計画地を、さがみ縦貫道路が通ること(P5)
C 第1期計画地が、A地であること(P8)
D A地が、小川工業の事業地内ではあるが、現状は更地であること(P9)
B代替性の根拠なし
以上明らかな如く、結論的には、このA地は、採掘が完了し、しかも、埋め戻し後の土地であり、従って早急に開発の条件に従い、覆土して樹木の植栽(緑化)を義務づけられている土地であり、国がこのような土地を事業用地として取得すること自体が問題であります。
それでは、「緑化計画」や「跡地の処理」の具体的内容を紹介致します。
ここに、平成12年5月2日付開発許可申請書がありますが、この中で、許可の条件の「4、緑化計画の概要」として「植栽樹種は、平坦地に黒松を3000本/ha、小段及び法面には、ヤシャカブ・ハギの播種(1か所/3.3u)と3種混合種子吹き付けを行う。=中略=播種部が発芽しない箇所には、再播種を行い、最終的な計画として場内には、森林及び緑地に復元し、全面的に緑化する。」とあります。
次に、「6、跡地の処理」として「平坦地は客土し、黒松を3000本/ha、小段及び法面については、ヤシャカブ・ハギの播種を1か所/3.3uの割合で施工し、3種混合種子吹き付けを合わせて行う。」とあります。
結局、許可条件に従い具体的に「緑化計画や跡地の処理」、即ち復元義務が小川工業には存在するのであります。
従いまして、このA地が、採石洗浄後に排出される汚泥土・廃土石などの置き場に使用できない場所であることは当然であり、仮に資材置き場に使用していたならば、埋め戻し完了の証左であり、逆に開発条件違反になるのであります。
即ち、森林法の開発条件違反(緑化義務違反)の資材置き場の活用状態を「事業用地」として認識して、代替性ありと誤認してはならないのであります。
しかしであります。
市は、平成20年12月18日の議会全員協議会の配布資料2の図面に、如何にも事業用地らしく装うために「小川工業事業地」と記載しています。
これでは、経過や現状の意味について、何も知らなければ、誰だって市の代替の説明を鵜呑みにするのは、12月当時は止むを得ないことではありますが、今や明らかの如く、執行部の12月の説明の呪縛から解放された新たな視点で、議員諸兄の判断が問われているのではないでしょうか。
今や、カラクリ屋敷は崩壊寸前、相模原版「簡保の宿」が鮮明に見えてきました。
将に、「君、若し疑わば、汝の眼をもって視よ」であります。
C市の総合的判断の妥当性・合理性
23日(月)の藤井議員の質問に対し、市は「総合的に判断した」と答弁しました。
しかし、市は本当に慎重に代替性の有無について検討したのでしょうか。
国や小川工業の一方的説明を信じる者は、騙されるのであります。
信じる者が救われるのは、政治の世界ではなく、宗教の世界のみです。
V 利権論
次に、利権論について(1)面積論(2)単価論(3)価格論(4)代替偽装(5)利権の内容に入れます。
(1)面積論
面積論の観点からは、小川工業が国に提供する土地面積が、4.8ヘクタール(4万8千u)に対して、市が代替地と称して提供する市有林は24.5ヘクタール(24万5千u)であり、何と「1対5」であります。
(2)単価論
単価論の観点からは、国が買い上げる小川工業の土地単価が、市有林の価格の「9倍から10倍」であり、市はこの価格差を承知の上で市有林を代替地として国に提供するのです。
しかも、小川工業の土地も、市有林も「地目は、山林」であり、市は百歩譲っても、市有林価格を小川工業の土地の買収価格を知りながら、そうであれば買収価格の交渉に臨むべきでありながら、何故かその努力さえもしていません。
そもそも、市の総合的な判断としても、小川工業の都合のよい身勝手な要求に応じて、市有林を代替地に提供すべき義務は、一切ありません。
(3)価格論
価格論の観点からは、
@小川工業の土地価格は、4万8千u×2600円×9(10)=11億円(12億円)
A市有林価格=5億円
B利得額=11億円(12億円)−5億円=6億円(7億円)
C市の本来の利得額=5億円×9(10)−5億円=40億円(45億円)=得べかりし利益
(4)代替偽装による利権の内容
代替偽装による利権の内容は、
@面積比5倍の山林の利得
A価格差による金銭利得
B随意契約による確実な山林利得
であります。
小川工業は緑色の山を取得したのではなく、黄金色の金山を取得し、その結果「市民共有の財産」が不当に喪失されようとしているのであります。
W 責任論
問われるべきは、行政と議会の姿勢そのものであります。
私は、問いたい。
30年間に亘り、城山の山林開発の抑止力として、緑の環境行政に寄与した町づくりの哲学である基準を廃止して、結果的に小川工業に歓喜の歌をプレゼントしたのは、一体誰なのかと。
市長にこの場から呼びかけたい。
今なら未だギリギリ間に合う議案第33号の速やかな撤回をと。
私は、訴える。
市民の共有財産である市有林を処分・開発容認の売却に対し、議会として如何なる責任が持てるのかと。
X まとめ
まとめに入ります。
市有林を売却せずに、かっての山北町のように山砂利採取条例を制定し、採掘量に応じて課税する法定外目的税の導入も検討されるべきでありました。
さすれば、公共的に跡地利用の可能性の余地もあったのであり、敢えて、1私企業である小川工業に、跡地利用でも更なる莫大利益をもたらすことを許すべきではないのであります。
私は、昭和51年から30年間、苦しみ悩みながらも、この基準を守って「水と緑」の城山を築いた歴代町長に対する敬意をこめて、私でなければできない、否、私こそがなすべき議論を展開しました。
私たちの前には、二つの道があります。
1つは、結果として企業に莫大な利益をもたらす道、残りの1つは市民に利益をもたらす道であります。
議員諸兄が選択されるのは、果たしていずれの道也やと問うて、今回の議案第33号に対する討論を閉じます。
ご清聴有難うございました。