vol 87:道



昨日の映画の余韻が未だ拭えない。

出払ったリビングのコタツの中でゴロゴロ。

(暖かいのぅ。)

声を聞いて起きあがる。

向かいには父が座ってた。

「ぱ、パパ!なんでここに。」

なぜ、天界の神が珍しく、

いや、初めてに近い。

俺の元に自ら来たんか解らん。

「どないしてん?なんかあったん?。」

やけに気に入ったらしいコタツで、テンションが上がってる、
俺の父に問いかける。

(映画見たのか。)

「え。」

映画って昨日の。

(そうだ。あれはわしが手を下して作らせた。)

弥勒の車での言葉が甦る。

「パパ・・・弥勒に聞いた。
話し合いで、。」

(あぁ、そうだ。
今の事態はどうも手遅れでなぁ。
もう、止められぬかもしれん。)

俺は聞きたくない言葉と、
やっぱりかという気持ちに胸が苦しく重くなる。

(息子も、わし自らが降りた事で混乱しおってな。
頻りに、どうしてだと聞いてきた。)

「兄ちゃん、話し合いには参加してへんかったん?」

机の煙草のケースから1本取り、口に咥えて火をつける。

(話し合いは天界の神、黄泉の国の大日如来、
他の宇宙のそれぞれの神が代表で1名ずつ出席した。
主には主の仕事がある。)

「・・・そうなんや。
兄ちゃんの反応は?。」

父の表情は崩れずに優しい顔のまま。

(受け止めるのに時間がかかりそうだ。)

そら、そうやろ。

(お前の事が心配で堪らないのであろう。)

「俺?。」

(そうだ。
わしが自ら人間に手を下したのは、主が人間の頃までだ。
それ以降は主と神使いや天使達に任せていた。
だが・・・もうここまでくれば遥か昔と同じだ。
わしが警告を発せねばならん。)

ここで感じたこと。
それは、俺や兄ちゃんよりも、
パパが一番ショックを受けてるってこと。

「パパ。神さんの存在ってなんなんやろうな。
こんだけ見守ってるのに、
それを心から解ってる奴は一部。
ひとかけら。
・・・ご、めんっな?。」

泣けてきた。

(娘よ・・・。)

瞬時に俺の隣に来て俺の肩を抱く。
咥えた煙草が今にも落ちてしまいそうや。
煙草の先を歯で挟んで、
強く噛むと同時に顔がクシャリとなって大粒の涙が溢れる。

(お前がこの世界に降りた事に意味がないと言いたいのであろう。
それは違う。)

煙草を掴んで灰皿に押し消し、
俺は父に顔を向けては、

「意味なかったやんけ!
救う事も出来んねやろ?
俺はただ、人間として普通に生きとっただけやんか!。」

父に気持ちをぶつける。

(お前のこれまでの人生、普通であっただろうか。
人間として、人間に出来ない多くの霊を救ってきたではないか。
自分の信念を捨ててはならん。
希望がないとは言っておらんであろう?。)

それは、あの映画でいう、金持ちと運のある奴が生き残ることか。

「俺は、パパの作った映画の生き残った奴らの一人にはなりたない。
なっても、嬉しくもない。
なんで生き残らすん?
始めに戻しても、また繰り返すの目に見えてるやん!。」

父は言う。

(カンよ、
死にも意味があり、そして、あぁなった時にどう思い、
どう生きるかであろう?
地球が振るいをかけきった時に、
どう生きるかの術をお前が皆に伝えるのだ。
そして、あれはわしの想像。
自然の動きを見て、このままではこうなるであろうという、
想像なのだ。
問題は、なってしまった後ではなく、
なる前にどうするのか。)

俺は素直な気持ちを吐く。

「・・・言うてる事、解らん。」

なんとなく言いたい事は解る。
でも、やっぱり解らん。

「皆に俺がどうやって伝えるねん。
俺は普通の人間で、政治家でもなんでもない。」

(小説を書いているではないか。
あれはお前が経験してきた事を、
霊の存在、神の存在、地球の存在を皆に伝えておるではないか。)

俺の本。
俺は本を少しずつ書いてる。
ネット上に載せた小説が、雑誌者の目にとまり、
ある若者向けの雑誌に連載されるようになった。

「けど、あれはフィクションとして出してるんや。
みんな・・・普通の本としてしか読んでないよ。」

(お前はあの本に何を詰めている。
本当の愛、霊の事、神の事、
霊は誤解され、神は無敵でもなんでもなく日々悩んでいる、
それは何故か。
そして、今なにが起ころうとしているのか。
自分も悩み苦しみ、でも立ち向かおうとしてること、
本当の友情、
人にとって忘れている大事な事を伝え、
また、思い出させておる。)

そうやったとしても、
ただ、それだけの事や。

父は俺の思う事を読み取れる。
まだ、幼い心の俺が理解できない事も解ってるはずや。
でも、新たな道を引きに来た。

(お前は大きく皆の前に出るであろう。
そして、世の本当に頼る者もいない、
希望も見いだせない子供たちの心をお前が引き上げるのだ。
お前が行く世界でサタンとも出会い、
また、そこでお前は大きな役目を果たすであろう。)

父の体が透けだした。

「パパ?・・・行かんといて・・・。」

(これからは、わしが他の神々と共に大きく道を引き、
わしが大きくお前の心となる。
迷う事なく進むのだ。
見極めの時は過ぎた。)

父は消えた。
天界に帰ったんや。

それから時間がたたないうちに1本の電話があった。









『あ、どうも。雑誌社の村上です。』

「どうも、お世話になります。」

『いやぁ、戌尾さんの連載が評判すごくて。
中高生から30代くらいの女性の支持がね。
で、まだ連載中ではありますが、
アニメ化にしてみようかという案が出てまして。
戌尾さん、午後の予定は空いてますか?。』

「え?・・・あ、あぁ、はい。大丈夫です。」

『良かった。
では、本社の方に遠方となりますがいらしてください。
今からですと夕方には着くと思うので、
ホテル用意しておきます。』

「あの、泊まりって事ですか?。」

『えぇ、打ち合わせが何時に終わるかわかりませんので。
交通費はいらしてからお支払いします。
帰りの新幹線の分のチケットはこちらで用意いたしますので。
よろしくお願いします。』

「はい。どうも。」

小説が本格的に前に進もうとしてる。

小説がアニメ化。

アニメになれば、もっと理解しやすくなるのは間違いない。

思考回路が不安定なまま、

荷造りして大樹と弥勒にメールし、

俺は家を出てタクシーで駅に向かう。







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