vol 86:最後から1番目



「全能なる我が父よ!。」

「騒々しいぞ、主よ。」

私は神である父の庭に押し掛けた。
父が、人間の元に降り、父が自ら手を下したからだ。

「どういう事でしょうか!
貴方が自ら降りるなど。
そのような事は私がっ、。」

父は地にしゃがみ、
綺麗に咲く小さな花に太い指を触れさせ笑んでから、
勢いのついた私に向いて立ちあがり、

「主よ・・・、
我が息子よ、落ち着くのだ。
わしが何故、人間に自ら降りたか解るか?。」

私は答えた。

「時間が迫りつつあるからです。」

父は言う。

「迫りつつではない。
もうそこまで来ておる。」

父は階段に腰を下ろし、
私に隣に座るよう目で合図する。
私は黙って隣に行き、腰を下ろした。

「なぜです?
なぜ全ての神である貴方が。
今までご自分でお動きになったのは、
私の時代前までではありませんか。」

「息子よ。解らぬか。
ワシは全ての神ではなく、地球の神だ。
その地球がもう手遅れと化しておる。
神々との話し合いでは、
この動きを止めるのではなく、
先をどうするかとなった。」

「では、人間は、。」

「命は大事だ。
素晴らしい生き物達を責任持って救う。
だが、全ての生き物を救う事は困難であろう。」

「では、どうすると言うのです!。」

「お前の問いはワシが何故人間に降りたかであろう?
それは、天使達に任せておった警告を、
ワシが自らする義務が今来たからだ。
時が迫った今、地球の神である、
生き物を創り出したワシが警告を告げねばならん。
そして、それは最後から数え1番目。」

「最後から・・・1番目?。」

「そうだ。
そして、最後の警告を告げる大きな役目を果たす者、
それが、。」








「カン?。」

俺はベランダでタバコを吸いながら空を見上げとった。

「今日さ、映画観に行かないか?
ほら、CMでやってたマヤ文明のやつ。」

今日は小説を書き上げる日や。
時間を見たらまだ時間はたっぷりある。
幸い、映画館は車で15分くらいのところ。
弥勒が誘うのは珍しい。
断ったらブゥブゥ言うやろうなぁ。

「かまへんよ。ほんなら用意するから、。」

「あと30分したら始まる。」

「はぁ?!もっと早く言えよっ。」

灰皿で消して慌てて中に入り上着と財布、携帯を持って家を出る。
平日の午前中だけあって人は少ない。
チケットと映画といえばポップコーンにコーラー。
ホールに入ると丁度CMが始まった。
映画にもCMというのか、宣伝が存在する。
次の映画の予告とか。
これを見たら、また見たい映画が必ず増えるんや。

映画が始まった。
それはTVのCMを見る限りマヤ文明の預言の話しやと思ってたのに、
意味合いが若干違う。
マヤ文明よりも遥かに進んだ現代の設備もある科学で、
予測していた事態でもあった事が、
予測を遥かに超えて起ころうとしている。
でも、それを古い時代のマヤ族はその時代にキチンと予測してた。
世界の終り。
金持ちだけが箱舟のチケットを掴める。
でも、実際は政治家や軍の上層部のみが乗ることができる。
主人公は売れない小説家。
その売れない小説家は金もなく、チケットを持ってるわけもなく、
でも、この事態を予測した科学者は、
その売れなかった小説を持ってた。
箱舟にその小説が乗ってる。
と、言うことは小説家が乗ってなかっても、
その本は生き残って受け継がれていく。
結局、その小説家は船に乗れてんけど。
地球は水に飲まれ、大半の人間が死んだ。
軍の作った箱舟に乗った人間と少数の生き物だけが生き残る。
でも、日本もアメリカも全ての国が死滅したのに、
水が引くと解ったこと。
それはアフリカだけが無害。
この意味をどれだけの映画を観た人が感じたんやろ。
それがどういうことか。
アフリカは動物達の宝庫。
そんで、
発達を拒む昔ながらの民族の残る国。
神と心から信じ、
自分達が食べる分だけ動物と同じ、
命をかけて狩りをしてその日を生きている人間が住む国。

映画が終わったら感動もなく、
ただ、ハッピーエンドを喜べへんかった。

「そうなったか。」

帰りの車で弥勒が呟いた。

「そうなったってなんやねん。」

「カン、お前も俺もこの事態を止めたいと思って人間になった。
でも、止めることは出来ないって事だ。」

俺は信じたくない。

「そ、そんなもんまだ解らんやんけ!。」

運転しながら少し声を張り上げる。

「阿弥陀如来に聞いた。
今回神々の話し合いは、状況を止めるのではなく、
この先についてだったそうだ。」

俺は唇を噛みしめて黙り込んだ。








「では、最後の警告者はカンだというのですか!。」

「そうだ、息子よ。
我が娘、お前の妹。」

私は目を見開き立ち上がり顔をしかめて感情を露わにした。

「そんな!あの子は救う為に降りたのです!。」

「その通り。
死に逝く者も生きる者も救う為。」

「死に逝く者を救うって、。」

「どう志して死ぬかによっても、
死に怯えずに済む。」

「そんな・・・あの子は心優しき天の子。
酷ではありませんか!。」

父はゆっくりと腰を上げ、

「これが神の子の役目。
そして、自分で決めた事の本当の救い。
その事を、カンに気付かせねばならん。
ワシの警告を今、見終えた。
黄泉の国の神と共に。」

「・・・どちらに?。」

父は階段を上がって行く。

「我が愛しき娘の元に。
天界を暫く頼む。」

「お父さん!。」

父は振り返り優しい笑みを見せ、

「大丈夫。あの子は我が娘、お前の妹。
心優しき者の強さは神よりも大きな力。」

父、神は姿を消した。

サタンよ。

お前が望む時が来ようとしている。

私に解った事は、お前が破滅に導いたんではなく、

破滅になった時、

弱き人間心を存分に出させて、

怯える人間を神に見せたかった。

その為に信仰を疑わせる事へ力を入れていた。

破滅を呼び起こしたのはサタンではなく、

神の創った人間なのだ。

誤算は、

まだ、その人間を神が一握り救うこと。

それにはお前は気付いている。

その哀しみは永遠に拭えないであろう。









               86       次のページ



85話に戻る
戻る

花手毬