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vol 85:賭けの対象
女の声に呼ばれるままに足を進め、
ずっと呼んでた声がピタリと止まった。
そこは絵画が並び、足を止めた絵画に目を向ける。
その絵は男が6人、子供が1人、そして女も1人の絵。
「これは・・・八仙の絵だね。」
物知り大樹が絵をマジマジと見つめて呟く。
「日本で言う七福神のようなものだよ。
ただし、七福神は神だけど八仙は人。」
「人?。」
「あぁ。仙人だからね。」
大樹は笑んで、まだ理解出来てない俺に説明してくれた。
要は、仙人は人が不老不死になった人達を言うらしい。
仙人にもいろいろいて、西遊記の孫悟空も仙人の一人らしい。
宗教の分類から言うと道教にあたる。
「でも、仙人は架空の人達だと思ってたけど・・・、
どうも、違うみたいだね。」
大樹は絵を見てではなく、俺の背後を見て微笑えんだ。
俺は大樹の視線を追いながら自分の後ろを振り向く。
そこには、蓮の花を持った細くしなやかな雰囲気の女の人が、
「彼女はきっと、何仙姑だね。」
俺に解りやすいように、八仙の絵の中の蓮を持った何仙姑を指差す。
大樹はゆっくり何仙姑に目を閉じて頭を下げた。
(礼儀有る若者。我は何仙姑。
そなたは天の子か?。)
知ってて呼んだんちゃうんか。
俺は自分の存在を聞かれ計画的犯行ならと顔をしかめた。
「カン、シロが一緒じゃないのに・・・声が聞こえる。」
大樹が不思議そうな顔をしとる。
大樹の耳には笛を持った長髪の若い男が片手を触れさせてる。
(彼は韓湘子。八仙の一人。
そなた達はなぜ共におるのか。)
だんだん腹立ってきた。
「なんで一緒におったらそないに不思議やねん。」
(そなたは天の神、そしてそなたは黄泉の神。
不思議で仕方ない。)
何仙姑はキョトンとした顔で俺を見てから大樹を見た。
「俺たちは、俗に言う家柄(宗教)を超えた仲です。
他の国だからといえ、そこに問題もないと思います。」
大樹は笑みながら何仙姑へ返答する。
「ちゅーか、あんたらは何なん?。
神?。」
それには韓湘子が細い目を垂れさせ、
(我らは人の一番の欲の塊。)
人の、一番の欲?。
(人間は若返りや死に対して一番欲を持つもの。
我らは不老不死の仙人という神的な存在とされている。)
されているって事は実際は、
(我らは普通の人間だった。
しかし、天の声が聞こえそれを人々に話をしたまで。
我らは仙人、不老不死で人間で生きたままこの世に存在していると。
そう思われている。
実際は死を迎え人間の魂として黄泉の国の一部で人間と神の間となって、
人を鍛える為の仕事をしている。)
黄泉の国で。
でも、それで俺らに何の用が、
(天の神よ。そなたに聞きたい。
我ら八仙人は人の願いを聞く。
その願いとは、生死を我が物とし、
永遠の命を欲する願いが大半を占める。
他人より自分の今の人間を、そなたは救う価値があると言うか?。)
何仙姑が俺に問う。
韓湘子も大樹も黙って俺を見つめる。
また・・・その問題かよ。
また・・・その話かよ。
重い口を開く。
「神が大事に想う命に価値なんかあるか。
命を救うのに価値もクソもあらへん。
永遠の命は人間の過ちで奪われたんや。
だから永遠の命を人間にやる価値なんかは無いよ。
でも、滅ぼすには人間は勿体無すぎる。」
どう言えばええんか解らんかった。
どう説明すればええんか解らんかった。
価値。
人間の価値を神々は判断しようとしてる。
過ちを繰り返す人間を、救うべきか、滅ぼすべきか。
(ハッハッハ!。)
韓湘子が高らかな笑いを響かせた。
(何仙姑よ。)
(・・・そなたの勝ちだ。)
は?。
(すまぬ、天の子よ。
我ら八仙人はお前の噂を聞き、お前が童の頃より見ていた。
そして、お前が大人になる頃には人間の矛盾や愚かさに気付き、
どちらに転ぶか賭けておったのだ。)
か、賭け?。
俺は目が点になり、大樹は俯いて苦笑。
何仙姑は悔しそうな顔。
韓湘子は勝ったらしく満足気。
(・・・天の神。
我々は人間に誤解されている。
我々は今、人間と神の間の存在。
そして死んだ魂となって、我々の見込んだ者に、
我々の力を備えさせている存在。
その誤解を、そなたの書物で伝えてはくれぬか?。)
賭け・・・。
俺は賭けの対象にされとったんか・・・。
「カン・・・彼らは言い伝えから麻雀などの賭け事が大好きなんだ。」
気を遣いながら大樹が俺の肩に手を乗せて眉尻下げ苦笑する。
「・・・ええよ。わかった。
俺の本に書く。
で、あんたらの特技ってなん?。」
不貞腐れながらも悪気のないことは伝わってる。
(我らは神通力と俗に言われているが、
人間に武術を教えていた。)
過去形かいな。
(今の人間は武術などを我々に希望する者がいないのでな。)
「で、武術ってどんなん?。」
そこには大樹が反応を示す。
「カン、酔拳だよ。
酔拳、映画で見ただろ。」
「すっ!。」
何仙姑はその場で朧な足で武術をして見せた。
それに続いて、韓湘子は笛を両手で持ち同じく武術を見せる。
俺の目は釘付けになって、
次第にその目はキラキラと輝かせた。
「カン・・・おかしな事考えてないよね?。」
何かを察知した大樹は顔を引きつらせながら問いかける。
「お、俺もそれやりたい!。」
美術館にこだまする俺の発言に、
何仙姑と韓湘子は笑み、
大樹は額に手をおいては大きな溜息を吐いた。
「ガッハッハ!どうよ。我らが見込んだ通り、
我らに興味を示したであろう!。」
李鉄拐は酒を飲みながら膨れた腹を震わせ笑う。
「しかし、あの子供は天の神の子。
それに女子ではないか。」
呂洞賓は眉尻下げながら不安を露わにする。
「おや、我も女子。」
何仙姑は酒を注ぎながら冷やかに反応し、
「僕は童だよ?。」
藍采和が頬を膨らませ、
「女も子供も武術に関係ないさ。」
韓湘子は麻雀を指しながら呟き、
「少々反発しそうな男よのぅ。」
曹国舅が長く蓄えた髭を触りながら呟いては、
「反発せんもんはつまらん。」
鐘離権は言い、
「ほっほっほ。愉快愉快。」
張果老が愉快に笑う。
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