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vol 84:声
「ねー、準備出来たぁー?。」
「んぁ~。もーちょい。」
大樹がウキウキしとる。
なぜならば、
今日は大樹曰くデートやそうや。
テレビでやってた中国の美術展に俺が興味を示した。
美術館デートやって・・・むーん。
車に乗り込んで大樹の運転で少し離れた美術館に向かう。
「でも、カンが中国の美術品に興味あるなんて以外。」
楽しそうに会話する大樹を横目に、
俺は苦笑し、
「べつに嫌いやないよ。
でも、見てて飽きへんのは西洋の宗教画やねんけど・・・、
なんで中国の美術品に興味出てんやろか。
自分でもわからん。」
「テレビでは絵画、骨董品とかだったね。」
「また、霊が呼んでたりして。」
「・・・それでもいいよ。
久々のデートなんだから。」
大樹はデート気分。
でも、そう言うた表情は切なく見えて俺は否定もせんかった。
俺の日常は自分の本を書きながら、
毎日数分置きに霊や神が来る。
俺の書いてる小説をどうにかしようとしてるみたいや。
勿論、霊や神と四六時中一緒におると、
体力は消耗せん、気力がかなり消耗するんや。
夜中も寝つけへんし、飯も食う気せんし、
最近、目眩すらするようになった。
そんな俺をいっつも見てる大樹は心配で、
それと同時に大樹もシロと達磨大師から修業を受けてる。
多分、大樹も気力はかなり消耗しとるはずで、
今も体は重く怠い状態なはず。
「大樹、お前休みなんやからゆっくり寝とかんで大丈夫か?。」
「ン?あぁ、俺は外に出た方が気分も紛れるよ。
ほら、ついたよ。」
車を指定の駐車場に停めて、美術館に向かって二人で歩く。
「へぇ。結構な人やなぁ。」
主に年配の人が多い。
館内に入ると、いろいろな骨董品から始まる。
「青銅器だ。」
「青銅器?。」
大樹が始めに展示されている古びた青い骨董品に反応する。
丸いやつやら、花瓶みたいのやらが並んどる。
「青銅器っていうのはね、
独特の民族的風格と鮮明な時代的特徴とをもった、
極めて重要な歴史的文化遺産なんだ。」
「ふーん。」
俺は大樹の説明と共に青銅器を見つめる。
「中国にも奴隷制制度があって、
鉄はその当時まだ普及していなかったから、
青銅は銅と錫の合金で作られてる。
奴隷が主に製造してたんだよ。」
さすが高校教師+物知りめ。
大樹の説明を受けながら先に進む。
「おー!チベット密教や!。」
やっぱり俺が反応するのは宗教系。
曼荼羅やら仏像が並ぶ。
「うぉ!大樹見て!。」
「カン、美術館は静かにしなくちゃ。」
「ほら!弥勒や。」
「あ、本当だ。」
そこには弥勒菩薩の仏像が展示されとった。
「本人が見たらどう言うかなぁ?。」
「恥ずかしがるよ、きっと。」
俺と大樹は笑みを浮かべて少しこのエリアは身近に感じた。
(こっち。)
え?。
(こっちですよ?。)
声に辺りを見渡す。
(こっち。)
どこや。
(こっちです。)
「カン?。」
キョロキョロと声のする方を探す俺に、大樹は不思議そうな顔をする。
声に集中すると、まだ先の廊下からビンビンと感じてきた。
「あっちや。大樹。」
大樹の手を掴み美術品を見ずに先へと進む。
「カン、どうしたんだよ?!。」
「呼んでる。」
「呼んでる?。」
(そう。こっち。もっと、こっち。)
声は女の声。
透き通った気品の感じる声。
誘われるような女の・・・声。
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